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アニメ映画「この世界の片隅に」 片渕監督語る

◆浜松でイベント

アニメ映画「この世界の片隅に」の製作秘話や作品に込めた思いを語る片渕須直監督(右)=浜松市中区で

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 戦時下の広島を生活者の視点から克明に描き、ヒット中のアニメ映画「この世界の片隅に」の監督と脚本を手掛けた片渕須直(すなお)さん(56)のトークイベントが三日、浜松市中区で開かれた。片渕さんは県内外のファン約八十人を前に、街並みをはじめ当時の生活風景を忠実に再現した製作の過程や、作品に込めた思いを語った。

 映画は漫画家こうの史代(ふみよ)さんの同名作品が原作。広島市から軍港のある呉市に嫁いだ温和な若い女性が、食糧難の中で知恵を絞りながら懸命に生きつつ、やがて空襲の惨禍に見舞われていく姿を映像化した。

 片渕さんは、入港する戦艦大和を主人公らが段々畑から眺める印象的な場面を例に、海軍の記録に基づいて当日の天候や雲の様子を反映させるといった緻密な考証ぶりを解説した。戦争体験者が減る中で「昔はこんな世界だったと、よみがえらせることはまだできるとの可能性を示したかった」と振り返った。

 玄米を水で膨らませたり野草を調理したりと、当時の料理を実際に作って参考にしたことも写真で紹介。「美少女ではなく隣にいるような女の子がごく普通の生活を送り、その上から爆弾が降り注いでいた。『戦時中』という一言では表せない一日一日があったことを伝えたい」と力を込めた。

 イベントは二十四日から上映する中区のシネマイーラが、開館八周年を記念して企画した。

(久下悠一郎)

◆主人公の声を好演 のんさん一問一答

 アニメ映画「この世界の片隅に」で、主人公すずの声優として好演したのん(本名能年玲奈)さん(23)が中日新聞のインタビューに応じた。

 −原作の感想は。

 怖いイメージがある戦時下の話だけど、日常の中に面白さがたくさん描かれていた。すずさんがとぼけていたり、もんぺを着物から作り直していたりと、楽しそうですてきだった。別次元の非日常を自分に引きつけて見ることができ、衝撃的だった。自分でも作品の中に描かれている順序で、浴衣でもんぺを作ったら、すごくうまくできた。この作品に触れて、私もお料理やお洗濯が楽しくなり、生活する自分が誇らしくなってきた。すずさんも楽しく料理したり、節約のためにリサーチしたり、楽しんだ。

 −この映画では戦争を、主演したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」では東日本大震災が取り上げられている。

 こうのさんや片渕監督は「当時暮らしていた人たちにはいきなり危ないものが落ちてきて、自然災害のようにその中で暮らしていかなければならない状況があった」と話し、とてもふに落ちた。3・11や、八月末に岩手県内に大きな被害を与えた台風10号などの災害のように考えると、今回の作品は戦争だけの話でないと思う。映画では日々の暮らしの中にある素晴らしさが描かれている。

 −女優として成長を感じることは。

 いつもなら表情や身体表現を使って演技できるけど、今回は声だけなので難しかった。とても勉強になったし、戦時下の話を知ることもできて世界観も広がった。一生に一度出会えるかどうかのすごい作品と思い、監督から依頼されたとき「ぜひよろしくお願いします」と伝えた。ラストシーンがすごく好き。戦争の中で生活しているすずさんがいろんなことを受け止めて生きていく。日常の幸せがより際立っている。

(池田知之)

 

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