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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

NHK籾井会長は『IT及び文化に関する見識とリーダーの資質を兼ね揃えていた、政治的に中立で国民の信頼を得られる』人なのに再任しないなんて、酷い!

ニュース 解説・まとめ 今日の法律・統計

NHKの籾井会長の再任が難しくなったようです。

NHK籾井会長、再任困難 経営委員の同意足りず:朝日新聞デジタル

私は籾井会長に特に思い入れはないのですが、そういえば、籾井会長が就任した直後の2014年2月に、依頼があって、籾井会長の日本ユニシス社長時代の業績を調べたことがありました。

NHK会長の籾井さんがトップだった時、日本ユニシスは最低の売上 - 斗比主閲子の姑日記

朝日新聞の記事では、

次期会長選考にあたって経営委は10月、「政治的に中立である」「人格高潔であり、説明力に優れ、広く国民から信頼を得られる」など5項目の資格要件を決定。ある委員は「籾井氏が合致しているとは言いがたい」とした。

ということで、籾井会長が会長としての資格要件を満たしていないことから再任が厳しいというように読めます。

こうなると、①籾井会長が就任するときのNHKの会長の資格要件はどんなものであったか、②籾井会長は過去どうやって資格要件を突破したのか、が気になりますよね。

ということで、早速、調べてみました。

 

資格要件はほとんど変わっていない

今年決まったNHK会長の資格要件は正確には以下の5つになります。

NHK経営委員会|委員長記者ブリーフィング

1 NHKの公共放送としての使命を十分に理解している。
2 政治的に中立である。
3 人格高潔であり、説明力にすぐれ、広く国民から信頼を得られる。
4 構想力、リーダーシップが豊かで、業務遂行力がある。
5 社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスを有する。

これを見ると、確かに籾井会長がこの要件を満たしているというと甚だ怪しいと思われる方も多いと思います。では、籾井会長が選出された際の資格要件はどうだったのでしょうか。

NHK経営委員会|委員長記者ブリーフィング

1、NHKの公共放送としての使命を十分に理解している。
2、人格高潔であり、広く国民から信頼を得られるNHK会長としてふさわしい人材である。
3、政治的に中立である
4、構想力、リーダーシップが豊かである。
5、社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスを有する。
6、業務遂行力があり、説明力がある。

※太字は筆者

実はほとんど変わっていません。政治的に中立であることの順位が一つ繰り上がり、業務遂行力が削除されたぐらいですね。(ここから、何か察することはできる?)

とういことで、籾井会長は就任時点では、今年の資格要件は(他の候補者との比較で)一応満たしていたと判定されていたわけです。

 

籾井会長だけが過半数の支持を得た

では、どのような根拠で、政治的に中立だとか、人格高潔だとか、リーダーシップがあるとか、経営センスがあると判断されたのでしょうか。

これについては当時の会長の指名部会の議事録が残っています。

NHK経営委員会|公表資料

【会長候補者氏名】
籾井勝人氏(日本ユニシス株式会社特別顧問)
【推薦理由】
○ 三井物産在籍時にオーストラリアに2年、イギリスのロンドンに4年半、アメリカのニューヨークに通算7年の海外赴任の経験があり、ニューヨークでの後半3年間は米国代表として勤務されるなど、国際経験が極めて豊かな人材である。
○ ITに関する見識も深く、日本ユニシスの社長に就任して以降、3,000億円以上の年間総売上を達成するなどの実績を持つ。
○ クラッシック音楽鑑賞を趣味とし、新日本フィルハーモニー交響楽団の理事を務めている。あわせて日本バドミントン協会の副会長を務めるなど、幅広い分野で活躍している。
○ NHKという大きな組織をきちんとまとめ、国民から信頼され、かつ社会の変化に対応できる組織作りに向けたリーダーとしての資質は十分備えている。

こんな理由で推薦されて、複数の候補のうち、指名部会で唯一籾井会長だけが過半数の支持を獲得し、その後面接を経て、会長に指名されたそうです。

籾井会長の指名の経緯については、 

NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか

NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか

 

「委員からの推薦だったので、人格上問題がないと信じていた」「書類上は判断できなかった」「面接してからNoとは言いにくい」という、『どうしてこうなった』の背景が説明されています。

ただ、就任が決定した段階で、

NHK、問われる政権との距離 会長に籾井氏 :日本経済新聞

今月13日の経営委員会に会長候補として籾井氏を推薦したのは今秋以降に選ばれた委員が中心だったとされる。籾井氏は首相に近い経済人と交流もある。

こんな報道が頻出していましたし、 推薦理由にしても、

○ ITに関する見識も深く、日本ユニシスの社長に就任して以降、3,000億円以上の年間総売上を達成するなどの実績を持つ。

日本ユニシスの業績が3000億円を達成したのは籾井会長が日本ユニシスの社長だった時代に前に達成していたことだし、(リーマンショックの影響が大きいのですが)任期の後半は売上を落とし、任期の最終年の2011年3月期は日本ユニシス史上最低の売上高を叩き出していますし、

f:id:topisyu:20161203024625p:plain

業績ハイライト - 株主・投資家情報【日本ユニシス】

○ クラッシック音楽鑑賞を趣味とし、新日本フィルハーモニー交響楽団の理事を務めている。あわせて日本バドミントン協会の副会長を務めるなど、幅広い分野で活躍している。

指名部会がNHK会長に籾井会長を決めるより前の2013年3月にはアジアバドミントン連盟会長を解任されているなど、

BAC EGM 2013 – Media Release(アーカイブページ)

かなり穴があるものでした。当時でもちょっと調べれば、資格要件を満たすか危ういことは確認できた。

その上で、籾井会長が結局NHKの会長に指名されたわけですから、こうなってしまった背景は、指名部会を構成するNHKの当時の経営委員が節穴だったか、政治的に中立でなかったか、他の候補がもっと酷かったか、どれかです。

いずれにせよ、資格要件があっても必ずしも機能しない構造があったということです。

 

締め

私は、NHKの会長が、先ほど紹介した資格要件にあるような、公共放送のことをよく分かってたり、政治的に中立であったり、人格高潔であったりする必要があるかは、何か特段強い意見を持つ立場ではありません。

ただ、今回調べてみて、たとえ色々考えて資格要件を作っても、それが機能しない構造があるのであれば、今後も、NHKに第二第三の籾井会長が登場する可能性は十分にありえるなとは思いました。