以前のページで、ダンゴムシの生殖器について書いた。
そこに書いたとおり、オスの生殖器として、2本のペニスがある。
しかし、とても小さく、交尾には、2本の第2腹肢内肢が代わりに使われる。
オスの第2腹肢内肢は細長く、先端部分をメスの生殖孔に挿入する。
先端は、膨らんでいたり、小さい棘がついていたりすることが多い。
メスの交尾器は、前のページに書いたとおりである。
ダンゴムシの生殖脱皮、生理周期、求愛: だんだんダンゴムシ
オカダンゴムシの交尾(手抜き)
オカダンゴムシの交尾は以下のURLに書いてある。
http://animaldiversity.org/accounts/Armadillidium_vulgare/
前のページに書いたとおり、メスの生殖脱皮のときに排卵が起きるため、生殖脱皮のときに交尾する。
この交尾期間の頻度は、年1~3回程度である。
その期間が来る数日前から、オスはメスに抱きつくようになる。
つまり、メスの排卵が来るまで何日も、オスはメスに抱きつき続ける。

メス(下)に抱きつくオス(上)
その割に交尾時間は短く、挿入は数秒で終わる。ぇ……
交尾後、メスは反応しなくなり、次の生殖脱皮まで交尾は行わない。
一方、オスは常に交尾が可能であり、死ぬまでに複数のメスと交尾することがある。
メスは貯精嚢があり、オスの精子を保存できるが、交尾期間のたびに交尾することもできる。この場合、複数のオスの精子が貯精嚢の中に溜められる。(ひぇぇ)
コシビロダンゴムシの交尾
コシビロダンゴムシの一種 Venezillo evergladensis の交尾行動を簡単に紹介する。
(Johnson, Clifford. "Mating behavior of the terrestrial isopod, Venezillo evergladensis (Oniscoidea, Armadillidae)." American Midland Naturalist (1985): 216-224.)
よくわからなかった。翻訳のミスがあるかも。
前のページに書いたとおり、通常のダンゴムシは生殖脱皮のときに交尾する。
しかし、このコシビロダンゴムシは例外的に、生殖脱皮と関係なく、交尾を行う。
1. オスは触角でメスの匂いを探知すると、激しく動き回る。メスを見つけると触角でメスの頭をつつき始める。メスは動きを止める。丸くなることもある。
2. オスは数十秒もメスの頭を触角でつつき続ける。
3. つつき終わると、メスの上に乗っかる。このとき、メスと90°体がずれる。約1分続く。
4. オスはその後、メスの横側に移動し、上半身を脚でつかむ。
5. メスが前進し、オスの腹肢の上に生殖孔を持っていく。

白:オス、灰色:メス
左から、3→4→5である。
6. オスは第1腹肢、第2腹肢を挿入する。左右の順番は特にない。
上:メス、下:オス、赤:オスの第2腹肢内肢
このとき、寝かせてある2本の第2腹肢内肢を立てると思われる。
このとき、左右両方の腹肢を合わせて挿入する。
挿入時間は、約45秒である。
8. なぜか再び、2や3と同じ行動を始める。
9 オスは移動して、反対側のメスの生殖孔に第2腹肢内肢を挿入する。
10. 交尾直後のメスは、オスの交尾行動を誘発させないが、少し経つとオスの交尾行動を引き起こし、交尾するようになる。
処女メスは9割以上の確率でオスに交尾行動を誘発させるが、交尾済みメスは4割以下となる。
交尾済みメスも6割方、オスのアプローチを拒否する。
フナムシの交尾
フナムシのメスも、交尾が可能な時期(生殖脱皮)が周期的にやってくる。
以下、インドのアンダマン・ニコバル諸島に生息する、フナムシの一種 Ligia dentipes を紹介する。
(Santhanakumar, J., et al.
"Mate guarding behaviour in the supralittoral isopod, Ligia dentipes
(Oniscidea) from the Andaman and Nicobar Islands." Invertebrate Reproduction & Development 58.2 (2014): 128-137.)
Ligia dentipes では、生殖脱皮の後ろ半分と前半分を行う間の30分間のみ交尾が可能となる。
生殖脱皮の周期は、約40日である。
交尾は以下のような流れである。
交尾前
1. オスは、成熟している非妊娠メスを待ち伏せし、見つけると上に乗っかり、第1胸脚をメスの甲羅に引っ掛け、 mate guarding を始める。
2. しばらくメスは抵抗する。オスのサイズや体力を確かめるためである。つまりメスより軟弱なオスは交尾できない。
3. 半日~数日に及ぶ配偶者防衛(mate guarding)をして、メスの脱皮を待つ。
この間、他のオスからメスを守る。ときには、力の強い別のオスに奪われることがある。

キタフナムシの配偶者防衛
オスの第1胸脚が、メスの頭部と第1胸節の間に引っ掛っている。
交尾
4. メスが後ろ半分の生殖脱皮(reproductive molting)をする。
これにより、左右それぞれの第5胸脚のつけ根にある(体の腹側の左端と右端に位置する)メスの生殖孔が開き、交尾が開始される。
5. オスは第1~第4胸脚でメスの頭を掴みつつ、第5~第7胸脚でメスの体を持ち上げる。
6. オスはメスの体を斜めに配置し、自分の体の後ろ半分を曲げ、メスの腹側に交尾器(第2腹肢内肢)を持っていき、メスの生殖孔に挿入する。
左が終わったら、メスの体を移動させ、右の生殖孔に挿入する。

上の論文をもとに作成。
白抜き:オス、灰色:メス
左から、配偶者防衛行動中、メスの左の生殖孔にオスの交尾器を挿入、右側に挿入。
交尾行動は、リズミカルに行われる。(本当に論文にこう書いてあります)
交尾時間は7~12分である。
交尾後
7. 交尾が終了すると、オスはすぐにメスから離れる。
8. フナムシは乱交型であるため、オスは直ちに新たなメスを探し始める。実験では、1ヶ月最大7匹のメスと交尾した。
メスも、別のオスのアプローチを受け入れ続ける。実験では、最大6匹のオスと再交尾した。(ただし、自然界での複数回交尾の観察例はない。)
しばらくすると、メスはオスを受け入れなくなる。後ろ半分の生殖脱皮の後、6~12時間で、前半分の生殖脱皮が起き、抱卵する。
抱卵から2~3週間後、子どもが孵り、育房から出てくる。
9. 孵化後、前のページで書いたように、メスは特殊な脱皮、単相性脱皮を一回行う。
海産ワラジムシ目コツブムシ亜目のParacerceis sculptaの交尾
Shuster, Stephen M. "Female sexual receptivity associated with molting and differences in copulatory behavior among the three male morphs in Paracerceis sculpta (Crustacea: Isopoda)." The Biological Bulletin 177.3 (1989): 331-337.
この種も生殖脱皮を後ろ半分した段階で交尾する。
交尾の姿勢は以下である。
論文より引用
白:オス、黒:メス
交尾時間は3~10分、そのうち交尾器の挿入時間は30秒~数分程度である。
やるべきことをやらずに書いた。
仕事が溜まりすぎてる。