【コラム】中国に追い抜かれる韓国IT産業

【コラム】中国に追い抜かれる韓国IT産業

 数年前、韓国貿易協会のアン・ヒョンホ元副会長はインタビューを応じ、「中国は韓国が世界首位を走っているIT(情報技術)分野で近く韓国を追い抜く」と予想した。知識経済部(現産業通商資源部、省に相当)の第1次官を最後に公職を退き、韓中日3カ国の関係をテーマに分析した末に得た結論だった。アン元副会長は「韓国と日本の産業発展と20年の差があったとすれば、中国が韓国の産業を追い上げるスピードはさらに速い。特にIT分野は標準化された部品が多く、台湾の産業協力支援を受けている点を考慮すると、韓国の産業分野で最も早く侵食される可能性がある」と指摘していた。

 その予想は現実となった。韓国は4年前、スマートフォン、テレビ、液晶ディスプレーなどで世界首位だった。中国がリードする分野はパソコン程度だった。しかし、今年第3四半期にはスマートフォン分野で華為技術(ファーウェイ)、OPPO、VIVOという中国勢3社のシェアがサムスン電子を超えた。世界のテレビ市場では韓国と中国の国別シェアの差がわずか0.3ポイントまで縮小した。液晶ディスプレーのシェアは来年にも中国が韓国を追い抜くことが確実だ。

 中国による追い抜きは重工業分野でのデジャブだ。現代重工業の役員は2011年、「中国がいくら造船所を建てても、技術で武装した韓国の造船所は影響を受けない」と話していた。中国が量的には韓国を追い上げているが、技術では勝てないとの判断だった。現在造船産業は供給過剰の泥沼にはまり、骨身を削る構造調整が行われている。今後景気が回復しても、韓国の造船技術が中国に対し優位に立てると自信を持って言える経営陣は少ないだろう。中国鉄鋼業界は韓国の10倍以上の生産量を備えているが、技術的には韓国ポスコを追い抜けないとの主張もある。しかし、現在では宝鋼集団など中国の製鉄所が鉄鋼製品の中で最も付加価値が高い自動車用鋼板を生産し、ポスコと競合している。

 韓国の主要輸出品目で中国を確実にリードしている製品はもはや半導体だけだ。それも2-3年後には緊張して市場の状況を見守らなければならなくなるだろう。中国は20兆ウォン規模の半導体投資ファンドを創設し、DRAMのような先端製品の工場を中国に建設している。韓国の大手法律事務所の合併・買収担当弁護士は「現在は中国が韓国の先端バイオ、ゲーム、ロボット企業を買収することに関心を抱いているが、1-2年後には状況が変わるのではないか」と指摘する。

 4年前のインタビューを思い出し、アン元副会長は「危機説が現実となった。手遅れだとは考えず、今からでも経済システムを完全に変え、再び飛躍を狙うべきだ。それしかない」と言い切る。システムの改革には政治的リーダーシップが必要だ。しかし、「崔順実(チェ・スンシル)事件」が国家の重要課題をのみ込むブラックホールになっている。光化門広場での大規模なろうそくの海からは、我々が生き残る道に対する苦悩が感じられず、恐怖といらだちを覚える。

扈景業(ホ・ギョンオプ)産業2部次長
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】中国に追い抜かれる韓国IT産業

right

関連ニュース