翁長知事の動揺

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翁長知事は明らかに動揺しています。
  

翁長氏にとって誤算だったことはいくつかありますが、最大の失敗は、本土政府の動向を読み間違えたことです。  

政府を決定的に甘く見ていました。

そして山城氏たちが、かくも暴走するとは思っていなかったことです。 

この「和解」に不満を持つ山城氏たち平和センター派は、彼の統制の外で実力闘争に及んで「和解」プロセスを破壊しようとしました。 

「和解」についてはちょっと分かりにくいので、過去記事をお読みください。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-08d4.html  

Czmf6qiwyaelpebhttp://saigaijyouhou.com/blog-entry-9847.html

なにか深いところで勘違いしてたんですね、山城さんたち。  

自分は正義だからなにをしてもいい、いや正義のためには許されて当然だ、という奢りです。  

しかも政府は下手で見て見ぬふり、県警の指揮権は知事、メディアは味方、本土からは支援が多数来てくれる、ならば何をやってもいいじゃないか。

5 防衛局資料http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-36a1.html

このような甘い情勢認識と奢りは、状況判断を歪めます。  

山城派はまるで熱に冒されたように、高江地区を封鎖するわ、車の下で寝ころぶわ、警官に暴言を吐き散らして挑発するわ、本土から元暴力団員を入れるわ、果ては県道で検問までするわとやりたい放題始末でした。  

そして何より、高江住民から迷惑だから出ていってくれといわれる始末です。現地を敵にした闘争はありえません。

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司法から見れば「実力による実効支配」とみなされかねない、統治の及ばない地域を山城氏たちは作り出してしまったわけです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/20165-b8be.html

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そしてこの山城派の暴走は、いままで呉越同舟で共闘していた統一連・共産党との事実上の分裂にまで及びます。 

共産党は運動の過激化は逮捕を招くだけではなく、運動の孤立化を招くとして批判的しました。

共産党はリアリストなのです。

「ヘリパッドいらない住民の会」の伊佐真次・東村議は基地内行動の趣旨は理解しつつ「逮捕者が出て世論に受け入れられるかどうか」と懸念。「社会に認められ、一緒に頑張れる運動にしたい」と思う。
 統一連の瀬長和男事務局長は「建設を止めたい思いは一つだが、方法論で異なる。那覇の路上で抗議する人もいるし、国の強行に対抗する手段として、みんなが模索している」と言う。(沖タイ10月15日)

伊佐議員は共産党員で、統一連も共産党系団体です。  

こういう山城派の過激な実力闘争に、内心一番眉をしかめたのは翁長氏だったと思います。  

「この微妙な最高裁判決が出る時期にこんなバカやりやがって、第一オレは高江ヘリパッド反対なんか公約していねぇぞ」と怒鳴りたかったでしょう。  

裁判所というのは法律解釈だけではなく、その前後の状況を慎重に読んで勘案します。  

特に今回のような国vs県という構図の場合、県が「和解」を提唱しているのにも関わらず、「オール沖縄」の側が暴力闘争をしてしまえば、ハッキリ言って手を出したほうが負けに決まっています。  

最高裁判事がこれを見てどのような心証形成をするのか、考えるまでもありません。  

もっとも最高裁の心証を良くせねばならない時期に暴力に走った山城派によって、判決は決定的となってしまったのです。  

翁長氏からすれば舌打ちしたい気分だったでしょう。「バカヤロー、最高裁が出るまで静かにしておれ」、と。  

翁長氏からすれば、背後から斬りつけられたような気分だったことでしょう。  

元々体質が違うのは知っていたが、こういう大事な時期に左翼はこんなことをするのか、と天を仰ぎたい気分だったことでしょう。  

そこで翁長氏の口から出るのが、「高江容認」発言です。

琉球新報から噛みつかれて慌てて撤回しますが、翁長氏の動揺ぶりがよくわかります。 

これを静かに観察していた国は、従来の宥和的対応を止めることに決めたのです。 

いままで法を犯しまくっていたので当然です。

暴行傷害、器物破損、強要、道交法違反、そして刑事特別法などなど、逮捕要件は山積みしていました。 

意地悪な見方をすれば、国は山城氏が暴走し、反対派を分断し知事を孤立化させる仕事をしてくれることを待っていたのかもしれません。 

満を持したように山城氏は逮捕され、留置場で再逮捕されてしまいました。 

また過去のシュワブゲート前のブロック積みまで遡及して再逮捕されました。  

平和センター事務所や、いままで聖域のように思われていた辺野古テント2にも家宅捜索の手が延びました。 

中谷元防衛相は、今年3月にこう述べています。 

「移設作業か遅れれば作業船や資材の制約解除で損害がでる。作業が中断した場合、損害の発生が想定されている」(産経2015年3月27日)

つまり国は暗にこう言っているのです。 

「もし来年からの辺野古工事で、また今までと同じような過激な阻止行動が取られれば容赦なく検挙し、そのうえに工事が止まれば損害賠償請求するからな。」 

この情勢を見て、翁長氏も決心をしたかに見えます。 

さらに、11月から始まる振興予算交渉において、これがどんな影響を及ぼすのか翁長氏が考えないはずがありません。  

実は、翁長氏は政府とき「密使」を持っていました。それが安慶田(あげた)光男副知事です。 

Photo安慶田光男副知事htwebronza.asahi.com/politics/articles/201504...

安慶田氏は自民党時代、新風会という那覇自民党市議団のボスでした。 

そして翁長氏のクーデターに参加して飛び出しましたが、今でも自民党中枢とパイプを持ち、「密使」として東京とひんぱんに往復しているのは知られた事実です。 

その安慶田氏の指南役と目されているのが、元県会議長・自民党県連会長だった外間盛善氏です。 

201103c031_3外間盛善氏

外間氏は二階俊博幹事長の沖縄後援会顧問です。
 

先日の和やかな沖縄そばの背景に、安慶田-外間-二階ラインが動いたと見るほうが自然です

Origin_1

さてその外間氏の移設問題についての持論はこうです。

外間氏は琉球新報2014年8月25日のインタビューでこのように述べています。

「(辺野古埋め立てには反対だが)基地反対ということではない。強いて言えば、内陸部の基地内に移すということであればいいとは思っている」
http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-230580.html 

