2015-03-29
振り子の等時性?
本題の前に、昨日の「単位展」に関連したネタ記事が好評らしい。画像解析ソフトウェア ImageJ を大真面目に使っていながら、やっていることは何の役にも立たない…まあ ImageJ の紹介と簡単な使い方が伝わればいいことにする。誤解の内容に説明しておくと、ImageJ はオープンソースの画像解析ツールなので、素性の知れないクローズドソースのツールに比べて画像解析の手法を明らかにしやすいというメリットから、専門的研究にもしばしば用いられている。
僕のブログでは実際の展示内容をほとんど説明していないが、例えばはてなブログで単位展について報告している方の記事は…
単位展の次に 21_21 DESIGN SIGHT では「動きのカガク展」を計画しているらしいので、これも行ってみたい!→追記 (2015-07-12):行ってきました!
さて、本題の「振り子の等時性」。東京都教職員研修センターの指導案が科学の真理に反することが TL で問題提起されている。発端はたぶんこれ。
第5学年 理科学習指導案(こちらの PDF ファイル)
単元名「ふりこのきまり」
単元の目標 おもりを使い、おもりの重さや糸の長さなどを変えて振り子の動く様子を調べ、振り子の運動の規則性についての考えをもつことができるようにする。
糸につるしたおもりが1往復する時間は、おもりの重さなどによっては変わらないが、糸の長さによって変わること。
確かに「糸につるしたおもりが1往復する時間は、おもりの重さや振れ幅などによっては変わらないが、糸の長さによって変わることを理解している」ことを評価規準としている。これについては実際には「90°の振れ幅」すなわち最下点から両側に45°ずつの最大振れ幅としたとき、周期は 4% ほど長くなるはずだ。これは振れ幅の違う二つの振り子を一緒にゆらせば周期が違うことがすぐにわかる程度の違いだそうで、CASIO の keisan の「振り子の周期」で簡単に計算できる。
もちろん実直に楕円積分で求めても同じ結果が得られる。振り子の周期は振れ幅によって「あまり変わらない」*1という結論を導くため、実験で 1 往復の時間が異なると捉えた児童に対しては誤差の範囲であると理解させるという記述も。精密な測定では等時性が成り立つという誤解を与えかねず、真の科学は
子どもたちは、ふれ幅をいろいろ変えて往復する時間をはかります。教科書はふれ幅が15度や30度の実験を紹介していますが、60度や90度でも試し、「往復する時間が長くなる」と言います。
という学習手順のはずなのに。さらに問題なのは、文部科学省の学習指導要領の記述(出典はこちら)。
現行学習指導要領・生きる力
小学校理科の観察,実験の手引き詳細
小学校理科の観察,実験の手引き 第5学年A(2)振り子の運動
おもりの重さや振れ幅が,おもりの1往復する時間に関係すると予想や仮説をもった児童の中には,実験の誤差をおもりの1往復する時間が変化したととらえる児童がいる。これは,自分の予想や仮説に合うようにデータを処理しているからである。
とんでもない記述だ。振り子の周期は振れ幅にも依存することは物理法則から明らかで、「単に無知なだけではなく、何が真理であるかの判定法の段階でおかしくなってしまっている」のだ! これはなんとかしなければ。