「イケてる人が推薦する本はきっとイケてる」という考えのもと本を選ぶと、ハズレが少ない。ここ最近では、世界の著名なCEO(起業家)たちが賛美する本を読み漁った。探してみると、これらの人たちがおすすめするような本は、どれも和訳書が簡単に見つかるものである。
● 参考にしたサイト:Book Collections - Bookicious
この記事では、この10冊の簡単な要約と書評を書く。
世界の起業家がおすすめする本10冊:要約と書評
1. 銀河ヒッチハイクガイド
【テスラ創業者】イーロン・マスクのおすすめ本
銀河ヒッチハイクガイドは30年以上前に出版され、世界で1,600万部売れた超有名SF小説だ。読むと、なんというか良い意味で拍子抜けした。全体のストーリーも、設定も、登場する人物の発言も、何もかもが予想の斜め上を行くのである。
他の小説にはない独特の世界観にはじめは馴染めなかったが、慣れてくると心地が良くなった。しつこいほどに詰め込まれているジョークもけっこう笑える。終始バカバカしいようで、時々、哲学的な問いなんかがしれっと混じっているのだからたまらない。これは読んでよかったと断言できる本当に素晴らしい作品である。
大まかなストーリー
- 宇宙人たちの銀河ハイウェイの建設のため、地球は取り壊される
- 地球人の生き残りである主人公アーサーは、仲間と銀河ヒッチハイクをして放浪する
- ある宇宙人が「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」をスーパーコンピューターを使って計算。導き出した答えは"42"。
- とはいえそもそも「何の問」に対する答えなのか意味不明なため、超巨大コンピュータを作ることで解決しようとする
- その超巨大コンピュータはあまりにも巨大で"惑星"とよく勘違いされる
- その超巨大コンピュータとは、実は"地球"のことである
つまり地球とそこに済む生命体は、宇宙人による壮大な実験体なのである。
バカバカしいようだが、現実と照らし合わせると、僕たちはこの可能性を否定することができない。何らかの高次の生命(orプログラム)により、文明の発展と生命の進化の実験・シミュレーションされているのかもしれないし、はたまた僕たちの生きる世界は全てコンピューターの中のシミュレーションプログラムかもしれない。(そうすると怪奇現象や超能力はそのプログラムの「バグ」なのか。…とまぁ書き出すとあまりにも長くなるのでここでやめておく)。
面白かったポイント
- 人間は自分たちを地球上の生物の中で1番賢いと思っていたが、実は1番はネズミ、2番はイルカ、3番が人間
- イルカは工事のことを知っていて地球から立ち退いていた
- 栄養飲料自動合成機:飲料ボタンを押すと、すぐに、押した人物の味蕾がくわしく調べられて、その人が受け入れられる液体を注いでくれる。
- 人間不信のうつ病ロボットや、自殺するロボットが登場する
全5巻のシリーズ作品ということなので、続編を読んだらまた感想を書こうと思う。
2. 日の名残り
【Amazon 創業者】ジェフ・ベゾスのおすすめ本
日系イギリス人作家カズオ・イシグロによる名作。こちらは2年くらい前に読んでいた。たしか村上春樹が「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」の中で称賛していたので興味を持ったのだった。「日の名残り」には、うまく作者のバイアスを利用した巧妙なトリックに引っかかり、狐につままれたような気分にさせられた。まさに、二度読みたくなる作品である。
大まかなストーリー
- 主人公である執事のスティーブンスは、新しい主人の勧めにより6日間の小旅行に出る
- 旅行の中で、スティーブンスは長年仕えてきた「ダーリントン卿」と、ともに屋敷を切り盛りしていた「ミス・ケントン」について回想していく
(ここからはネタバレ注意)ものすごくざっくりと書いたが、この作品の魅力はストーリー自体の面白さにはないと思う。
この作品が読む人の心に引っ掛かり、心を鷲掴みにされる点は「品格のある執事としての過去の自分を正当化しようとする主人公が、次第に事実を直視しざるを得なくなる」過程にあるのではないか。
