韓国・現代自動車の労働組合は先月29日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求める全国民主労働組合総連盟(民主労総)主導の30日のストライキに参加することを明らかにしました。労組は24日、組合員を対象にストの賛否を問う投票を実施しましたが、過半数の賛成を得られませんでした。ところが、民主労総傘下の全国金属労働組合でストが可決されると、上級団体の指針に従いストに参加することを決めました。民主労総のストは「朴大統領の即刻退陣」や「各種政策の破棄」を訴えるもので、「市民不服従運動」の一環として行われています。
スト参加を発表した現代自の労組も、朴大統領と親友、崔順実(チェ・スンシル)被告の一連の疑惑について「国政介入を超え、国を危うくした利敵行為」だと非難したほか「朴政権による賃金ピーク制拡大などは財閥が裏金を渡して朴大統領をたきつけたせい」などと主張しました。
しかし、ストへの参加が決まると、現代自労組の組合員の間では「週末に個人的に(大統領の退陣を求める)平和のろうそく集会に参加しているのに、なぜ労組が違法なストを強行するのか分からない」といった不満が広がりました。労組のホームページにも「いくら民主労総の支部とはいえ、組合員の意向を無視したストは今の朴大統領の行動と何が違うのか」といった批判が寄せられています。
今、現代自の経営状況は最悪です。創業以来で初めて年間販売目標(813万台)を前年より低く設定したものの、これさえも達成できない状況となっています。一時は80%に迫っていた国内シェアは50%台に低下し、7-9月期の営業利益率も業界で持続可能な経営ができる最低ラインとされる5%台を割り込みました。役員が先ごろ給料を自発的に10%削減し、会社が海外駐在員の教育まで取りやめたのも、危機意識の現れに他なりません。
また、自動運転車や電気自動車(EV)など次世代カーの開発が進む世界の自動車産業は、サムスン電子などのグローバルトップ企業が最も注目している分野です。にもかかわらず、韓国自動車業界のリーダー格である現代自はこうしたイシューで注目を得られずにいます。意思疎通の不在が批判を浴びる朴大統領ですが、厳しい状況で会社と組合員の未来を真剣に考えるどころか政治ストに熱を上げている現代自労組こそ、「外部との意思疎通」が必要なのではないでしょうか。