「内陸部の基地内なら容認する」、それはシュワブ・ハンセン陸上案のことです。 

ならば、翁長氏の意見も、あんがい似た所にあるのではないかと思います。 

ただしこれも、流血沙汰の暴力闘争が止み、穏やかに解決してほしいと願う私の希望的観測だとお断りしておきます。

※追記はまとめて記事にしますので、今日は削除しました。

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昨日の記事の「そこからですか」篇

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一般の方にはなじみがないテーマでしたが、昨日緊急にアップいたしました。 

昨日は、あまり説明をつけずに、専門用語を乱発しました。すいません。 

今日は「そこからですか」篇です。

日本における伝染病の蔓延は、ほとんど考えられなくなりました。 

というのは、ワクチンが発達したからです。 

ワクチンとはなにかといえば、よく誤解されるのですが、薬ではありません。 

ほら、子供の頃に学校で打たれましたね。大人になっても、インフルエンザの予防接種などを受けます。 

あれは薬ではなく、弱毒の伝染病をあえて身体の中に接種して、抗体を上げて感染病をブロックしているのです。 

昔、はしかなどが大流行していた時に、一回罹った人はもう罹らないということに気がついた医者がいたのですね。 

エドワルド・ジェンナーという18世紀から19世紀にかけて生きた人です。近代免疫学の祖と呼ばれています。
エドワード・ジェンナー - Wikipedia 

さて、彼が作り出したワクチンは、いまや防疫になくてはならないものになっています。

おっといけない。「防疫」って私たちは普通に使いますが、一般の人は聞き慣れませんでしたね。人や家畜を伝染病の流行から守るという意味です。 

畜産の場合、いったん感染してしまった家畜のことを、患者の家畜という意味で、あまり好きな言葉ではありませんが「患畜」といいます。 

マーカー・ワクチンに至っては、もっと分からなかったかもしれません。 

よく誤解されますが、ワクチンは薬ではありません。消費者でも「薬剤やワクチンなんかとんでもない」というラジカルな方がたまにいますが、逆です。 

薬を使わないためにワクチンを接種しているのです。 

それはさておき、ワクチンを打つと「軽い病気」に罹ってしまいます。 

たまにインフルエンザ・ワクチンを打つと、気分が悪くてなる人がいるのもそのためです。 

それはコントロールされた伝染病になるからです。 

でも、大丈夫。それは統御された極めて軽い病気で、本当に身体にダメージを与えるような強毒ではありません。 

もうひとつ困ったことがあります。 

それはあらかじめ予防的にワクチンを打つと、外界からの自然感染した「ホンモノの伝染病」と区別がつかなくなるかも知れないことです。 

ホンモノか人工的に接種したワクチン由来なのか、わからないと原因がわからなくなります。

家畜の場合、防疫対策が立たなくなります。 

つまり伝染病と戦う方法に迷いがでるのです。 

たとえば口蹄疫対策では、ウイルス汚染のないことを確かめるために抗体検出によるサーベイランスが行われています。 

サーベイランスとは「調査・看視」のことです。防疫は横文字と難解な用語が多くてすいません。 

で、そのサーベイランスをするときに、ワクチンを接種した動物の体内にできる抗体と、外からのホンモノの感染で産生される抗体の区別ができなくなってしまいます。 

そのため、OIE(国際獣疫事務局)という国際機関はこう定めています。
国際獣疫事務局 - Wikipedia 

OIEには世界の主要国はほとんど加盟しており、ここの国際規約は絶対的なルールといっていいでしょう。 

OIEは、サーベイランスの時に、ワクチン接種だろうとホンモノの感染だろうと一括して感染動物として扱うという規約を作ってきました。 

ですから、予防的ワクチンを使っても陽性ならアウト。 

使うにしても感染が発見された後に、ワクチンを接種してウイルスの広がりを抑えたのち、そのワクチン接種済み動物も殺さなければならなかったのです。 

この手法に忠実だったのは、2010年宮崎県口蹄疫の時に取った政府の対処方法でした。
2010年日本における口蹄疫の流行 - Wikipedia 

ワクチンは大量に使用されましたが、それはあくまでも感染拡大を遅らせて、殺処分までの時間稼ぎのためでした。 

「殺処分」というおどろおどろした用語がでましたね。文字どおり家畜を殺して、感染拡大を食い止めることです。一種の破壊消防です。 

私は大嫌いな言葉で、聞いただけで虫酸が走ります。

これは数十万の家畜動物を無益に殺害することで地域経済に大打撃を与え、復活するまで数年かかってしまいます。

その間、多くの農家が経営的につなげずに多額の借金をして破産してしまいました。

また、処分に関わる家保職員、さらには自衛隊などの大きな負担になってきました。

しかし、やむをえない側面もあることは認めます。 

それは伝染病が出た時は、時間が勝負だからです。もたもたしていると、人や家畜の移動、時には風や野生動物に乗って感染が飛び火するからです。 

民主党政権時に、口蹄疫がでたわけですが、当時の赤松農水大臣は無能を絵で書いたような人物で、その危険性をまったく理解していませんでした。 

また当事者の宮崎県は、パーフォマンス命の東国原氏というタレント知事だったために、私はこれは九州全域を巻き込むと観念したほどです。 

赤松氏に代わったのが、かつて牛を飼育していた経験もある山田正彦氏になって、やっとまともな防疫体制が敷かれました。 

山田氏は極めて優秀な現場指揮官でした。 

しかし、既に1カ月近い時間が経過してあちらこちらに飛び火していたのです。 

殺処分するにしても、待機している患畜だけで膨大な数に登り、手もつけられません。 

ここでやむなく取られたのが、殺処分をしながら、ワクチンを打って感染を遅滞させることでした。 

実はこの時農水省から提供されワクチンは、マーカーワクチンでした。 

マーカーワクチンとは、ワクチン接種と感染を区別するために、ワクチンになんらかの目印を付けたものです。 

口蹄疫ワクチンの場合、ウイルスの遺伝子が作るタンパク質のうち、ウイルス粒子には含まれない非構成タンパク質(NSP non-structural protein)を利用してマーキングするものです。 

昨日私がコメントで、「NSPワクチン」と書いたのが、このマーカーワクチンです。 

これがしっかりと、「これはオレのワクチンだぞ」と印をつけてくれれば、そうかホンモノの感染じゃなんだな、とわかります。 

これが開発されたのは1990年代でしたが、本格的に実用化が始まったのは英国の2001年の口蹄疫大流行がきっかけでした。

OIEは2002年の総会でNSP抗体陰性が確認されれば、6ヶ月で清浄国に戻れるという条件を承認しました。

そしてマーカーワクチンはいまや、英国、ノルウェー、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは主流になりつつあります。