ストーリーは主人公のスティーブンスの語りで進んでいく。終始、誠実さを感じさせるような丁寧な言葉遣いである。しかし、スティーブンスは、実は、信頼ができない語り手なのだ。真実から目をそらすために、記憶を操作している語り手なのだ。しかし、小旅行を通して、段々とスティーブンスは事実を正面から受け止めざるを得なくなる。この過程がいかにも人間らしく、やりきれず、心を揺さぶるのである。
面白かったセリフ
- わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。・・人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ
(見知らぬ初老の男性のセリフ)
3. ご冗談でしょう、ファインマンさん
【Google 共同創業者】セルゲイ・ブリンのおすすめ本
こちらは以前書いた記事(おすすめ本セレクション)でも紹介したことがある。
リチャード・ファインマンは、量子電磁力学の発展に貢献し、ノーベル物理学賞を受賞した有名な物理学者だ。この本を読むと、彼がいかに自分の好奇心に従い、人生を思う存分楽しんでいたのかが分かる。自分が思うままに生きた彼の周りには敵も多かったかもしれない。それでも自分の好奇心に忠実に、周囲の目を気にせずに逆境も楽しんでいく彼の生は常に輝きに満ちていたではないか。
この本には彼の生涯が、幼少期から実に事細かく描かれている。物理の細かい話はほとんど出てこない。それよりも彼がしてきたイタズラや、彼がどうやって発明というものを覚えたのかがたっぷり描かれている。もっと自分の欲望に忠実に従って生きていいんだと肩の力を抜いてくれる名著である。
面白かったポイント
- 僕たちは「できるけどやらないだけのことさ」といつも自分に言いきかせているが、これは「できない」を別の言葉で言っているだけなのだ
- 僕は決してプロの修理工とは言えない。なぜなら僕は一応物が使いものになるように修理はしても、パズルを解くのと同じで「一体全体どこが悪いのか」「どうすればこれを直すことができるか」という問題を考える"過程"の方が、よっぽど面白かったからだ
- ハンスは「なかなか面白いじゃないか。だがそれは何の役に立つんだね? 何のためにそんな計算をやったんだい?」ときいた。
「なに別に何の役にも立たないよ。面白いからやってるだけさ」
4. ニコラ・テスラ 秘密の告白
Google共同創業者 ラリー・ペイジのおすすめ本
こちらは、エジソンのライバルとして名前が挙がることもある超偉大な発明家「ニコラ・テスラ」による本の翻訳書。ラリー・ペイジや、イーロン・マスクなど、世界トップの起業家たちが大きく感銘を受けたのが、このニコラ・テスラである(テスラ・モーターズの社名の由来は、まさしくこの人物なのだ)。
この本は、ニコラ・テスラの生い立ちなど、自伝的な要素が大きいが、彼の考える未来の構想などもふんだんに書かれており、一部、哲学書(というよりスピリチュアル書)のような側面もある。
面白かったポイント
- 科学の目的はすぐに結果を出すことではない
- 自分は感覚器官の刺激によって反応する自動機械に過ぎない
- 人類の発展を妨げる「負の力」は無知・愚鈍・無能である
- 慌てて実験をしたりせず、考えが浮かんだら、ただちに頭のなかで装置を組み立てる。構造を変更したり改良したり動かしたりするのも頭の中だ。私は何にも手に触れずに、ひとつの考えを即座に発展させ、完成させることができる
- 戦争状態は何らかの科学的あるいは観念的な発展によって抑圧されることもないと私は考えている。(中略)なぜそう考えるかというと、戦争はそれ自体が科学になっているから、そして戦争には人間が持ちえるもっとも重大な感情が関わっているからだ
この本を読めばすぐに分かるが、ニコラ・テスラは明らかに超天才である。一つひとつの思考、発言が尋常ではないのだ。あまりに天才的であるためか、理解に苦しむようなオカルト的主張もところどころに登場する。しかし、超天才が言うのだからそれを1つ1つ吟味したくなる。まるで、質の高いオカルト本を読んでいるような気分になるのである。
少々残念なのは、それらの突拍子もない「主張」に至るまでの論理が十分に説明されていないことだ(翻訳の過程で削られたのかもしれないが)。なんにせよ、読めば間違いなく好奇心を刺激される不思議な魅力のある本だ。研究者には特におすすめ。
