*八尋の誕生日(虎矢目線)
1129の日その後。先に謝っておきます、ラブありませぬ。
たんなるクリスマスへの布石です、ハイ。
12月5日・・・つまり、今日は八尋の誕生日なんだよね。八尋は、『鬼人族』という暴走族の総長をやっている。んでもって、俺の幼馴染でもある彼は、今かなり機嫌が悪い。
いつもは香帆ちゃんのために茶色に染めている髪の毛も、今夜だけはピンク色になっている。よっぽどストレスになっているんだな・・・香帆ちゃんと会えていないこと。
「・・・・・あーもー、香帆にあいたいヨー。なんだって虎矢とかむさくるしい男ばっかりと遊ばなきゃなんねーの。」
今夜はお店を貸し切って族のみんなと一緒に八尋の誕生会で盛り上がっている。この部屋だけでも12人いて、ホールの方はもっと人だかりができている。みんな盛り上がっていて、一部ではシャンパンタワーをやった馬鹿もいるようだ。(あとからたいへんだよー?)
昨年も同じようにやったが、今年は女性禁制にしているので、あまり煩くは感じない。で、誕生会の主役のはずの八尋はというと、香帆ちゃんとここ5日ぐらい会えていないため、かなり不機嫌になっている。それでも語尾が伸びているあたり、まだ限界ではないようで。ついに八尋も手加減というものを覚えてくれたようだ。幼馴染としては嬉しーよ。
「しょうがないよ、さすがにインフルエンザとあってはね。」
肩を竦めて口を開くと、八尋が眉間に皺を寄せたままビールを飲みほした。(あ、未成年は真似しないよーに。)
「う~香帆と初めての誕生日を迎えるの楽しみにしてたのにぃーーーー!!!」
「そういえば、去年は先輩後輩の関係だったから、まだ八尋が片想いしている状態だったかな。」
「ソーナノヨ。せっかく恋人同士になったのにいぃいいい!!」
「はいはい、ビール飲み過ぎないように。また香帆ちゃんに文句いわれちゃうよ。」
「うー。だから、香帆との約束通りノンアンコールで我慢してるのにぃ。」
「・・・・・・ほんと、香帆ちゃんにだけは素直だよね。」
「なんでお前らの言うこと聞かなきゃいけない?俺の全ては香帆のためだけにある。おわかりー?」
「はいはい、もういいよ。いいから、さっさとその不貞腐れた顔をやめて。一応主役なんだから。」
実は八尋は1年半ほど前から香帆ちゃんに片想いしていた。そのために事あるごとに、うっとうしいほど香帆ちゃんのことを聞かされていた。
ちなみに香帆ちゃんに惚れた理由はお約束で、怪我したところを助けてもらったことだそうだ。
(・・・香帆ちゃんは当時のことを覚えていないみたいだったけれど、それは言わないでおこう。)
幹部用の席で飲んでいた俺達のところに部下が慌てたようにやってきた。彼は確か彼女持ちじゃなかったかな。
「八尋さぁん、今日は女性の出入り禁制ってマジッスか?彼女を呼びたいんすけど、去年はOKじゃ・・・」
「本当だが、それがどうかしたか?」
「ひっ・・・す、すみませんっした・・・な、何か怖いんすけど・・・?」
「あはは、今の八尋は香帆ちゃんに会えていないから不機嫌なんだよー。女性禁制になったのは、万が一のことがあって、香帆ちゃんが不安がると困るからだね。」
「あ、そういうこと・・・よく解ったッス・・・彼女には電話で謝っときます。あざっす!」
八尋の怒りに怯えて部下が逃げ出した。それを一瞥した八尋は舌打ちしながら、ソファーへと寝ころぶ。もう香帆ちゃんがいないもので、誕生日のどんちゃん騒ぎにすら興味も持てないようだ。その隣で俺もカクテルを飲みながら騒ぎを眺めている。もうこうなると主役などいてもいなくてもいいようなもので、もうお祭り騒ぎ状態だ。(女性がいないことからむさくるしさは否めないが。)
延々と続いたパーティーに飽きかけていた頃、スマホが鳴った。スマホを見てみると、彼女からだということに気づく。すでに夜の十時を過ぎたのに電話とはめずらしいと思いつつ、電話に応じた。
「・・・・・莉里、この時間に電話って珍しいね。どうしたのさー?」
「隆、今日の飲み会って、『ブロッサム』で?」
「そーだよ。それが何か?」
「これから香帆のお兄ちゃんがそっち行く。多分、後20分ぐらい。」
「はぁっ?!」
「ちゃんと族長に伝えといて・・・じゃ。」
一方的に切れた電話に唖然としながら、慌てて八尋をエルボークラッシュでたたき起こした。
「起きろぉっ!!」
「ぐはっ!!!」
腹を抱えて呻いているがそんなことは知ったことではない。呻く八尋に弁解しつつ、説明すると目を丸くして驚いていた。
「は?香帆の兄が来る・・??そういえば、兄がいるとは聞いていたが・・・。」
「というか、この店に来ても大丈夫なのかな・・・香帆ちゃんのお兄ちゃんならパンビーだろうし。」
