News Up WELQ騒動から見えた3つのこと

News Up WELQ騒動から見えた3つのこと
大手IT企業「DeNA」が展開していた複数の情報サイトが一斉に休止に追い込まれました。医療や健康などユーザーが気になる情報について信頼性が揺らぐ問題がネット上で次々と指摘されたためです。今回の事態からどんなことが見えてくるのか?3つの視点でまとめます。
騒動の中心にあったのは、大手IT企業「DeNA」が手がけていた「WELQ」(ウェルク)という“医療情報サイト”です。掲載していた記事について、「他のサイトから記事を盗用している」「情報が間違っていて信頼できない」とソーシャルメディアやブログで連日指摘され、先月29日にすべての記事を非公開に。記事の中には、肩こりは霊が関係している、という趣旨のものもありました。

今月1日には、インテリアや旅などの情報を扱う、ほかの8つのサイトも公開を停止。DeNAはゲームに続く事業の柱として拡大してきたこうした「キュレーションメディア」を、ことごとく休止せざるを得ない異例の事態に追い込まれたのです。問題の発端となったWELQについては「根拠が不明確な記事を載せていた」と、その非を全面的に認めました。

異例の事態 全記事非公開

騒動の中心にあったのは、大手IT企業「DeNA」が手がけていた「WELQ」(ウェルク)という“医療情報サイト”です。掲載していた記事について、「他のサイトから記事を盗用している」「情報が間違っていて信頼できない」とソーシャルメディアやブログで連日指摘され、先月29日にすべての記事を非公開に。記事の中には、肩こりは霊が関係している、という趣旨のものもありました。

今月1日には、インテリアや旅などの情報を扱う、ほかの8つのサイトも公開を停止。DeNAはゲームに続く事業の柱として拡大してきたこうした「キュレーションメディア」を、ことごとく休止せざるを得ない異例の事態に追い込まれたのです。問題の発端となったWELQについては「根拠が不明確な記事を載せていた」と、その非を全面的に認めました。

視点1 キュレーションメディア急増の功罪

そもそも、こうした「キュレーションメディア」はここ数年、急速に数が増えています。見栄えのよい写真とともに、ファッション情報や料理のレシピ、健康・旅行に関する最新の動きなど、ユーザーが気になる情報を紹介。空き時間に手軽に情報を得られる読み物として人気を得てきました。
しかし、プロのライターではない一般の人がネット上の情報を「寄せ集め」で作ったような記事も増え、文章や写真の「パクり」が再三指摘されてきました。
DeNAに取材したところ、WELQの場合、記事はおおむね4種類の書き手によって執筆されていました。「編集部の人が書いた記事」「ネットで募集した外部ライターの記事」「広告のスポンサーなどが作成した記事」「ユーザーが自由に投稿した記事」です。
しかし、今回の問題を受けて記事発注のプロセスをチェックしたところ、外部ライターに執筆を依頼する際のマニュアルに、「ほかのサイトからの転用」を“推奨”しているとも取れる指示があったということです。また、外部ライターは主婦などが多く、医師など専門知識を持った人間はほとんどいませんでした。

さらに、WELQに掲載されていた記事には、一番下に小さく、「記事の情報および判断について、正確性、完全性、有益性、特定目的への適合性、その他一切について責任を負わない」と書かれていました。

DeNAは「『情報を集める際の入り口になれれば』という観点でわかりやすい記事を書くことを念頭においていた」と明かしています。「医療専門家の監修は受けておらず、編集部が記事の品質をチェックする態勢もなかった」として、今後はチェック体制を構築したいとしています。

視点2 駆使された“SEO”

このサイトの問題点として、「検索結果の上位」に表示されるためのテクニックを駆使していたという指摘も出ています。こうした技術は「検索エンジン最適化」(Search Engine Optimization=SEO)と呼ばれ、ネットで閲覧を増やすために広く使われている手法でもあります。
SEOの専門家、辻正浩さんは、「DeNAは検索エンジンの傾向を研究して、検索結果の上位に表示されるよう、記事を大量に発注・作成していたのではないか」と分析しています。

辻さんは、ことし5月ごろから、病名や症状などを検索するとほとんどの場合でWELQの記事が1番上に表示されることに気が付きました。たとえば、「かゆい」という症状をある検索エンジンで検索するとWELQの記事が一番上に出てきます。さらに「158cm」「体重」といったワードを入れても、やはりWELQが最上位に出てきます。これを「156cm」「157cm」と変えて検索しても、やはりWELQが上位に。身長と体重を検索して自分の体重が適正かどうかを調べようとする人が多いことから、それに対応していたのです。

どういうことなのか?DeNAはネットで多く検索されている単語を先にリストアップし、「それに対応する記事」を大量にライターに発注、その結果、信頼できない記事が大量に生まれてしまったのではないか、辻さんはこのように分析しています。そのうえで、「SEO自体は決して悪いことではないが、いい加減な記事を大量に作成し、『必死に情報を探している人』に読ませようとしたのは倫理的に問題だ。金もうけ主義と言われてもしかたない」とも指摘していました。

視点3 医療の情報はどうあるべきか

辻さんが言うところの「ユーザーが必死に探している情報」。つまり、今回でいえば「病気」や「健康」のような重要な情報を扱うサイトで信頼性をめぐる問題が発覚したことで、より批判が高まったと言えます。

『子どもを守るために知っておきたいこと』の共著がある小児科医の森戸やすみさんは、「医療に関する根拠のない情報はネットにあふれていて、間違った知識を信じきっている患者も多くいる」と指摘しています。特に子育て中の母親は時間に追われているので空いた時間にスマホでサッと検索…、記事におかしいところがあっても気が付けず鵜呑みにしてしまうのではないか…。森戸さんはこう懸念しています。

森戸さんによりますと、大事なのはこういうことです。「医療の情報を得るときには、きちんと専門家が監修しているかどうか、その人物が信頼できるかどうかを調べる」「『ワクチンは打ってはいけない』『薬は一切飲むな』といった極端な記事を目にしたら、反対の立場の記事も読んで比べてみる」。皆さんはどうですか?

情報があふれるネットの中で

疑わしいものも含めてキュレーションメディアの記事が読まれる背景には、そもそも、医療のような、気になる重要な情報について、わかりやすくて信用できる情報源が不足しているという事情があるのかもしれません。森戸さんは「『正確な情報は時間をかけて初めて手に入る』という認識が大切だ」と指摘しています。情報の信頼性が問われた今回の騒動。見る側にとっても、ネットへの向き合い方を改めて考えるきっかけになったと言えそうです。