夜、着替えと軽い準備運動をすませ、いつもの様にランニングに出かけました。
「冬の冷たい空気の匂いはなんとなく子供の頃のマラソン大会を思い出す匂いだなぁ」なんて思いながら家の前の急坂を下り、いつも走っている道に入ろうとすると、その道をなんか妙にテンションが高い感じで走っている一人の少年が目に入りました。
暗かったので定かではありませんが年齢は中学生か高校生くらいでしょうか、僕の様にランニングをしているといった感じではなかったので、どこかへ行った帰りにでも若さとか体力とかその他もろもろ色々な物を持て余して、テンションが上がってなんか走ってる感じなのでしょう。
進む方向が一緒だったので少しの間少年の後を追う様な形で走っていると、走り疲れたのか少年は少しずつ減速してほとんど歩くようなペースになりました。
そのまま先の赤だった信号で少年は立ち止まっていましたが、僕が追いついた瞬間ちょうど信号が青に変わったので、僕はそのまま少年を抜き去り先へと走っていきました。
僕には何も他意はなく、ただいつもの様にいつものコースをランニングしていただけの話なんだけど、それは少年のプライドを刺激する行為だったようです。
僕が走っていると、後ろから「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」と荒い息遣いが聞こえてきました。
ちらりと振り返ってみるとやはりさっきの少年でした。
少年はそのまま僕に並び、抜き去ると、チラッチラッと後ろを振り返ってきました。
・・・・・。
ああ、最高にめんどくせぇタイプだ・・。
別に競っているわけでもないのに何故こんな暗黙の勝負の様な物を挑まれているんだろう・・。
僕はいつも通りのランニングをしたいだけで、少年とここで夜のマラソン大会をする理由はなにもなかったし、もう少し行くと道がいくつかに分かれるので、それまでの辛抱と少年を無視しました。
しかしいくつかある道の選択肢の中から少年が選んだのは僕がいつも走っているコースの道でした。
えぇ・・・。
勘弁してくれと思ったけど他の道だと遠回りになってしまうし、僕がいつものコースを変えなきゃならない理由は別にないし、仕方なくそのまま少年の後をついていく事にしました。
少年も僕が同じ道を選ぶのは予想外だったのでしょう、少年は追いつかれまいとしゃにむにペースをあげました。
(´・ω・`)お前は一体何と闘っているんだ。
この先は長い下り坂が続く基本的には一本道のコースなのだけれど、ペース配分を無視し走り続けていた少年は息も荒く、フォームもバラバラでした。
それでも追いつかれまいと、ただでさえスピードが出やすく危険な下り坂で少年は無理やりペースを上げるので、もしかしたらすっ転ぶんじゃないかと思い、そうなったらめんどくさいと、少年とは一定の距離を開けて走っていました。
そして切実に
(早くどっか行ってくんねぇかなぁ・・)
と祈りました。
僕はトップ選手とかではなく、ただのランニングが趣味の一般人なんだけど、そんなに僕に勝ちたいのか・・。
というか何をもって勝った負けたなのかよく分らないけど、でもまぁ、こういうしょーもない事や小さなことでも意地になって張り合ってしまう気持ちは僕も同じ男なのでよく分かったし、あの少年くらいの年齢なら尚更なんじゃないでしょうか。
数年前、僕がプールで平泳ぎをしているとその後を同じく平泳ぎでついてくる兄ちゃんがいました。
兄ちゃんの平泳ぎのフォームはとてもきれいで、僕は「やるなぁ」と思いましたが、僕も平泳ぎは得意だったし「デュフフ・・ついてこれるかい?」とペースを上げました。
すると兄ちゃんもそれに応じた様にペースを上げました。
(╯⊙ ⊱ ⊙╰ )(おっ?おっ?おっ?上等だ、おっ?おっ?おっ?おっ?)
と、僕が更にペースを上げると兄ちゃんもまたペースを上げるのが分かりました。
そうして不毛な闘いは開始されました。
一体プールを何往復して、どれくらいの時間がたったのか。
僕と兄ちゃんの闘いはおそらく先に音を上げて止まった方の負け(?)という持久戦の我慢大会になっており、僕もそして多分兄ちゃんももう意地になっていました。
僕の心肺機能は既に限界に達していましたが、相手より先に折れる事は今更許されませんでした。
(´;ω;`)(くるちい・・くるちいよぉ、こいつもう帰れよぉ)
と僕は内心泣きが入っていましたが、最後の力を振り絞ってペースを上げ兄ちゃんを引き離しにかかりました。
すると兄ちゃんは根負けしたのかそれとも不毛な闘いが馬鹿らしくなったのか、泳ぐのを止めプールから上がっていきました。
僕は息も絶え絶えでしたが、引き上げていく兄ちゃんの背中に
「はっはっー!!くにえかえるんだなっ!!」
と心の中で勝利宣言をしました。
・・・・・・。
(´・ω・`)ちょー虚しい。
(´・ω・`)そして下らない。
だからなんだというのか。
顔見知りの監視員の人も「なにしてんのこの人」といった冷めた目で僕に祝福を送っていました。
僕は少年をしょうのないやつだと思っていたけれど、思い返してみれば僕も似たような事を色々して、些細な事で意地や見栄を張って生きてきたんだよなぁ。。
そう思うと夜の街頭に照らされ、息を切らして走る少年の姿に何かシンパシーの様なものを感じました。
少年の意地の張り方は一方的で、意味不明な様な気もしたけど。
しばらく少年の後を走っていると、少年はふっと本道を抜け脇にあった小道へと入っていきました。
その先は袋小路の様な場所で何もなかった気がしたけど、多分もう体力の限界で休憩するためにそっちの道にそれたのだろうなと思いました。
なんにせよ、これでようやく静かに走れそうです。
グッバイ少年 フォーエバー
結局あの少年は僕に勝ったのだろうか、負けたのだろうか?
よく分らないけど、きっと今も世界中の至る所で誰かと誰かのしょーもない意地の張り合いが行われているんだろうなぁと、僕はランニングを続けながらそんな壮大()な事を考えました。
ʅ(◔౪◔ ) ʃ おしまい
そういえば痛水着とか痛競泳水着は作られないのかなぁ。
(´・ω・`)・・・・
(´・ω・`)すげぇ!
(´・ω・`)微妙!!
(´・ω・`)いらねぇ!!!
おまけ
「サウナ」
サウナに漂う謎の我慢大会の様な雰囲気!