これはドリコム Advent Calendar 2016 4日目です。

テラと申します。
普段はゲームの背景などを制作しています。
社内で背景グラフィックの研究会などを開いていたりするので、そこで発表した背景に関する小話をさせていただきます。

イケてない場所

皆さんは普段ゲームを遊んだりアニメを見たりするとき、どれくらい背景を意識して見ているでしょうか。
あまり意識していないとしても、それは背景の見方としては自然なものです。
なんといっても背景なので、キャラより激しく主張などするべきではないからです。
背景は無意識に訴えかけ、見る人を作品世界に引き込むようなものであるべきです。

ところで背景はかっこいい場所もあればそうでない場所もあります。
かっこいい大聖堂や高い山の頂上など、ドラマティックでいるだけでわくわくするような場所もありますが、作品によっては、また物語の流れによっては、何の変哲もないただの道などということも少なくありません。
それも夕焼けや夜などの情緒的な時間帯でもない、よくある退屈な昼下がりみたいな時間帯だったりします。
極端に言えば下の図のような感じです。

イケてない場所のイケてるものたち

これは見るからにイケてないですね。
でもこんな場所でもできるだけ魅力的に表現したいのがデザイナー心というものです。
そこで少し書き込んでみます。

イケてない場所のイケてるものたち

質感などは出てきましたがやはりいまいち。
特徴がなさ過ぎてどんな場所か分かりません。
そこで小物を置いていくことにします。

イケてるものたち

イケてない場所のイケてるものたち

ここでイケてるものたちの登場です。
壁の落書きや配管、排気口など裏路地的なオブジェクトを描き足します。
本来ならはじめのラフでこのようなデザインをします。
この場所がどういう場所か物語るイケてるオブジェクトをバランスよく配置します。

イケてない場所のイケてるものたち

張り紙を書き込んでみます。
文字情報は直接的なメッセージになります。 ポスターや張り紙や看板などは、この場所で活動する人たちの文化的背景を物語ります。

イケてない場所のイケてるものたち

さらに配管や配電盤落書きなども描きこみます。
だいぶ裏路地らしくなってきました。
建物には正面、側面、背面と性格の違う表情があります。
イケてるオブジェクトたちが場所の空気感などを演出します。

イケてない場所のイケてるものたち

地面に置かれたもの、捨てられたもの、設置されたものを描きます。
都市の活動を想像させる小物たちを配置することで、日常的な雰囲気を演出します。

イケてない場所のイケてるものたち

歩道と車道の間に設置されているものを描きます。
建物と地面、歩道と車道、柱と壁、などの境界には、ひびが入ったり、草が生えたり、汚れがたまったりなど、ドラマチックな世界があります。
イケてない場所のイケてるものたちはこういう場所にあることが多いです。

イケてない場所のイケてるものたち

地面の草やコケを描きこんで、ちょっと色を調整して完成です。
と言ってもどこで終わるかは気分次第です。
まだまだいくらでも描くものはあります。

イケてない町のイケてるものたち

イケてない町にもイケてるものはたくさんあります。

たとえば

イケてるマンホール脇の草

イケてるマンホール脇の草

イケてる道路の補修跡

イケてる道路の補修跡

イケてる電柱の箱

イケてる電柱の箱

イケてる電気メーターと壁の塗装のはがれ

イケてる電気メーターと壁の塗装のはがれ

イケてる配管

イケてる配管

イケてる脚立と謎の金属箱

イケてる脚立と謎の金属箱

イケてるビルの隙間のごみ

イケてるビルの隙間のごみ

「何の変哲もない」背景を描くときに、画面に何を描けばいいのか。

町を細かく観察すれば面白いものがたくさん見られます。
あるあるネタのような感じで、脳内イメージのストックを増やしていけば、説得力のある背景が描けます。

おしゃれ大学生のようにカメラ片手にありふれた通りに繰り出して、ネタを集めておけば結構助けになります。

イケてない場所のイケてるものたち

さあ
イケてるものたちを探しに、イケてない場所に行こう!

おわり

About the Author

寺島誠一

テラ

デザイナー

ドリコム入社3年目のデザイナー。
前職でもゲーム制作に携わり、業界歴は10年くらいの中年男性。主に背景グラフィック制作を担当。漫画の背景を描いていたり、遊園地の装飾を作っていた時代もある。
ほんとはキャラも描きたいなーと思っていたりする