「あ、そうか・・・しかし、今さら真面目にっつーのも間に合わないだろう・・・。」
「とりあえず、みんなに客人が来るからガンつけないよーに行ってくる。後で香帆ちゃんになんか言われると八尋の機嫌にも影響出るし。あっ、ついでにちょっと部屋も片さないと!」
「・・・・俺をなんだと思って・・・まぁ心象はいいほうがいいに決まってるけどよ。」
八尋も納得したのか、服を整えながら頷いていた。香帆ちゃんのお兄さんとあらば、丁重にもてなしせねばということだろう、せっせとテーブルまで片づけはじめた。
俺はと言うと、最低限、喧嘩などないようにしなければならないと慌てて幹部をはじめとした族のみんなに伝達した。
「とりあえず、これでなんとか・・・」
せめてゴミがないようにと片づけをしながら確認していた時、ドアがノックされた。そのドアの方向を見やったそこに立っていた人物を見たとたん固まってしまったのは、そこにいるのはここら一帯で知らぬものはいないし、八尋でさえ従わざるを得ない人物だったからだ。
「よう、お楽しみ中のところ悪いな。『鬼人族』の族長はどこだ?」
「・・・・何故、『サーベラス』の元総長がここに。」
思わずつぶやいてしまう。幸いにも小さい声だったから相手に気づかれることはなかったが。
かつて、わずか数年でこの一帯の族をあっという間に統一させた『サーベラス』という暴走族は誰もが知るほどの有名な暴走族。今ではすでに解散して当時のメンバーもほぼ引退したと聞いている。もうすでになくなっているチームだが、そこに属していた(いくつものの族を従えていた)総長の強さも武勇伝も未だに語り継がれていて、その名はもちろん、かなり整った顔立ちもトレードマークのピンクの髪の毛も未だに有名だ。
(八尋もこの人に憧れて髪の色をピンクにしたぐらいだもんなー。)
その元総長がここに立っているのは本当にあり得ないことで、騒ぎを聞きつけてきた八尋も驚いていた。思わず返事が敬語になってしまう気持ちも本当に理解できる。それぐらいにこの人が出てくることはありえないから。
その人物はと言うと、ピンク色の頭を掻きあげながら八尋の方に笑いながら話しかけている。
「・・・・は?」
「あれ、俺と同じ色の髪・・・そっか、君が龍野八尋クンだな?あっはは、確かにこりゃすぐわかるわ。」
「よく俺だと解って・・・あ、あの、『サーベラス』の元総長の・・・マホさんですよね?」
「ああ、俺も特徴を聞いたけれど見たらすぐに解るって言われて・・・その髪なら納得だ。それにしても、もう引退して5・6年ほど経つが、現族長に知ってもらえているとは光栄。あ、ここの席に座っていい?」
もちろんと八尋が促せば、お礼を言って座る。そして、ポケットに入れていた何やら包み袋みたいなものを取り出して八尋の手に渡した。
「あ、これ、妹から渡すように頼まれたヤツ。多分誕生日プレゼントだと思うんだけれど確認して?」
「・・・・・・イモウト・・って、もしかして香帆のお兄様っ!!!!!???」
その場にいた全員が一斉に悲鳴をあげたのも無理ない、俺だって八尋の叫びに紛れて叫んだ人間の一人だ。だが、目の前にいる男は大した風もなくあっさりと告げた。
「ああ、そうか俺の名字はあまり知られてないんだな。改めて、俺は田城真帆。んで、ご存じ、君の彼女である香帆の兄。これから、よろしくな。」
真帆の発言に周りがざわついているが、それも当然のことだと思ってしまう。さしあたり、香帆ちゃんについてはもっと丁重にもてなさねば。今でさえ恩がありすぎて返せていないというのに。
「香帆って、八尋さんの彼女の名前じゃん・・・やべ、俺挨拶されていたのを無視していたぜ。」
「俺もだ。てっきり毛色が違う遊び相手の一人かと思ってた・・・」
「うっわ・・・道理で俺らにも普通に接してくれると思っていたらこういうことか。」
「ってか、マジっすか、これ。伝説の人間が目の前にいるとか。」
「え、香帆ちゃんってマジで族長の彼女だったのか?遊び相手かと思って狙っていたのに!」
(・・・お前ら、八尋も聞いてるぞ。これから香帆ちゃんへの態度を徹底的に指導しなきゃ。)
混乱した頭で、真帆の方を見るが、気にした様子もない。それどころか、普通にマスターとも挨拶を交わしていることから、顔見知りなのだと察することができる。それにしても、ウィンク付きで言うとかっこいい・・・とか思ってしまうのは、やっぱり有名な人だからだろうか。
八尋というと、驚いて受け取ったまま固まってしまっていたが、我に返ったのかようやく会話が成り立った。
「・・・・お、おい、大丈夫か?」
「あ、ああ。とりあえず、好き勝手に香帆のことを話していたバカ達は後でシメる。」
「うん、聞こえていたなら良かった。俺の方でも指導しておく。」
