アベノミクスで富裕層資産272兆円と過去最高、富裕層に6%課税するだけで消費税収は確保できる

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野村総合研究所が11月28日、2年ごとに調べている「富裕層アンケート調査」の結果を次のように公表しています。(以下は抜粋で転載)

日本の富裕層は122万世帯、純金融資産総額は272兆円

野村総合研究所「富裕層アンケート調査」(2016年11月28日)

日本の富裕層・超富裕層の世帯数は、2013年のピークを越えて増大

純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると、2015年時点で121.7万世帯でした(図1)。内訳は、富裕層が114.4万世帯、超富裕層が7.3万世帯です。

2013年の世帯数と比較すると、富裕層は20.0%、超富裕層は35.2%増加し、両者を合わせると20.9%増えました。NRIが同様の方法で推計を行ってきた2000年以降、ピークであった2013年の合計世帯数100.7万世帯を、約21万世帯上回っています。

富裕層・超富裕層の世帯数増加は、2013年から2015年にかけての株価上昇により、2013年時点では純金融資産が5,000万円以上1億円未満であった準富裕層と1億円以上5億円未満であった富裕層の多くが資産を増やして、それぞれ富裕層・超富裕層に移行したことが原因と見られます。

富裕層・超富裕層の純金融資産総額も増加が続く

2013年から2015年にかけて、富裕層および超富裕層の純金融資産総額は、それぞれ17.3%、2.7%増加し、合わせて12.9%増えました。2015年における富裕層および超富裕層の純金融資産総額272兆円は、NRIが推計した2000年以降のピークであった2007年の254兆円を上回っています(図2)。富裕層および超富裕層の保有する純金融資産保有額の増加は、前述のように、安倍政権下の経済政策(いわゆるアベノミクス)による株価上昇がこの期間続いたため、もともと富裕層および超富裕層の人々の保有資産が拡大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に移行したためと考えられます。

 

この野村総研のデータと、以前紹介した貯蓄ゼロ世帯のデータでグラフをつくってみたものが以下です。

上のグラフにあるように、2011年から2015年の変化を見ると、富裕層は40.7万世帯増の1.5倍増で、貯蓄ゼロ世帯は327.6万世帯増の1.2倍増と急増していることが分かります。まさに、富裕層と貧困層が増える格差の拡大となっているのです。ここで、世帯割合を見ると、資産1億円以上の富裕層は上のグラフの%の数字になりますが、ちなみに資産5億円以上の超富裕層の世帯割合は2011年は0.94%、2013年は1.45%、2015年は1.48%となりますので、ピケティは所得での上位「1%」に富が集中することを指摘していますが、資産での「1%」は5億円以上の超富裕層に相当することが分かります。

同じように、下のグラフは、富裕層の資産と貯蓄ゼロ世帯数を見たものです。ここでも富裕層資産は1.4倍増で貯蓄ゼロ世帯の1.2倍増に比例して増えています。

財務省のサイトにアップされている2016年度の「第2次補正後予算」を見ると、消費税収17.1兆円、法人税収12.2兆円、所得税収17.9兆円です。富裕層の資産272兆円に6%程度課税するだけで消費税収をまかなえる規模になるのです。そして、6%程度の資産課税というのは、下のグラフ群にあるように、富裕層の税負担が貧困層より軽い事実を踏まえるなら、不当な課税とは言えないと思います。

 

 

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◆日本をタックスヘイブン化するアベノミクス=貧困層より税金が軽い富裕層、零細企業より法人税が軽い大企業、社会保障には財源がないと言い、財源は貧困層から収奪する消費税増税というディストピア日本

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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