5. エンダーのゲーム
【Facebook創業者】マーク・ザッカーバーグのおすすめ本
こちらは映画化もされたSF小説の名作。2年くらい前に読んだが、いかにもSFらしい設定ながらも期待を裏切るようなストーリー展開に引き込まれたのを覚えている。主人公の少年"エンダー"が司令官として、物凄いスピードで成長していくのは、読んでいて気持ち良い。その一方で、敵であろうと生命を奪う戦争に対して抵抗を持つエンダー。その心理的葛藤が、ストーリーを引き立てている。
大まかなストーリー(ネタバレ注意)
- 未来での話。地球は、高度な文明を持つ宇宙の生命体に侵略を受け、大打撃を受ける
- 再襲に備えるため、世界中の天才児を集め、司令官を育成するバトル・スクールが開設される
- 主人公のエンダーはその才能を見込まれ、6歳にしてバトル・スクールへと招集される
- エンダーはあまりの才能ゆえ、周囲からの妬みの対称になりながらも、司令官として頭角を現していく
これ以上書くと大事な部分までネタバレしてしまいそうなのでやめておく。僕は見たことがないが、どうやら映画の方も面白いようだ。小説だと上巻だけでも読むのにけっこう時間がかかったので、面倒な方は映画でいいかも。
6. ライ麦畑でつかまえて
【Microsoft創業者】ビル・ゲイツのおすすめ本
こちらも2年くらい前に読んだ。本当に痺れさせられた名作である。
ストーリーは主人公の少年"ホールデン"の回想で進んでいく。ホールデンは「世の中の全てが気に入らない」少年だ。ありとあらゆる世間のルール、社会の建前を強く窮屈に感じてならない。口調は終始乱暴で(そしてザ・アメリカンな口調)、平気で嘘をつく。どこまでも媚びない。読者にも媚びない。先生が深淵なアドバイスをしてくれる中、あくびをしてしまったりする。それゆえにどんどんと孤独になってしまう。そしてホールデンも孤独に生きていくことを受け入れようとする。
世間を斜めに見ているように感じられるが、ときどき見え隠れする純粋さがとても美しく感じられる。また、ラストシーンは、この上なく温かい。日常の一端に、ここまで心を揺さぶられるのは不思議である。これはもう、読んでみないと分からない感覚かと思う。どの年代の方にも是非おすすめしたい本。
面白かったセリフ
- 死んでから花をほしがる奴なんているもんか。一人もいやしないよ。
- 僕が死んだときには、川かなんかに捨ててくれるくらいの良識をもった人が誰かいてくれないかなあ。心からそう願うね
- ある種のものごとって、ずっと同じままのかたちであるべきなんだよ。大きなガラスケースの中に入れて、そのまま手つかずに保っておけたらいちばんいいんだよ。
7. あなたはなぜチェックリストを使わないのか
【Twitter創業者】ジャック・ドーシーのおすすめ本
こちらはツイッターの創業者ジャック・ドーシーがおすすめする本。この記事の中で唯一のビジネス書的な本である。「チェックリストはどのように作るべきか」ということ以上に「チェックリストの重要性」について詳細に書かれている。パイロット、医師、投資家など、数多くの人たちの具体的な事例を用いて、チェックリストの効果を説明していくといった内容である。チェックリストの作り方のコツにも少し触れられているが、特段目新しい点はなかった。読み進める中で引っかかるところは特になく、そこそこの分厚さのわりに読了にはさほど時間はかからなかった。
内容は面白いものの、この記事に載せている他の本の方がおすすめかもしれない。というのも、この本を読みきあった後に残るものは(僕の場合)「チェックリストって色んなところで使われているのね」「仕事場でチェックリストを作ってみてもいいかもなぁ」という気持ちだけだったからである(もちろん、人によるだろうろうけど)。
チェックリストの作り方のポイント
- チェックリストは長すぎると読み飛ばされる。項目は5~9個くらいで1枚の紙におさめる
-
「一時停止ポイント(チェックするタイミング)」を明確に決めておくことが重要
- チェックリストの文章はシンプルに
- チェックリストに余計な装飾はいらない
8. 誰のためのデザイン?
