[ニューヨーク/ヒューストン 30日 ロイター] - 米国のシェールオイル開発業者はこの数年で生産コストを大幅に引き下げた。このため石油輸出国機構(OEPC)の減産を好機ととらえて増産に動き、油価の上昇を妨げる恐れがある。
米国ではテキサス州からサウスダコタ州に至るシェール油田の生産コストが2014年以降で約半分になった。この間にサウジアラビアは価格競争を仕掛け、生産コストの高いシェールオイルを市場から駆逐しようとしたが、米シェール業界は消滅するどころか、低価格環境にも耐えうる強靭なライバルに成長した。
ノースダコタ州鉱物資源局のリン・ヘルムズ局長によると、同州ダン郡のバッケンシェールの生産コストは1バレル当たり15ドルで、なおも下がり続けている。
現在の生産コストはイランとほぼ同じで、イラクよりは若干高い水準だ。ダン郡の産油量は日量約20万バレルで、ノースダコタ州全体の約20%を占める。
ダン郡のシェールオイル生産コストはノースダコタ州で最も低いが、掘削技術の進歩などにより州全土あるいは米石油業界全体で生産性は向上した。
コンサルタント会社のリスタッド・エナジーによると、バッケンシェールの井戸元での平均採算コストは今年が1バレル=29.44ドル。2014年は59.03ドルだった。井戸元価格で見るとバッケンは米国内のシェールオイルで最も競争力があるという。
ウッド・マッケンジーは技術の進歩で損益分岐点はさらに下がるとみている。
バッケンは海に面しておらず、輸送コストの上乗せが不可欠なため、国際市場での原油価格が井戸元のコストを上回らないと採算が合わない。しかしノースダコタ州石油評議会のロン・ネス議長によると、原油価格が45ドルであればバッケンシェールの一部業者は採算が取れ、55ドルになれば増産が進む見通しだという。
OPECは、コストを圧縮する一方で掘削リグを増やしてきた米国のシェールオイル業者が減産に即座に反応するのではないかと危惧している。
RBCキャピタル・マーケッツのエネルギーストラテジスト、マイケル・トラン氏は「2年前には原油価格が50─60ドル前後なら非OPEC諸国の増産は止まると考えていた。しかし米国の原油生産は力強く回復した」と話した。
(Catherine Ngai記者、Ernest Scheyder記者)