マーカーワクチンは口蹄疫だけではなく、他の伝染病のものも研究され、実用化されています。

ところが、わが日本では動物衛生研究所(動衛研)という、わが国の防疫の最高研究機関がなぜか首を縦に振ってくれません。

その理由はもはや私にはよくわからない神学論争のようです。

トリインフルは、野鳥によっては伝播されます。時には野生のネズミすら媒介します。

それらから完全にニワトリをブロックすることは、事実上不可能に等しいことです。

牛や豚は糞尿や人による伝播であるに対して、空飛ぶ野鳥はブロックできないのです。

ならば、マーカーワクチンを打つした残った選択肢はないはずだと思いますが、雲上人たちはダメだそうです。

かくして、不勉強なメディアはいまでも、「殺処分に自衛隊出動」と叫び、その理由は「人に伝染するからです」と馬鹿なことを垂れ流し続け、全国の畜産農家は夜も寝られない日々が続くというわけです。

最後に、もう一点だけ付け加えておきましょう。

世界では伝染病を「兵器」として見なしている国があります。

特に人獣共通感染症であるトリインフルは、いったんテロ兵器として転用することはそれほど技術的に困難ではありません。
人獣共通感染症 - Wikipedia

安価で開発でき、相手国に持ち込むことも人間が靴にでもつけて入ればいいのですから簡単です。

これによって相手国は、経済的に大きな被害を出すだけではなく、社会的麻痺に陥ります。

しかもそれがテロであることすらわからないでしょう。

完璧なテロ兵器です。

そのような意志とリソースを持つ国が、東アジアには存在していることをお忘れなきように。

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トリインフル発生 ワクチンを解禁せよ

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トリインフルエンザが発生し、殺処分されました。

「青森県と新潟県の養鶏場などで鳥インフルエンザの疑いがある食用アヒル(フランス鴨〈かも〉)やニワトリが見つかった問題で、新潟県は29日、遺伝子検査の結果、高病原性と判断したと発表した。両県とも検出されたウイルスは「H5亜型」で、感染拡大を防ぐため、鳥インフルが確認された場所で飼育されていた鳥の殺処分を開始。政府は関係閣僚会議を開き、対策の徹底を確認した。
 殺処分の対象は、青森市の農場の食用アヒル約1万6500羽と新潟県関川村のニワトリ約31万羽。青森県では29日午前7時半現在、約3分の1にあたる6150羽の殺処分が完了。高病原性と確認してから24時間後の同日午後9時45分までにすべての処分を終わらせたい考えだ。
 このほか、農林水産省や両県によると、青森市の農場から半径3キロの範囲にある4戸の計約1万4千羽の移動が禁じられ、10キロの範囲にある3戸計約40万羽は出荷や運び出しが禁じられた。
同様に、関川村の養鶏場の周囲では約60戸約50万羽の移動や運び出しが禁じられた。」(朝日新聞デジタル 2016年11月29日)

新潟でも確認されていますから、今回は通常の朝鮮半島ルートの山口・鳥取ではなく、バイカル・ルートのようです。

Rikai_illust01_02http://www.wbsj.org/activity/conservation/infectio...

シベリア・ルートによる感染拡大は初めのケースで、おそらく渡り鳥の南下にしたがって、関東にまで来る可能性があります。 

今までは防疫体制が杜撰で、ウイルスが自然界に常住している朝鮮半島から、渡り鳥によって日本に感染拡大するのが常でした。

こういう時に必ずしたり顔で、こんな解説するコメンテイターがいます。 

いわく、「トリインフルは人畜共通感染症だから危ない」。
 関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-aad9.html

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(図 国立感染症研究所発表
※確定症例総数は死亡例数も含む。WHOは検査により確定された確定例だけを報告する。)

日本ではまずヒト感染はありえません。

ありえるとすれば、中国と韓国、そして一部の東南アジアに限定されます。

日本とは防疫レベルに、天と地ほどの差があります。 

私たち日本人の眼からみれば、中国には「防疫」の二文字はなきに等しいといえるような暗黒大陸です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-2079.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-2079-1.html

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国立感染症研究所

口蹄疫が大発生しても中国は、病死した豚を河に流し、それを集める業者が、平気で市場に卸すというていたらくですから、なんともかとも。

上図を見ると、トリインフル・ウイルスの震源地が中国だと分かると思います。
 
ここを感染ハブにして、ウイルスを世界にばらまいています。

そして何年に一度は、恒例のSARSやトリインフル大会を開いて、ヒトにまで感染させます。

ヒトの命など鴻毛より軽い国ですから、多少死んでも隠蔽されてしまいます。

大発生しても、西側メディアにバレない限り情報統制してしまいます。

こんな国でありながら、WHOの委員長に中国人を押し込むという政治的エグサだけは世界一なのですから、まったく・・・。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/3-31ed.htmll

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(写真 ニューズウィーク10月28日 パンギムン氏とマーガレット・チャン氏の底冷えするようなツーショットチャン氏とバンギムン両氏のエボラにおける無能ぶりは光っていた。)

中国のヒト感染トリインフルについては徹底的に検証したので、過去記事を検索してみてください。

韓国も同様に地下ルートで患畜を流通させているために、一度発生すると半島全域にウイルスをバラ播き、近隣国にもうつしてしまいます。

したがって、今回は別にして、従来は、必ず常時発生国の中国と韓国から感染が渡ってきました。

ああ、日本列島にスクりューつけて、オーストラリアあたりに逃げたい(笑)。

それはさておき次に、よく通説として「殺処分しか感染拡大を阻止する方法がない」といいますが、まったく違います。

あります。ワクチン接種をすればいいだけです。 

伝染病は、要は出さなければいいのす。 

仮に感染していても、劇症の症状を出さなければいいのです。

劇症、つまり高病原性(HPAI)でさえなければ、そんなに怖くはない、違いますか?

だって多くの人は、ヒト感染するから鳥インフルの高病原性株を恐れているわけですよね。

実際の話、東南アジアや中国のヒト感染は劇症のカモ類と直接タッチしてしまうことで感染しています。いわゆる濃厚接触です。 

感染したニワトリを抱っこするとうつる場合があります。

特にカモやガン類は10の6乗という濃厚なウイルスを排出していますから危ないわけです。 

それに対してニワトリは10の4乗ていどと低く、しかもワクチン接種した場合、更にウイルス排出量はケタが落ちます。

しかもそれは高病原性ではなく、低病原性(LPAI)です。 

同じ鳥インフル・ウイルスといってもまったく違います。

H5N2型などのいわば「人間が飼い馴らしたウイルス」です。このどこが危ないのでしょうか? 

