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[FT]米国の法人税制改革、トランプ流なら企業行動激変

2016/12/2 14:30
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 トランプ次期米大統領の政権移行チームがレーガン政権以来となる大型の税制改革を約束する中、議会共和党は、準備に入った抜本的改革の一環として法人課税の基本原則を覆そうとしている。

トランプ次期米大統領の政権移行チームはレーガン政権以来となる大型の税制改革を約束している
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トランプ次期米大統領の政権移行チームはレーガン政権以来となる大型の税制改革を約束している

 トランプ氏と下院共和党の計画は米国経済の再生を目的とする。計画が最も大胆な内容で通った場合、企業の海外所得、営業費用、輸出入、資金借り入れなどの扱いが変わり、企業の行動に大きな変化を引き起こすことになる。

 租税の専門家らは影響が及ぶ範囲として、欧州連合(EU)との間で問題化したアップルの事例のような海外での資金留保、米国内での投資決定、国際的な供給網の設計、多国籍企業の法的構造などを挙げる。

 トランプ氏が新政権の財務長官に指名したスティーブン・ムニューチン氏は今週、連邦法人税の最高税率を35%から15%に引き下げるとするトランプ氏の公約に言及し、「我々は法人税を引き下げる。それで多数の雇用が米国へ戻ることになる」と語った。

 税制関連法案は来年、トランプ政権と議会共和党との妥協によりまとまることになる。超党派の非営利組織「責任ある連邦予算委員会」は、トランプ氏の減税案が実施されれば今後10年間に米国の政府債務は5兆ドル膨らむとしており、議会共和党は減税規模を抑えようとするものとみられる。

 税制改革をまとめる下院歳入委員会のブレイディ委員長(共和党)は1日、「米国の長期的な繁栄に対する最大の脅威は膨張する政府債務だ」と述べた。

 しかし、ブレイディ氏はトランプ氏の構想に比肩する大胆な法人税改革を支持した。明言こそしなかったが、「米国を再び偉大にする」というトランプ氏の経済的課題の主要部分は税法を通じて達成されうると、ブレイディ氏は示唆した。

 トランプ氏はこの日、空調大手のキヤリアがメキシコへの生産移転計画を取りやめて1000人の雇用をインディアナ州に残すとしたことを祝うため、同州を訪れていた。計画の中止には、キヤリアに州の税優遇が約束されたことも絡んでいる。

 ブレイディ氏は、自分の政策案は「雇用、技術革新、本社の海外移転に働く税制上の誘因をすべてなくす」ものだと語った。「我々の目標は、単に流れを断ち切って米国企業の海外移転を止めることではない。我々の目標は、そうした投資を引き戻すことだ」

 下院共和党の税制担当スタッフは、すでにトランプ氏の政権移行チームと接触しているが、双方の政策案を擦り合わせる法案作りの本格的な議論が始まるのは年明け以降だろうと、共和党のある補佐官は言う。

 共和党側は少なくとも一部の民主党議員の賛成を得る必要があるが、民主党議員の間には、国民と国庫を犠牲にして企業を優遇しすぎる提案は一切拒否するという声が多い。

 法人課税のあり方を大きく変えうるという点で、共和党案には4つの目玉がある。まず、金融機関以外の米国企業が海外に保有している現金約1兆2000億ドルの扱いだ。現状では、海外に置かれている限り米国の課税は受けない。

 トランプ氏は資金を還流させるために、すべての海外所得に対する1回限りの10%課税を提案している。「みなし還流」あるいは「移転税」と呼ばれている。下院共和党はそれよりも細かく、現金には8.75%、すでに工場や企業買収など資産に投じられた所得には3.5%を課税する案を打ち出している。

 共和党の2つ目の案は、企業の課税対象所得のうち同年度中に投資した分は全額控除するというものだ。「費用計上」として知られるこの案は、ソフトウエアから職場の椅子に至るまであらゆるものへの支出を対象に含み、一定期間にわたる減価償却という現行制度に取って代わる。

 共和党の3つ目の案は、海外で販売される米国製品には法人課税を実質的になくす一方、企業が輸入する製品は課税対象とすることで輸出企業を優遇、輸入企業にペナルティーを科す内容だ。「そうなるとウォルマートは商品をすべて国内で仕入れ、海外仕入れの商品の価格に対する控除を失うことになる」と、シンクタンク「税政策センター」のスティーブ・ローゼンタール氏は言う。しかしながら、一部の民主党議員は関税貿易一般協定(GATT)のルールに抵触するのではないかと疑義を呈する。

 4つ目の案は、企業が債務の利息費用を課税対象所得から控除できる規定の廃止だ。共和・民主両党の議員とも、現行規定はリスクと負債の大きい資本構造への不健全な傾斜につながっていると言う。

 この4案がすべて現実になれば「企業の経営に変容を引き起こしうる」と、デロイトのマネージング・プリンシパルで税務専門家のジョン・トローブ氏は言う。

By Barney Jopson

(2016年12月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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