「ドコドンドコドン」。大分県臼杵市の海と山に囲まれた体育館に太鼓の音が響く。来春の閉校を控えた市立豊洋中学校での最後の文化祭だ。少子化に伴う学校の統廃合は、全国で進んでいる。「最後の…」もニュースではよく見かける話。しかし、ここが少し違うのは、実は2年前に今年3月末での閉校が決められていた、という点だ。それなのに、市は1年間の閉校延期に踏み切った。そこには、最後に残った3年生11人の「母校で卒業したい」という強い思いと、その意志を受け止めた大人たちの決断があった。
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臼杵市は豊後水道に面した自然豊かな土地だ。平安時代に岩壁に彫られたとされる摩崖仏「臼杵石仏」(国宝)や醤油製造などで知られ、中学校の校区には造船所も立ち並ぶ。人口は3万8千人余り。この40年で1万2千人減り、減少傾向は続いている。
話は2年前にさかのぼる。2014年11月、住民代表やPTA関係者、退職、現職の教諭らでつくる「市教育問題検討会議」が一つの考え方を示した。「中学校は社会性を身に付け、クラス間で競い合うためにも、最低でも1学年2クラス以上となることが望ましい」。小規模になると、配置される教員数が減ることや、団体競技の部活動が成立しづらくなる課題にも触れていた。
豊洋中は当時、1学年が11人から13人ほど。当然、望ましいクラス数を満たしていなかった。市教委は検討会議の結果を受け、「2016年3月末の閉校」「1年生(現在の3年生)は、3年時には隣接する地区の市立北中学校に通う」との方針を打ち出した。説明を受けた保護者や生徒には戸惑いが広がった。
当時を振り返り、生徒会長の尾崎華奈さん(15)は「最初は、ただのうわさだと思った。以前も小学校の閉校の話とかが出たことはあったので。でも、親と先生が話し合いをしたと聞いて、『本当になっていくんやないか』と不安になった。『(閉校は)本格的になっちょんけん。このクラスの11人が関わることやけん』と先生に聞いて、ショックを受けた」と話す。
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