大勢の町民らがペンライトを振って見送る中、留萌方面(左)に向かって増毛駅を出発する最終列車=北海道増毛町で2016年12月4日午後8時9分、手塚耕一郎撮影
地元住民ら約2000人が最後の列車の出発見送る
「さよなら」「ありがとう」。万感の思いを込めた声がこだまする中、北海道増毛町の増毛駅を4日夜、最終列車が出発し、JR留萌線の留萌-増毛間が1世紀足らずの役割を終えた。かつては住民の生活に密着し、物流を担った鉄路も利用者は激減。JR北海道が道内全域の路線見直しを急ピッチで進める中、増毛町は他の自治体より一足早く鉄路なき将来に直面することになった。
増毛駅では「蛍の光」の演奏の中、地元住民ら約2000人がペンライトを振って別れを惜しむように定刻より22分遅れとなった最後の列車の出発を見送った。最終列車を待つ長蛇の列に並んだ札幌市豊平区の会社員、千葉明宏さん(35)は「海沿いの景色が好きで何度か来ていたが、それが見られなくなるのが寂しい」と残念がった。
この日午後、増毛駅では大勢の住民らが参加したお別れセレモニーがあり、堀雅志町長は「鉄道ファンである私が廃線同意の判を押さなければならなかったのは、非常につらく寂しい思い」と無念さをにじませ、「鉄道がなくなっても、町の魅力を全国に伝えていく」と宣言した。
一方、留萌駅では、満員続きの列車に高橋定敏市長が「山手線のラッシュアワーのよう」と乗客らに感謝し、再訪を呼びかけた。ただ、JR北の須田征男会長は「これからも一緒になって発展に尽くしたい」とあいさつしたが、出席者からは「それができなかったから、廃線になったのではないか」との声も漏れた。
留萌線では残る深川-留萌間もバス転換が提案されており、住民らからは引き続き廃線問題に直面する不安や心配の声が相次いだ。
留萌市議会の野崎良夫議長は「二度とこんなセレモニーをしてはいけない」と存続へ決意。留萌駅前で親子2代で飲食店を営む男性(52)は「通学、通院で鉄道は必要だ。なくなればさらに学生が減り、地域の衰退につながる」と心配した。
この日、列車を見送るために留萌駅を訪れた留萌市の無職、間瀬重昭さん(71)は「みんな自動車を使うので、廃止も仕方ない」としながらも「鉄道は地域を支えた大動脈だった。やはりなくなるのは寂しい」と複雑な表情を浮かべた。【横田信行、遠藤修平、野原寛史、渡部宏人】