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2016年11月

2016年11月28日 (月)

コツブムシの繁殖機構を乗っ取るヤドリムシ

ワラジムシ目(等脚類)のうち、約8割は自由生活 Free-living であり、他の生き物に寄生しない。

しかし残りの2割は、他の生き物に寄生して、血液、体液などを吸うことがある。

Imgp7783
スジエビに寄生するエビノコバンの一種





ワラジムシ目のウオノエ亜目には、寄生する種が多い。

タイノエ、ウミクワガタ、ヤドリムシなど。(ダイオウグソクムシもウオノエ亜目だが自由生活)

そのうち、カクレヤドリムシ上科 Cryptoniscoidea の一種 Ancyroniscus bonnieri は、同じワラジムシ目のコツブムシの一種 Dynamene bidentata に寄生することがわかっている。







Dynamene bidentataの生態

Dynamene bidentata は地中海など大西洋北部の浅い海に生息するコツブムシの一種である。


Trébeurden le 08/09/2010オス
http://nature22.com/estran22/crustace/isopodes/isopodes.html より引用

和名はない。つけるなら、フタトゲコツブムシかな。

オスは背中に2本のとげを持つが、メスは持たない。





潮間帯や潮下帯の岩の隙間や死んだフジツボの殻をすみかにしている。






Imgp2818
日本にも死んだフジツボを住処にするコツブムシが見られる。





ワラジムシ目なので、コツブムシのメスも卵をお腹の育房で保護し、孵化するまで抱える性質を持つ。

カクレヤドリムシの一種 Ancyroniscus bonnieri は、この卵を抱えているメスに寄生する。





Ancyroniscus bonnieri の生態

Holdich, D. (1975). Ancyroniscus bonnieri (Isopoda, Epicaridea) infecting British populations of Dynamene bidentata (Isopoda, Sphaeromatidae). Crustaceana, 28(1), 145-151.

(最近はsci-hubやresearchgateでタダで論文が読めるのだが、これは読めないようだ。)


Ancyroniscus bonnieriDynamene bidentata だけに寄生する。

寄生率は高く、1~3割ほど。

成体と寄生型幼生は、見た目がハエの幼虫のようで、目はなく、口器や胸脚などは退化している。

プランクトン幼生は発達した胸脚を持つ。





このカクレヤドリムシの幼生は、何らかの方法でこのコツブムシの体内に侵入し、内臓の組織に住み着く。

このときは、オスのコツブムシに寄生することもあり、一匹のコツブムシに最大4匹まで寄生する。






ただし、カクレヤドリムシのメスが卵をつくる場合は、コツブムシのメス一匹を独占する。

コツブムシの卵を食べ、代わりに自分の卵を産み付けてしまう恐ろしい寄生虫である。(・∀・;)

寄生されたコツブムシは、カクレヤドリムシの卵を育てる。

ほとんどのダンゴムシが持つ、卵が孵るまでメスがお腹で保護する形質を逆手にとっているのである。





このようなヤドリムシは日本にいるのだろうか?

なんでホストは特定のコツブムシだけなのか?

コツブムシはヤドリムシに対抗する手段を備えているのか?

いろいろ気になる。







詳しい生活史

長いです。



1.コツブムシが成熟し、卵が育房内にできると、カクレヤドリムシのメスは繁殖行動を開始する。

2.外骨格を破り、育房内に、頭と胸節の前半分を出す。

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寄生されたコツブムシの断面図。論文より引用
pp: 成熟前のカクレヤドリムシのメス。pe: 吸収されているコツブムシの卵




3.体組織に後ろ半分を固定したまま、コツブムシの卵を食い尽くす。

カクレヤドリムシのサイズが小さいと食べ残すことがある。

寄生しているのに口器や胸脚がわずかに残るのは、卵をエサにするため。




4.カクレヤドリムシのお腹は、卵を消化して得た脂質で膨れる。

成熟したメスは、この栄養を元に、自分の卵を作り出す。




5.作った卵は、コツブムシの育房と体組織内の両方に産む。

コツブムシよりも数が多い。

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カクレヤドリムシに卵を産み付けられたコツブムシ。論文より引用




6.数ヶ月すると卵が孵り、カクレヤドリムシの幼虫が出てくる。

親のコツブムシ、カクレヤドリムシは共に死ぬ。




7.そして、出てきた幼虫は、プランクトンになり、一次寄生者のカイアシ類に寄生しながら生活する。

そして、コツブムシが見つかるまで漂い続ける。


この論文にカイアシ類に寄生するヤドリムシ類の写真が載っている。

Medeiros, G. F., Medeiros, L. S., Henriques, D. M., Carlos, M. T., Faustino, G. V. B. D. S., & Lopes, R. M. (2006). Current distribution of the exotic copepod Pseudodiaptomus trihamatus Wright, 1937 along the northeastern coast of Brazil. Brazilian Journal of Oceanography, 54(4), 241-245.

ここには、「ヤドリムシに寄生されているカイアシは珍しい。」と書いてある。

カクレヤドリムシも生きていくのが大変なのかな。私も大変です。(._.)

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2016年11月27日 (日)

ダイオウグソクムシがポケモンになった

どうやら、ダイオウグソクムシをモチーフとしたポケモンが登場したようです。

名前が「グソクムシャ 」。英語はGolisopod。

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絵を描いた。

上半身がかっこいい。(本物が一番かっこいいが。)






進化前が「コソクムシ」。

グソクムシ+コツブムシみたいな名前だが、見た目はセロリス Serolis っぽい。





ついにワラジムシ目がポケモンになる時代になったのか

ぬいぐるみ、スマホケース、ティーパック、マグネット、衣類、ウィンナー…

流行が廃りませんように ( ̄人 ̄)

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2016年11月26日 (土)

ダンゴムシの尾肢は動く

最近、ダンゴムシを飼っていて思ったことを2つ。



コシビロダンゴムシの尾肢には、後ろに突き出た棘がある。

Imgp0074
左右の尾肢に1本ずつある。

コシビロダンゴムシのこの棘をピンセットで突っついてみた。

すると尾肢がピクピク動く。

尾肢は動かせるみたい。知らなかった。









ダンゴムシは枯葉をバリバリ食べて、いっぱいフンをする。

Imgp0071

そのおかげか、ダンゴムシが生きているとケースの中がフンだらけになる。

逆に死ぬと、きれいなままだからすぐにわかる。

そして、いっぱいフンをする割にあんまり大きくならない。落ち葉は栄養少ないのかな?

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2016年11月24日 (木)

カナリヤ諸島のダンゴムシをもらった

私のダンゴムシ好きを知る人からまたもやダンゴムシをもらった。

大西洋に浮かぶカナリヤ諸島のダンゴムシである。

Imgp0077

山の奥にいたらしい。

ふつーのオカダンゴムシArmadillidium vulgare にしか見えない。




Ecological data of isopods (Crustacea: Oniscidea) in laurel forests from the Western Canary Islands

この報告書を見ると、

カナリヤ諸島は全島でオカダンゴムシが外来種として見られるらしい。

しかも島にいるワラジムシ亜目11種のうち、少なくとも5種が外来種で、外来種の方が数も多いそうな。

日本も、あちこちにオカダンゴムシがいる

オカダンゴムシの生きられる環境は広いんだな

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