「頼む。・・・そうだ、香帆からのプレゼントは・・・おお、すげぇ。手作りのネックレスだ。表に俺の名前、裏には『鬼人族』のモチーフがしっかり入ってる!あ、イヤーカフもある。すげぇな、香帆!」
「そういえば、香帆ちゃんの趣味ってシルバーアクセサリー作りだっけ。なんか銀粘土?を使って作ってるんだよね。」
「そういえば、新しいネックレス買おうかなーって話したことあったっけ。覚えていてくれたんだなぁ。」
確かに俺の目から見てもすごく精巧だと思う。八尋はというとすでにもともとつけていたネックレスを外してプレゼントされたネックレスを付けている。もちろん、イヤーカフも。そこまで香帆ちゃん好きかと遠い目になったのは内緒だ。
ひとしきり話した後、マスターとの会話が終わったのか、真帆が注文したノンアルコールを持ってきて席へと戻って座っている。
「妹が族と付き合うことになったって聞いてびっくりしたんだよな。だから、どんな男だろうって思っていた矢先に、香帆から伝言を頼まれたから代表で見定めに来た。まぁ、男の趣味は悪くないみたいで安心したぜ。」
「・・・・代表って?」
「あれ、香帆から聞いてない?俺達は三つ子で、香帆はその下に生まれた末っ子。」
「・・・1日の間に髪の色が何色にも変わるって噂がありましたけど、もしかして。」
「お、良く知ってんね。総長も俺達3人で交代してやってたの。当時の『サーベラス』のメンバーは全員知っていることだけどね。」
「ああ、だから・・・族の名前が『サーベラス』だったんですか。」
「正解。ケルベロスを英語読みにしただけだから安直だろう?」
ふふーんと笑う真帆の顔がちょっと香帆ちゃんに似てるなと思ったのは内緒だ。とりあえずはと少し歓談していたが、一時間ほどした時、真帆がふと時計を見てそろそろ帰ると言い出した。
「あ、やっべ。そろそろ帰らねーとバイトが。悪いが、帰るわ。」
「あ、はい・・・遅くまですみません。」
「いやいや、俺も久々にこの雰囲気を楽しめたよ。」
手袋をつけてサングラスをかけだした真帆に対して、見送りをするつもりで八尋と俺が一緒に玄関まで向かうことになった。
「今日はありがとうございっした。」
「ん・・・あっ、聞き忘れていたんだけどさ・・・八尋クン、女狂いって噂があるけど本当?」
「いやいやいやいや、それ、過去の話ですから!」
「そうか、そっかー過去なら別にいいんだよ?俺も好き勝手やってきた立場で説教なんざする筋合いはないしな・・・でも、やっぱり大事な妹なんでわかるよな?・・・まぁ、ないとは思っているけれど、万が一・・・万が一、もし泣かした時はさ、俺達の持てる力を全て使ってでも、お前のチームを潰してやるから覚えておいて?」
「・・・・ハイ。」
思い出したように振り返った真帆の声は心底ビビるくらい重い声だった。それに冷や汗を垂らしながらも必死に否定している八尋がちょっと犬みたいに見えたのは俺の気のせいだろうか。
「後、部下達の指導もちゃんとしておけよな。正直、俺としては、女狂いの噂がある男でいいのかと心配になっていたけど、莉里ちゃんから、『鬼人族』の族長ならクリスマスまでお預け状態にされているから大丈夫って聞いた時はさすがに、我が妹ながらひでぇと同情したね。・・・ま、我慢しているご褒美に、頑張れとまでは言えないけど、見守ってはやる。」
「ぐはっ・・・・ハイ、アリガトウゴザイマス。」
「後、弟たちもいずれは君に会いに行くと思うからそっちもよろしく。じゃなー。」
(でも最後に雰囲気が悪くならないようにオチをつけてくれたあたり、やっぱり香帆ちゃんのお兄ちゃんなだけあるなぁ・・・)
内心で彼女にあらんばかりの感謝を捧げつつ、必死に八尋を支えながら真帆を見送った。手を振って消えていった真帆に対して見送りを終えた後、店へと戻った。これから後かたずけをする必要があるわけだが、八尋は辺りを見回して、いきなり部下の何人かを指さした。
「・・・・・とりあえず、そろそろお開きだ。だが、その前にそこのお前とお前とお前、今すぐ俺の部屋へ来い。」
「えっ・・・・?な、なんでっすか?」
「香帆の挨拶を無視したバカ、香帆を狙っていたバカ、香帆を毛色の違う遊び相手と思っていたバカへのお仕置きを行う。今すぐ隣に来い。」
「「「ひぃいいいいい、か、勘弁してくやせぇええええ!!!」」」
「問答無用。将来のためにも未来の義兄となる人達の心象は少しでもよくしたいし、何より、香帆をバカにされたことで、俺自身がかなりムカついている。」
(うん、あの真帆さんの様子なら本気で俺達を潰しにかかるよね、きっと。俺も巻き添えは避けたいし、何より香帆ちゃんは恩人なんだよな。だから、止めないっ☆迷わず成仏してくれっ!)
