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トランプがきた

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[Part1]勢いづく「欧州のトランプ」 /青田秀樹(パリ支局長)


「もはや何でもありだ。目の前で、ひとつの世界が壊れていく」。大統領トランプの誕生に駐米フランス大使は、こうツイートした。ほどなく取り消されたが、米国だけでなく欧州も覆う空気を言い当てていた。


英国の欧州連合(EU)離脱と同様に、ありえないと思われたトランプの当選。そしてフランスでは、来春の大統領選に向け、右翼・国民戦線(FN)が勢いを見せている。


「ポピュリスト」を自任する党首ルペンは、「エリートたちがありえないと言うことを、民衆とともに可能にする」と語る。「壊れるのは『ある種の』世界にすぎない」。ルペンの右腕で副党首のフィリポは「彼らの世界が壊れる。われわれの世界ができあがる」とした。


FNは、エリート官僚が仕切るEUから国家の主権を取り戻す「愛国」をうたう。難民や移民の流入を防ぎ、国境を再構築する。暴力的なグローバル化のもと、不当な競争を強いる自由貿易の拡大は拒否する。忘れられたフランス人、「民衆」のための政治をする──。トランプと重なる訴えは、もたつく経済と、相次ぐテロによる治安への懸念のもとで支持を広げる。




「民衆の名のもとに」


ルペンが大統領選へと本格的に動きだしたのは9月。パリから東へ車で3時間余り、人口60人ほどの村ブラシェでだった。住民が「忘れられたフランスだ」というこの村でFNの支持は厚い。2012年の大統領選(第1回投票)でルペンの得票は7割を超えた。「忘れられた人たち」に寄り添う姿勢を見せ続ける。


その声に応えるように、小さな丘のふもとにある役場前の広場を支持者らが埋めた。地元の男性(52)は「税金は取られるのに村には郵便局もない。FNに託してみたい」と話した。


大統領選で決選投票に進むと見られているルペンは11月、大統領府・エリゼ宮と同じ通りに選挙事務所を開いた。広間の壁に、波打ち躍るような配置でPEUPLE(民衆)の文字が並んだ。「民衆の名のもとに」というスローガンだ。決選では敗れるとの見方が多いものの、「当選もありうる」(首相のバルス)と警戒する声も出る。


政治家は民意に敏感だ。元大統領のサルコジは、最大野党・共和党(中道右派)の候補者争いで敗れたものの、「エリートは現実を知らない」「民衆の候補になりたい」と繰り返し、移民の家族呼び寄せの制限や、要注意人物の予防的な収監を進めたいと訴えた。南仏ニームでの最後の演説を聴いた失業中の男性(24)は「どんな候補者も、反エリートだと言わないと耳を傾けてもらえなくなっている感じがする」と語った。



米国と同じ風

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