ヒトにとって劇症が出る高病原性株と、飼い馴らされた低病原性株のどちらが与しやすいのでしょう。考えてみるまでもありません。 

かつて2005年の茨城トリインフル事件の時に、感染したトリを処理していた作業員の人たちに抗体検査でプラスが出たことがありました。

茨城事件はH5N2型グアテマラ株という典型的なワクチン由来の感染拡大でした。 

で、トリや、ましてヒトに症状が出たのかといえばないわけです。

あくまで抗体検査をしたらプラスだったという「だけ」の話です。 

感染したとされる作業員も鼻水ひとつ垂れるわけではなくピンピンしていましたし、第一感染をうつしたとされる「患畜」のニワトリも産卵量低下すらみられなかったという話は現場で処分にあたった獣医師から直接に聞いています。 

私たちからすれば、これでいいじゃないの、と思います。

トリには抗体検査がプラスというと聞こえが悪いですが、言い換えれば「抗体が上がっただけ」じゃないですか。

「ヒト感染」といえばビビりますが、これも抗体が上がった「だけ」です。 

免疫をつけたの、そう、よかったね、はいこれで一件落着、めでたし、めでたしだったはずです。

ただし、日本でワクチンが合法ならばの話ですが。 

ワクチンがないと防げない伝染病なのに、ワクチンが非合法だという矛盾があるのです。

いったん高病原性株に罹れば全滅か、殺処分で全羽殺処分。いずれにしても全滅です。 

低病原性株を使ったワクチンは、通常のワクチン費用なみの一羽につき20円ていどの低コストで済み、しかも確実に免疫を上げます。 

ワクチネーションによって低病原性株に農場を支配させてしまえば、高病原性ウイルスは侵入が出来ず、仮に侵入したとしても弱毒株に変異してしまいます。

いったん弱毒株になってしまえば、ヒト感染を仮に起こしたとしてもまったく安全です。 

今必要なことは、ヒト感染する可能性がある高病原性の感染拡大を阻止することです。

そのためには、仮にヒト感染しても安全無害な低病原性ワクチンを接種することしか方法はありません。 

早急に鳥インフルワクチンを解禁し、中国、韓国、ロシアから絶え間なく襲ってくるトリインフルエンザから自らを守らねばなりません。

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米国議会 米中経済安保調査委員会報告書を読む

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古森氏が紹介した米国議会の資料が、HN「山口」さんのご尽力で見つかりましたのでアップしておきます。

これをもってしても尚、「有機ギルダー」氏の以下のような言い分が成り立つものかどうか、ご自身で確認してください。

「『検証可能性がある情報』と言えばほとんどの情報はそこに分類されるでしょうし、公的機関の文章を名乗った偽情報なら腐るほどあります。
問題なのは未検証の情報を事実であるかのように紹介するのは大いに問題(略)、外国発の情報を意図的に大げさに訳したり歪めたものが多々ありました。」

では、私を「東日本大震災時に放射能デマばら蒔いてた連中と同じだ」とまで罵ったこの人物が言うように、「公的機関を名乗った偽情報」で、「意図的に大げさに訳して歪めたりしたもの」かどうか、見てみましょう。

原文と仮訳です。

読みやすくするために、直訳ではないことをお断りしておきます。太字は引用者です。

原文出典

http://origin.www.uscc.gov/sites/default/files/Research/USCC%20Staff%20Report%20on%20China%20Countering%20US%20Military%20Presence%20in%20Asia.pdf

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「March 15, 2016 
“ China’s Efforts to Counter U.S. Forward Presence in the Asia Pacific “
Author: Kristien Bergerson, Senior Policy Analyst, Security and Foreign Affairs

 ■U.S.-China Economic and Security Review Commission    8 
Okinawa: As with Guam, Beijing is likewise concerned about the U.S. force projection capability on Okinawa.

沖縄:中国は、グアムと同様に沖縄における米国の戦力投射能力について懸念している。

However, China’s attempts to shape Japanese behavior through economic coercion have not been very successful.
James Reilly, a senior lecturer in the Department of Government and International Relations at the University of Sydney, notes that in response to Chinese “consumer boycotts and economic pressure, Japan has refused to backdown over the enkaku/Diaoyu islands ... [and] strengthened its cooperation with other Asian neighbors, signed a fisheries accord with Taiwan, and secured statements of support from the United States.

 しかしながら、経済的圧力によって日本の動きを押さえつけようとする中国の試みはあまり成功していない。
ジェームズ・ライリー(シドニー大学政府国際関係学部・上級講師)は、「中国の貿易ボイコットや経済的圧力に対応して、日本は尖閣諸島・釣魚島だけではなく、他のアジア諸国との協力を強化し、台湾と漁業協定を締結し、米国の外交的声明を支持した」と述べた。

Japanese press reporting indicates Chinese investors have acquired property near U.S. DOD facilities on Okinawa.
China likely maintains a presence of intelligence officers and agitators to both collect intelligence against the U.S.military presence on the island and complicate aspects of the U.S.-Japan alliance by participating in anti-base activities.
 

日本の報道によると、中国の投資家は沖縄の米国防総省の施設の付近で不動産を取得している。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。
そのために中国の諜報工作者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。
その結果、(中国は)沖縄住民の反米感情を煽り、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。

Fumio Ota, a retired Japan Maritime Self-Defense Force vice admiral and a former director of the Japan Defense Intelligence Headquarters, notes “China has  supported Okinawa’s independence activities, which were developed by pro-Chinese Okinawans and probably Chinese  agents as well.”
Dr. Ota goes on to say that the Chinese press in September 2012 “reported the result of  2006 referendum of Ryukyu citizens 75 percent of them supported independence from Japan and reinstating free trade with China ... [when there] was in fact no referendum by Ryukyu citizens, and the vast majority of Okinawans want to be a part of Japan.
”Aggressive Chinese activities intended to challenge Japan’s administration of the Senkaku Islands and statementsby Chinese academics and military officials questioning the status of Okinawa as part of Japan probably will increase concerns about China’s long-term intentions in the region.
China will likely continue both espionage and agitation activities on Okinawa aimed at monitoring U.S. and apanese force posture and seeking to complicate the U.S.-Japan alliance by attempting to facilitate resentment about the continuing U.S. military presence.