「あっ、八尋の後は俺の指導が待っているから、よろしく。さー、他の奴らは全員指示に従って片付けしよーね。マスターに迷惑かけちゃだめだから丁寧にネー。」
俺の言葉に一斉に全員が従ったのは当然のこと。片づけを始めたのと同時に、隣の部屋から絶叫が響いたがただのBGMだろう。気にしないー☆とばかりに全員が無言ながらもせっせと片づけを終わらせた。
(こういう時、役に立つよねー☆ お蔭で早く終わっちゃったよ。)
次の日の朝、ようやく香帆ちゃんが学校へ登校してきた。
昼休みにやっと会えたのだろう、八尋がわんこのように尻尾を振ってダッシュして抱きつこうとして香帆ちゃんに止められていた。正直、この時の八尋はデレデレでキモチワルイとしか思えなかった。ちなみに、香帆ちゃんは困ったような顔だが、八尋の頭をなでなでしているところから本当は嬉しいのかもしれないと思う。
顔を引きつらせていると莉里がこっちに近づいて挨拶してきたので、こっちも挨拶を返す。
「こんにちは。」
「莉里、昨日はありがと、マジでびっくりしたよー。」
「ん、香帆は気づいてないけど、あの人達かなりのシスコン。」
「・・・・・そ、そう。」
「ガンバレ、族長。」
「・・・・もしかして、八尋との付き合いを止めなかったのって。」
「あの三つ子に対抗できる人少ない。これを乗り越えたらスゴイ。」
「なるほどねー。はは・・・がんばれよ、八尋。」
目の前でいちゃこらくっついているバカップルを遠い目で眺めながら呟いたのは言うまでもない。なんか遠くで八尋がプレゼント嬉しい、最高!大好きーだとかベタ褒めしていた。ああ、もう甘すぎて嫌だな。少し苦めにつくっておいた弁当を食べている最中に、香帆ちゃんと会話して、他の兄弟の名前も聞いて教えてもらった。
「え、お兄ちゃん達の名前? 上から順に真帆・冴帆・志帆だよ。」
「・・・帆がつくのはなんでなの?」
「お父さんの名前が帆高だからだと思うけれど・・・。」
「・・・香帆のお父さんってどんな人?真帆さんみたいなカンジー?」
八尋が気になるのか父親のことを聞いたが、香帆ちゃんはちょっと困惑気味に答えてくれた。
「お父さんは6年前に事故で死んでいるの、だから、お兄ちゃん達が働いてくれているんだよね。」
思わず八尋と顔を見合わせた。昨夜に真帆さんが言っていたことに合点がいったからだ。
(5、6年前に族を解散して引退したのって・・・多分、それが理由だよね。)
いいお兄ちゃんだねと笑うと香帆ちゃんも嬉しそうに笑ってくれた。その笑顔を見た時、心の中で八尋に手を合わせた。当の八尋本人は複雑そうな顔をしていたが俺の目線に気づいて苦々しい顔をしていた。
(結婚するとしたら、元総長の3人を相手に許可を貰わないといけないとか・・・・こりゃ大変だな、ガンバレ。うん、だって俺他人だもん。他人事でいいよねー?)
クリスマスが近くなったらまたこのシリーズを出したいと思います☆
そして、この小説はクリスマスが近くなったらマジで削除します。ラブ要素ないし需要もない!
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