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高齢ドライバーによる事故が続いているが、気をもんでいる家族は少なくないのではないだろうか。本人たちは運転能力が低下している自覚はないから、周囲が気づくしかない。
「ウィンカーを左右出し間違える」「よく通る道なのに曲がる場所を間違える」「車庫入れで壁にぶつかるなど上手(うま)くできなくなった」「車のキーや免許証を探し回る」などが目立つようになったら“高齢運転ミスの前兆”だと『週刊文春』(12月1日号)が<高齢者ドライバー「こんな人が危ない」>と注意を呼び掛けている。
同誌の記事によると、高齢ドライバーで最も多いのは出会い頭の事故、次いで交差点での右折事故、歩行者巻き込み事故で「ハンドルやブレーキを臨機応変の操作する複雑な状況で起きている」と日本交通心理学会会長の松浦常夫・実践女子大学人間社会学部教授は指摘する。原因は注意力の低下。「複雑な状況では、どこに注意をしたらいいのか分からなくなってしまい、混乱して人や車にぶつけてしまう」のだそうだ。同乗者との会話をおっくうがるのも、注意力が低下して運転に集中しにくくなっているかららしい。
団塊世代が高齢化している現状では、今後こうした事故がさらに増えるのは間違いない。現在、75歳以上のドライバーは免許更新時に「認知機能検査」が義務付けられていて、記憶力・判断力が低いとされた人は、交通違反をした場合に医師の診断を受けることになっている。来年3月からの改正道路交通法では、違反がなくても医師の診断を受けることになるが、昨年、検査で「認知症の恐れがある」と判断された約5万4000人のうち、実際に医師の診断を受けたのは1650人ほどしかいない。自動車交通が専門の岩手県立大学名誉教授の元田良孝氏が高齢ドライバーを対象に行ったアンケートでは、約9割が「運転に自信がある」と回答していると『週刊文春』は伝えている。
どうやら、ドライバーの自覚を待っているだけでは高齢事故は減りそうもない。こうなったら自動運転まで高度でなくても、走行センサーとカーナビゲーションを組み合わせて事故防止システムはつくれないものか。走行中にふらつきや不自然な操作を繰り返す、逆走、速度の大幅オーバーなどを感知したら、速度を落としたりエンジンを止めたりする機能だ。
いまでも、クルマによっては、高速道路などで「ふらつきを感知しました。運転にご注意ください」と警告する機能はついている。これを応用すれば、技術的にはそれほど難しくないはずだ。高齢事故だけでなく、飲酒運転、乱暴運転の防止にも役立つだろう。自動車メーカーはぜひ検討してほしい。クルマは快適さや安全性に加えて、事故の加害者にならない機能が求められるようになっている。
1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。
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