自衛隊の情報本部長(※)だった太田文雄夫(※)氏は、中国は、沖縄の独立運動を支援している。沖縄の独立運動は、中国の沖縄人や中国によって生み出された、と述べている
太田文雄 - Wikipedia
情報本部 - Wikipedia

また、大田氏は、2012年9月の中国のメディア報道は、「2006年における琉球市民の国民投票の結果75%が日本からの独立を支持している」と書いたが、実際には
沖縄県民によるそのような住民投票はなかった。
大半の沖縄人は日本の一部であると考えている。
中国は日本の尖閣諸島の行政権への挑戦を意図している。
日本の尖閣諸島の行政権に挑戦することに熱心な中国の活動や、日本の一部としての沖縄の地位に疑問を抱く中国の学者や軍の声明は、地域の中国の長期的な意向への懸念を高めていくことだろう。

中国は、米軍や軍人の動向を監視し、米軍の動向に対する怒りを増幅させることで日米同盟を分断するために、沖縄における諜報活動と扇動活動の両方を継続する可能性が高い。」
 

なお同報告書には、中国が、慰安婦問題や歴史認識、あるいは竹島領有問題などで、韓国の立場を支援することによって分断しようとする企みについても記述されています。

さて、上記の議会報告書についての、古森氏の論考の要約です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47344

すべて、米国議会報告書に記述に照応しており、恣意的乖離は見られません。

なお、上記の仮訳にない部分は、他の部分の報告書記述に存在します。 箇条書き番号は引用者です。

「①中国軍幹部たちは、米国が中国を封じ込めるために広域に戦力を展開していると見ている。つまり、北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築いている。そしてグアム島をその中核とし、中国の深部まで長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、と見ている。

②中国軍はその中でも、特に沖縄駐留の米軍が有する“遠隔地への兵力投入能力”に懸念を抱き、多角的な方法でその弱体化を図っている。例えばその1つの方法として、中国の政府機関が沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入し、沖縄の反米闘争の支援に利用している。

中国はこうした目的のために経済的圧力を頻繁に行使する。フィリピンに対してはフルーツ類の輸入を大幅に制限し、かなりの効果を得た。日本に対してはレアアース(希土類)の輸出を規制したが、効果をあげられず、他の方法を試みている。

中国は沖縄に、米軍の軍事情報を集める中国軍の諜報工作員と、日本の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日本と米国を離反させようとしている。また、中国は沖縄の親中勢力をあおって沖縄の独立運動も支援している。

沖縄にいる中国の諜報工作員たちは、米軍基地を常にひそかに監視して、米軍の軍事活動を詳細にモニターしている。また、米軍と自衛隊の協力体制も調べている。さらに中国の政治工作員は、沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動しようとしている。

中国の官営報道機関は、「琉球で2006年に行われた住民投票で、住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た」と報道した。だが、実際にはそのような住民投票は実施されておらず、沖縄住民のほとんどが日本に留まることを欲している。」

なお、中国の対沖縄工作については、参議院議員・青山繁晴氏の発言がありますので、資料としてリンクを貼っておきます。
http://japan-plus.net/724/ 

私としてはこの青山情報についてかねてから聞いていましたが、裏を取りようもない話ですので記事にはしておりません。 

議会報告書と重ね合わせて改めて読むと、ありえるとは思いますが、今回はそれにとどめておきます。

何度か繰り返していますが、外国の諜報機関の動きは一般人には分かりません。

たとえば資金提供ひとつにしても、様々なトンネル・ルートを通じてロンダリングされながら供給されます。

戦前の日本共産党は、立花隆の『日本共産党研究』によれば、コミンテルンから上海ルートで武器と資金提供を受けていました。

それが途絶えた時、彼らは銀行強盗を「軍事作戦」として展開するようになり自滅します。

そしてそれが明らかになったのは、それから数十年たってのことなのです。

現在の沖縄でいかなる中国の工作があるのか、それはどのような規模で、どのようになされているのか、やがて分かる日が来るでしょう。

メディアはこのような微妙な問題には絶対に触れません。

独自取材が不可能に近く、公安(外事)情報に頼るしかないからです。

そして公安は体質的に情報を抱え込みます。

たまさか漏れてくるのは、公安が刑事警察を使って取り締まらねばならないほど緊急なことが起きた場合だけです。

そもそもスパイ防止法が日本にはないために、スパイを摘発しても外為法違反とか、旅券法違反などといった微罪で逮捕できるだけです。

そして多くはそれを察知すると、直ちに国外に出てしまいます。

ですから、ひとり工作員を捕らえるより泳がせて、そのネットワークを探ることのほうを、公安は選んでいるわけです。

それまで公安はひたすら情報を蓄積し、外国諜報機関を泳がせ続けます。

メディアは報じない、警察も公表しない、政党も動かないという一種のエアポケットのような存在が外国のインテリジェンス機関の動きなのです。

ですから、このような真実の断片をジグゾーパズルのように組み立てていくしかないわけです。

じっれったいでしょうが、しかたがありません。

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HN「有機ギルダー」自分は英文は読めないが、お前が読まないのはデマッターだ(笑)

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HN「有機ギルダー」という者から、以下のコメントがきました。

「古森氏の正論に載せた記事が誰からも注目されないのはかつて誤報で産経新聞を謝罪に追い込んだ過去があり、今回の記事も肝心の資料の原文を載せないという胡散臭さ満点だからです。
記事の裏付けよりも内容が自分にとって「如何にもっともらしいか」を優先するなら、東日本大震災時に放射能デマばら蒔いてた連中と変わりませんよ。」

次にこんなものも入れています。

「私は管理人さんの態度について「東日本大震災時に放射能デマばら蒔いてた連中」と同じだと指摘した」

これは私が武田邦彦、岩上安身、早川由紀夫、上杉隆など同列の人格だと言うに等しいものです。

直接に言われたのなら、その場でコップの水をこの男にかけてやったことでしょう。許しがたい侮辱です。

私のブログは傷だらけです。

そしてこの傷は、紛れもなく、彼らデマッターとの戦いを斬り結ぶ中で生まれたものです。

ところがこの男は、私が放射能デマッターだとこの男は言うのです。

2013年以降このブログとおつきあいいただいている方は、私が放射能パニックの連中からなんと言われてきたのかご存じのはずです。

「お前が農業をやめることが最大の復興支援だ」
「ここに毒を撒くテロリストがいますよ」
「東日本はもう住めない」

これに対して私はおそらく100本以上の反撃記事を書いています。

当時私のブログは、自分でいうのもおかしいですが、東日本で有数の反「放射脳」拠点サイトでした。そのために何度となく炎上を繰り返しました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-6638.html