【Yahoo! CEO】マリッサ・メイヤーのおすすめ本
こちらはデザイナーはもちろんのことノンデザイナーにもおすすめしたい名著である。以前書いた「濃密な学びが得られるおすすめの良書」でも取り上げている。
25年以上前に書かれたにも関わらず、その内容は普遍的で、UI/UX(ユーザーインターフェース / ユーザーエクスペリエンス)の本質が的確に書かれている。ものづくりに携わる人、とくにメーカーに勤める人は一度は読んでおくべき本である。個人的にこの本から学んだことをいくつか以下にまとめておく。
面白かったポイント
- ユーザがエラーを起こすのはデザインのせいである。デザイナーは、ミスが起こる確率や、起こった時の影響が最小になるようにデザインしなければならない
- 操作⇒結果に「一貫性」と「整合性」を持たせなければならない
- 必要なことを全てユーザーの頭に入れることを要求してはならない
- 物理的・論理的・文化的な「制約」を取り入れることで、行動を制限することができる(エラー行動を回避しやすくなる)
- 極度の精密さはたいてい必要ではない。ユーザーがすでに持っている知識を引き出せるだけの情報を与え、正しい選択へと誘導する
9. ブラックスワン:不確実性とリスクの本質
【PayPal創業者】ピーター・ティールのおすすめ本
この本もまた素晴らしい名著だと感じた。ブラック・スワンは、世界的にベストセラーとなった超有名な経済書である。著者は、ニコラス・タレブ。タレブは、長年金融トレーダーを務めた後に、認識論の研究者となった人物だという。個人的にはタレブの論調は研究者らしくなく、むしろ思想家らしく感じられる。強い思想がはじめにあり、それを研究データで補完しているように見えるのだ。本書でのタレブの主張は一貫しており、それはリスクや不確かさの定量化・一般化がいかに馬鹿げたことか、ということだ。
人間は「全ての物事は理解できるものであり、法則性があるのだ」と信じ込む。そのために、滅多に起こることのない不確かさを無視する。言い換えれば、処理できないため、無視して安心するしかない。「我々は浅く表面的であることが自然であり、本質を知らない」のである。
面白かったポイント
- "我々は、かつてないような世界的崩壊に直面している。(中略)金融業界のエコロジーは、巨大化し、相互に連携し、官僚的な銀行で占められ、1つの銀行が失敗したら、全てが巻き込まれる。(中略)今のところ大きな失敗はないが、もしそれが起きたら……私は恐ろしくて震えが止まらない。(中略)政府が出資する金融機関ファニー・メイの抱えるリスクを見たところ、爆弾の上に座っているようなもので、ちょっとしたしゃっくりでも危険である。しかし、心配には及ばない。ファニー・メイが抱える多数の科学者スタッフが、そんなことは起きないと考えているからである。"
⇒この本が出版された直後にリーマン・ショックが起こる- 私たちは講釈が好きだ。私たちは要約するのが好きで、単純化するのが好きだ。
- 私たちは起承転結のある話に沿って記憶を集め、無意識のうちにいやおうなしに記憶を書き換えていく。その後起こったことに照らして、論理的に意味が通ると思う筋に合わせて講釈を作り直す。
この本を読んでいると「なるほど、たしかに私たち人間はものごとを単純化してとらえているのだ」と単純化してしまいそうだ。しかし、これほど鋭い主張がずらずらと並ぶ本にはそうそう出会えないのではないかと思う。是非一読をおすすめしたい。
10. 積極的考え方の力
【トランプ・エンターテイメントリゾーツ創業者】ドナルド・トランプのおすすめ本
この記事の10冊の中で、最も読む気になれなかったのがこの本である。なぜなら、タイトルから明らかに「自己啓発本」だからである。ていうかトランプらしくないじゃないか!こんなタイトルの本を読んで「よし、明日から前向きにがんばろう」と元気出してるトランプなんて見たくないよ!…などと考えながらも、トランプが言うのであれば読まないわけにはいかない。1.5時間程度でざっと読んだ。
読んでみると、いかにも自己啓発本らしい本だった。とはいえ、キリスト教の牧師さんが著者ということもあるのか、ところどころ聖書からの引用が登場する。どこかで見たことのあるような教えが並ぶが、よく考えれば大半が正論なのである。例えば「常に最善を期待しなさい。けっして最悪を思ってはいけない。最悪はあなたの頭から捨てなさい。」なんて正論でしかない。久しぶりに自己啓発本を読み、不覚にも「たしかにこの本の主張くらい前向きに生きなければ人生損だな」と感じさせられた。トランプも経営難に陥ったとき、この本を読んで元気を出していたのかと考えると、やや可愛気が感じられるではないか。是非トランプに思いを馳せながら読んで頂きたい本である。
紹介した中で特におすすめの本は?
最後に、ここまで紹介してきた10冊を、総合評価(面白さや有益さ等もろもろの観点から)でおすすめ順にランキングにしてみる。あくまでも個人的な評価であることにご注意を。
本当に名著だらけだったので、かなり迷った。1番はやっぱり「誰のためのデザイン?」かな。これは本当に素晴らしい内容の本なのだ。とはいえ1〜8番までは、どれも自信を持っておすすめできる。参考までに。