夢を叶える145☆セルフイメージの変容と引き寄せ
一人で夢を叶えることはできません。仲間やクライアントなど、必ず誰かの手を借りなければなりません。そして、時に意見が食い違い、ぶつかることもあります。この時「妥協」という言葉が、「こだわりを押し殺してしぶしぶ承諾する」といったニュアンスで使われます。しかし、本当に妥協することは悪いことなのでしょうか?
【コミュニケーションの達人】妥協しながらコダワリをつらぬいて夢を叶える
なぜ、意見がぶつかり合うの?
上司と部下で意見がぶつかり合ったり、クライアントとデザイナーで意見がぶつかり合ったり、編集者と作家で意見がぶつかり合ったり、バンドメンバー同士で意見がぶつかり合ったり。夢に向かって仕事をしていこうとすれば、互いの意見がぶつかり合うことは多々あります。それ自体は、決して悪いことではありません。積極的に意見を出し合い、議論を深めていくことで、物事はよい方向へ進んでいきます。ところが、どちらも一歩も引かない、ということになれば、作業は停滞してしまいます。そこでお互いに譲り合い、妥協点を探るわけです。
しかし、世の中では「妥協」という言葉が、よくないものとして使われることが多いようです。
- 目標に向かって妥協してはいけない
- 妥協するのは負けだ
- 絶対に妥協してはいけない
本当に「妥協する」のは、悪いことなのでしょうか?そもそも、なぜ意見がぶつかり合うのかというと、お互いに「こだわり」を持っているからです。こだわりが強く、譲れず、妥協できない。でも、それでは前に進めません。「妥協」と「こだわり」は、相反するものです。
「妥協」が何なのかを探るために、まずは「こだわり」をみていきましょう。
「こだわり」って、なに?
「こだわり」って、どういう漢字か知っていますか?正解は、「拘り」です。一般的には「拘える」という読み方をします。「拘」という漢字が持つ意味は、「とらえる」「かかわる」「まがる」、そして「こだわる」。日本では、「拘える」の意味でつかわれることが一般的です。「拘置所」「拘束」などという時に使います。英語の「catch」よりも「hold」に近い感覚。がっちりとつかまえて、動きを封じるというニュアンスです。「拘り」という言葉には、「些細なことにとらわれた状態」というニュアンスがあるのです。
また、「こだわり」を意味する「拘泥」という言葉があります。ここで使われる「泥」という漢字は、「泥む」という意味でつかわれています。この「泥む」にも「こだわる」という意味があるほか、「とどこおる」という意味があります。泥のぬかるみに足をとられて、なかなか前に進めない状態です。
現在、「こだわり」は「オリジナリティ」に近い、良い意味として使われることが多いですが、日本人は古くから、こだわりが強すぎると物事が前に進まないことを知っていたのです。
「妥協」の本当の意味
「妥協」には、抑えるべきポイントが三つあります。
- 意見が対立しあった状況を、解決する方法
- どちらかが、もしくはお互いが、譲り合う
- 意見が合致する点を探り、おだやかに意見をまとめる
「譲る」ことが妥協には不可欠ですが、実は「意見を曲げる」「こだわりを捨てる」「無理に我慢する」などといったネガティブな意味は含んでいないのです。譲り合い、お互いが納得できる「妥協点」を探り、穏やかに答えを出す。それが「妥協」です。お互いが納得することこそが「妥協」の本質であり、「本当は納得していないけど、しぶしぶ諦める」のは妥協ではないのです。
- 妥協の「妥」とは、「おちつく」「おだやか」「話がまとまる」といった意味があります。どちらも折れずにいがみ合うことをやめ、落ち着いて話を進めることが「妥」という言葉に隠されています。
- 「協」には、「力を合わせて協力する」という意味のほかに、「かなえる」という意味もあります。
人は何かをかなえる、つまり目的を達成するために、妥協します。双方こだわりが強く一歩も譲れないままでは、肝心の目的が達成できません。「こだわり」よりも「目的」の方が大事だから、人は妥協するのです。「目標を達成するために妥協しない」のではなく、「何よりも大事な目標を達成するために妥協する」のです。
また「協」には、「一致する」という意味もあります。互いの意見の一致点を探り、互いが納得することが妥協には不可欠なのです。妥協とは決して「こだわりを捨てしぶしぶ我慢する」ことではなく、「拘りにとらわれず、目的を達成するために互いの一致点を探る」ことなのです。たとえこだわりを捨ててでも、納得できる結果を出すのが妥協。納得できないのであれば、それは「妥協」とは言えません。
ではなぜ、「妥協」という言葉が良くない意味で使われているのか?おそらくは、「手抜き」と混同しているのです。「妥協してこだわりを捨ててしまった」のではなく、「こだわりを貫くことに疲れて、手を抜いてしまった」。「妥協した」といえば、さも「相手が折れてくれなかったから、こだわりを捨てざるを得なかった。相手のせいなのだ」と聞こえます。しかし実際は、自分がこだわりを貫くのに疲れ、手を抜いてしまった。それを認めたくないから、自分からこだわりを捨ててしまったことを認めたくないから、「妥協」という言葉で自分をごまかしているのではないでしょうか?
「妥協してしまった」と後悔の念が強い言葉を使う時、実は手抜きを隠したいだけなのかもしれません。本当の妥協は、後悔しながらするものではありません。お互いの一致点を探し、お互いが納得する答えを探し出すことです。それは時に、単にこだわりを貫くよりも、骨の折れる作業なのかもしれません。だから、胸を張って妥協しましょう。
「どうしてもこのこだわりは捨てたくない」「どうしても妥協できない」というときは、自分のこだわりを伝えられているのか?相手に理解してもらっているのか?をしっかりと確認しましょう。なぜ、自分がそこまでこだわるのか。なぜ、そのこだわりを捨てられないのか。そこに込められた思いと背景を、言葉にして伝えるのです。自分が納得するために、どうしてもこのこだわりは捨てられないということを、しっかりと伝えるのです。
他人のこだわりは目に見えず、ただ感じることしかできません。本人がなぜこだわるのかをしっかりと伝えなければ、相手はこちらのこだわりを感じてもくれず、「融通が利かない奴」と思われてしまいます。「こだわりが強い」という言葉は使いますが、「こだわりが弱い」という言葉はあまり使われません。相手に強く伝わっていないのであれば、相手にとって自分のこだわりはないも同然なのです。妥協するためにも、こだわりを貫くためにも、しっかりとしたコミュニケーションが大事なのです。
まとめ
【コミュニケーションの達人】妥協しながらコダワリをつらぬいて夢を叶える
- 妥協とは、目的を達成するためにお互いの一致点を探ること。
- 後悔しているのならば、それは妥協とは呼ばない。手を抜いてしまっただけ。
- 後悔したくないのならば、こだわりをしっかり伝えよう。妥協するにもこだわりを貫くにも、しっかりとしたコミュニケーションが必要。