この男がもし福島事故において、デマッターたちの攻撃に耐えて、土壌放射線量を計るために走った経験があるなら、こんなことを平気で書けないはずです。

市場から返品されてくる農産物の山を見たことがある者なら、到底書けません。

作った作物を、穴に投棄する身を切られるような苦痛を知っているなら、こんなことを他人に言えるはずがありません。

潰れかけた農場の借金をどうしたらよいのかわからず、天を仰いだことがない者だけが書けることです。

放射能の恐怖と、それと戦ったことがない者が、したり顔で当事者の私に説教がましい口をきかないで欲しい。

こんな下劣な男に対して、まともに反論する気がなくなりました。

といってもこのての輩は勝利宣言でも上げかねないので、数点書いておきます。

                       ~~~~

私は記事の冒頭にこう書いておきました。

「記事中で古森氏が紹介した米国議会の調査報告書は、元資料に当たれませんので、そういうものとしてご理解ください。
内容的にみて、妥当だと思えますので紹介いたします。今回はメモ程度とお考えください。」

私は明確にこの時点では、「元資料に当たれない」と記しています。

つまりあくまでも「紹介」であって、一次情報の開示ではないと断っているのです。

私はあくまでも古森氏の論説を「紹介」したに止まっており、その論者も明示しています。

これが「検証不可能な情報の無責任な拡散」、さらには「東日本のデマッターと一緒」などといわれる筋合いは断じてありません。

次に、今回、古森氏の「ブラック・ジャーナリスト」問題です。 

この事件について、ウィキから長文ですが引用します。 

「2006年(平成18年)8月、外務省管轄下にある財団法人日本国際問題研究所のホームページにJIIAコメンタリーとして掲載された玉本偉論文について、古森が問題と考える点(日本政府から資金を得て運営されているJIIAが時の日本政府の政策方針を批判したこと等)を産経新聞紙面にて公開質問状の形で指摘した。結果、研究所は、理事長名で当該論文の問題点、編集体制の杜撰さを認め、「厳しく反省」し「編集体制を一新する」と表明し、JIIAコメンタリーの刊行を中止し、バックナンバーの公開も中止した。
一方で、
ワシントン・ポストに、この古森の行為が「ジャーナリストとしてあるまじきもの」とする執筆者論文が掲載された。
産経新聞は、2006年(平成18年)9月18日付産経抄において、かつての「教科書誤報事件」を思い起こさせるものであると評し、古森がワシントンポストに送った反論をポスト紙が未だ掲載しないことに「言論の自由」との関連で疑問を呈した。古森の反論は、産経新聞による再度の催促ののち、2006年11月11日付のワシントン・ポストに掲載された。
新聞紙面の議論と並行して、ネット上では
NBR JAPAN FORUM古森のブログおよびクレモンスのブログであるThe Washington Noteにて論争が継続されていたが、ワシントンポストが古森反論を掲載したのと前後して収束している。」

これがなにかといえば左翼論者たちが引き合いに出す、「古森誤報事件」です。

古森氏は外務省管轄の外郭団体のHPが、日本政府の外交方針を批判したことを産経紙上で問題視し、それをWPが批判したわけです。

メディア同士の批判-反論などよくあることで、ただそれだけのことです。

この経過を読んでどこが問題で、どこで「産経が謝罪に追い込まれた」のか教えていただきたいと思います。

また、今回の米議会報告書について、この「有機ギルダー」氏は「自分で英語力が貧弱で読めなかった」と妙に正直なことを書いています(苦笑)。

わ、はは。この男は1次資料と読み比べて、ここが古森氏の改竄箇所だと言っているのではないのです。

あくまでも古森氏が嫌いだから、嘘つきだ、それを紹介した私も嘘つきだ、と書き散らしているだけです。

他人には「元資料に当たったのか」と絡んできたくせに、自分は都合よくスルーというわけで、まったく度しがたい愚か者です。

ダブスタ以前の問題です。

ならば、そもそもこんなえらそうなことをコメントするんじゃないよ、と言いたくもなります。

なんのことはない、HN「有機ギルダー」の言っている論理構造はこういうことです。

自分は英語力がなくて元資料を読めない⇒古森氏というブラックジャーナリストが言うんだからデタラメに違いない⇒それを紹介した私もデマッターだ

このていどの貧相な三段論法で、私は福島事故のデマッターと同列にされたのです。

メディアが取り上げないことがデタラメだということの証明のように書いていますが、その理由は簡単です。

NHK、朝日以下の本土メディアは、沖縄の反戦「市民」たち贔屓だからですよ。

まるで腫れ物に触るように、慎重にこの話題は避けています。

それに、なにぶんインテリジェンス機関がからまることなど記事には微妙すぎて書きにくい類のものだからです。

地下で繰り広げられているスパイ工作などは、一般ジャーナリストには裏取りが不可能なため書けるとしても、週刊誌のようにより柔らかな媒体です。

ですから、もしメディアにインテリジェンス機関の工作が書かれることがあるなら、それは警察が摘発した後か、意図的リークがあってのことです。

それもよほど大事件ではない限り、一般紙には載らずに、週刊誌かネットに出てきます。

そんな常識的なことも分からないで、やれ産経がどうしたの、幸福の科学がどーたらと、私を批判しているのがこの人物です。

したがって、古森氏の論説も、議会資料をそのまま訳出し、それに肉付けしただけに止まっています。

私もそれをそのまま紹介したに止まります。

たかだかそんなていどの話にすぎないのに、なにをトチ狂ったのか、こういう暴言を吐くとは。

呆れてものが言えません。批判に来るのは結構です。

しかし、まともな論理構築をして、礼儀をわきまえて来なさい。

私だって生身の人間なのです。

今日の写真のような穏やかな心の平和が欲しいです。

※怒りのあまり感情的になったので、改題して、修正しました。

 

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沖縄そばを仲良く食べているおふたり

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今日はなごやかな話題です。

秋も深まる中、自民党本部の沖縄物産展で、ふたり仲良く沖縄そばをすすっているのは翁長氏と二階幹事長です。

「自民党は6日、党本部で「沖縄物産展」を開き、二階俊博幹事長や翁長雄志沖縄県知事が出席した。沖縄振興の一環として2005年以降、ほぼ毎年実施している同物産展に現職知事が参加するのは初めて。
 二階氏はあいさつで「沖縄が発展することなら何でもやる」と強調。翁長氏は物産展の開催について「大変感激している」と述べた。」(共同2016年10月6日 下の写真も)

この二人のオールド自民党的体臭がすてき。きっと妙に馬が合うでしょう。

少なくとも理論家肌の石破さんよりも、はるかに親和性がありそうです。

Origin_1http://this.kiji.is/156594350544322562

毎年やっているそうですが、こういう時期にあえて党本部に翁長さんをお招きするというのが、いかにも二階さんらしい憎さです。

おそらく翁長氏はいまや迫りくる来月と予想される最高裁判決に向けて、千々に乱れる知事心といったところでしょう。

もはや「名誉ある撤退」をいかに遂行するのか、二階さんのような古狸と相談したくてたまらなかったでありましょう。

Img_0005_2

ここまで状況が煮詰まってしまったら、救命浮輪は政府からも県からも投げられません。

政府は建前どおり辺野古埋め立てを壊れたレコード(←古い)のごとく繰り返すしかないでしょうし、一方翁長氏にとってもガチガチの共産党を説得することは不可能です。

したがって中間的和解案は両者から出てきません。

だとすれば、「オール沖縄」にも片足を突っ込んでいて、なおかつ政権与党である公明党あたりから、「ねぇ、こんな案があるんだけど」と持ち出すことです。

私のお勧めはズバリ、シュワブないしはハンセン陸上案です。

安い・早い・(面子が)立つの三拍子です。

この案は既存基地内の増設ですから、新基地とは言わせませんし、何といっても美しい海を埋めないで済みますから環境破壊とは言わせません。

もちろん提案に当たっては、自民党と事前に話をつけておく必要がありますから、そういう表に出せない政治工作は二階さんの十八番です。

具体的な話は、年中東京に出向いて、政府とゴソゴソと話をしている副知事あたりにさせておけばいいのです。

時あたかも、恒例の来年度予算折衝時期。

あつらえたような手仕舞いの季節です。最高裁判決が出たらもう引くに引けませんよ。

「名誉ある撤退」もなにも、全面敗北です。

翁長さん、悪いことは言わないからこのタイミングを逃しなさんな。

ああ、名護の丸隆そばのソーキが食べたくなったぁ。

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日曜雑感その2 米国議会調査委員会による中国の対沖縄工作についてのメモ

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再度アップします。これは今日午前中にアップしたものの加筆版です。

記事中で古森氏が紹介した米国議会の調査報告書は、元資料に当たれませんので、そういうものとしてご理解ください。

内容的にみて、妥当だと思えますので紹介いたします。今回はメモ程度とお考えください。

というのは、中国のインテリジェンス(諜報機関)の動きは、一般人には把握することが困難です。

たまさか、中国人による基地周辺の不動産買い漁りのように、メディア報道の表面に浮かびあがったものは、実は大きな氷山の一角にすぎません。

今回は米国議会調査委員会の資料に、その記述があったことを古森氏からの孫引きとしてご紹介するにとどめます。

またこの記事を初回にアップした際に、HN「田浜雪夫」という人物が執拗に絡んできて、さんざん荒らしていきました。

内容は古森氏が信用ならないとするものですが、一定の傾向を持つ人たちからみれば古森氏はそう見えるのでしょう。

論者を色分けし、自分と違う立場ならウソデタラメとする態度は、程度の低い政治的人間につきものの悪癖です。

この人たちにかかると、世の中は悪者と善人の二種類しかいないようです。

その論者がいかなる傾向を持とうと、要はその言説の内容です。

妥当なら議論構築の糧として採用するし、脳内妄想のような内容なら採用しないということです。

それは右に対しても左に対しても、私の一貫した姿勢です。

たとえば、私は井上達夫氏とは政治的に反対の立場にいますが、氏を深く尊敬しています。

人を信じる、その「論」を信じるということは、結局そういうことなのです。

                    ~~~~

沖縄がその地政学的条件から、中国の工作対象の筆頭になっていることは、客観的にみても間違いないところですが、その実態は闇の中です。

この間、在沖中国人居留数の伸びは、米国人をはるかに凌ぎ外国人数で2位です。

彼らの中にインテリジェンス機関の人間がいないと思うほうが、かえって不自然でしょう。

公安調査庁や、警察の公安、内調などはとっくに動いているでしょう。

ただし、公安調査庁には逮捕権限がなく、公安に通知するだけですし、内調は弱体の上にここにも逮捕権限は与えられていません。

ここは一番、沖縄県警の公安に期待するしかないのですが、まぁ、ご承知のように県警自体の長年の体質が、左翼勢力との対立を徹底回避するという宥和路線ですから・・・。

なにぶんワールドスタンダードのスパイ防止法すらないという、憲法前文そのままの国家ですからね、わが国は。

いや、まともな情報機関さえない国でした。

さて、中国の非軍事的な外国への介入には、「関与」、「威圧」、「同盟分断」があります。

「関与」とは、ASEAN諸国やパキスタンなどとの合同軍事演習や、韓国にたいする圧力などです。

「威圧」とは、尖閣水域への絶えざる侵犯や軍艦の領海侵入です。
あるいは、尖閣で衝突が起きるとレアアースの輸出を止めたりすることです。

「同盟分断」について、米国議会の報告書「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」はこう述べています。(2016年 米中経済安保調査委員会)

以下、古森義久氏の論考によりました。引用します。
http://japan-indepth.jp/?p=29534

「沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している――こんなショッキングな警告がアメリカ議会の政策諮問の有力機関から発せられた。
中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだという。

アメリカ側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきた。
だが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しい。
アメリカ側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということだろう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないであろう。」

「沖縄あるいは日本全体を拠点とするアメリカの軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰か。いまや東アジア、西太平洋の全域でアメリカの軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白である。

中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることはすでに歴然としているが、これまで沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずなかった。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのだ。」

古森氏によれば、この対沖縄の工作を、米国は「スパイ活動(Espionage)」、あるいは「扇動(Agitation)」と名指ししているそうです。

以下、議会調査委報告書の記述です。

「中国は沖縄米軍の弱体化の一端として特定の機関や投資家を使い、沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入している」

「中国は沖縄に米軍の軍事情報を集めるための中国軍の諜報工作員と日本側の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日米両国の離反を企図している」

「沖縄での中国の諜報工作員たちは米軍基地を常時ひそかに監視して、米軍の軍事活動の詳細をモニターするほか、米軍の自衛隊との連携の実態をも調べている」

「中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。そのために中国側関係者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。その結果、沖縄住民の反米感情をあおり、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している」

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日曜雑感 HN「鉄槌」氏に答えて

052
HN「鉄槌」氏からこのようなコメントを頂戴しました。
この人は前にも入れてきたことがあります。

「チューゴクの珊瑚泥棒すらまともに追っ払えない国がすでに骨抜きになった9条を改憲した所で何ができるのやら。
むしろ現政権の改憲における本丸は人権条項じゃねーの。
かつてこの国を亡国の淵に追いやったのが何であったのか改めて考えてみるのも必要かと。
何時の世も徒に外の脅威を煽る輩にご用心!」

困りましたね。人権条項とは憲法第13条などのことですか。どこかにそれを改正する運動でもありますか。

政府が人権条項を廃止したいなどと言っていますか?自民党案にそんなことが書かれていますか?

ないことをさもあるように言って、煽るのはよくないですね。

ないことを「ある」というのは、あることを「ない」と同じくらいに馬鹿な行為ですよ。

なぜならそういう姿勢は、真実を公平に見て、突き放して事実を観察することを阻みますから。

こういう傾向を世の中では、無意識なら「妄想」、知っててやるのだったら「アジテーション」と呼びます。

やめましょうね。無意味に疲れるから。

あいにくですが、9条は骨抜きにはなっていません。

ご安心ください、9条はしっかり矛盾しつつ機能しています。

もうこれについては今週さんざんやったので、井上達夫氏の指摘を読んで下さい。

Photo
次に「中国のサンゴ泥棒も追い払えなかったくせに」ですか。

泥棒というより、強盗団ですが、まぁいいか。

海保はSST(特殊警備隊)をヘリで空中機動させて降下させ、指導的な中国漁船を確保しています。

また多くの巡視艇が当該海域に向かい、可能な限り規制し情報収集に当たっています。

あれだけの規模の漁船団を、実力で追い払える国は世界にありません。

中国としては、もちろん対日圧力をかけつつ、日本の対応を見たかったのでしょうね。

まずは、中国のその筋の者が、「サンゴのお宝が眠っているぞ」と煽り、欲に目が眩んだ漁民に漁船団を組織させ、その中に海上民兵や情報機関の者たちを紛れ込ませて、小笠原水域に向かわせたのです。

それとも漁船相手に海自をだせとでも?

そんなことをしたら、それこそ緊張が高まりますよ。

日本の対応はベストではないにせよ、よくやったと評価しています。

おそらく中国は、日本が簡単に挑発に乗らない紳士的な国だと分かったはずです。

中国なら海軍が蹴散らしています。「紳士的」とは弱腰のふぬけととることでしょう。

またこれだけの大規模漁船団を繰り出していけば、海保は対応が難しくなるのも分かったでしょう。

きみがなにをいいたいのかわかりません。

「鉄槌」氏は、一方で9条は骨抜きになったと叫ぶかと思えば、一方でサンゴ泥棒をどうするんだとも言うわけで、一体なにを言いたいんでしょうね。

密漁船に対して厳重に対処ができるような強面国家になってほしいのか、9条を骨抜きにして人権条項を潰そうとするような「ファシスト」国家がまずいのか、一体どっちなんでしょう。

よく頭を整理してくださいね。

ところで、「外の脅威を煽る輩に注意」ですか。

ひょっとして、この私に言っているの?ご冗談を。

脅威は厳然としてあるものはあるのだから、冷静に対処せよと言っているだけです。

私は自衛隊は出すな、海保で対応せよと繰り返し述べてきています。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-961f.html

ところで、「かつてこの国を亡国の淵に追いやったのが何であったのか改めて考えてみるのも必要」があると言っています。

そのとおりです。

しかし、そういうきみは先の大戦がなぜ起きたのか、なぜ敗北したのかについて、まじめに学びましたか?

あれはきみが言いたいような、一握りの「外敵の脅威を煽る輩」、つまりは戦争挑発者がいて起きたわけではありませんよ。

むしろそんな単純だったらいいのにと思うくらいです。

日本にはひとりのヒトラーもいませんでした。

大戦の序曲となった泥沼の日中戦争のきっかけは、第2次上海事変でした。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-616c.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-2338.html

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国際法(※)による侵略の定義を押さえておきます。
※根拠 国連総会決議3314(1974年12月14日)

①宣戦布告なき先制攻撃
②計画された準備期間

③他国領土、ないしは、それに準じる地域への軍事攻撃

当時租界は外国の「領土」と国際的に認められていましたから、これを襲撃する行為は侵略に当たります。

70万の長期間訓練されたドイツ装備の軍を上海に集中し、上海租界を強襲したのは中国でした。

すなわち、日中戦争を仕掛けたのは中国側です。

この時点に限定していえば、日本は被侵略国です。

ただし、中国軍を撃退したのち、南京まで兵をすすめてエスカレーションをした外交判断の誤りは日本側にもあります。

さらにその後、幾度かあった中国との和解を蹴飛ばして、直接の大戦突入の責任者となった近衛は、身辺に尾崎のような大量のソ連のスパイを侍らせた凡庸な政治家にすぎませんでした。

この馬鹿がいなければ、あるいは日本は大戦に突入することを避けられたかもしれません。

近衛を引き継いだ東條に至っては、回避不可能なところで政権を引き受けてしまった不運な軍事官僚でした。

日本が戦争へ傾斜していくことをよく、「軍部の暴走」なんて言っていますが、そんなに単純なものだったら、いいのにと思うくらいです。

そもそも戦後によく言われた、「軍部」なんてものはありませんから。

「軍部」の内実は、陸軍と海軍は犬猿の仲であり、さらに陸海軍内部でも親独派と親英米派に別れ、そのうえ陸軍内部でも対中拡大派と統制派に分裂し、統一された「軍の意志」などどこにもなかったのです。

こんな状況の上に立つ、天皇陛下がいかに苦慮されたのか分かります。

いうまでもなく、陛下は一貫した戦争回避派でした。

陛下が親政を敷かれたのならば(帝国憲法上ありえませんが)、絶対に戦争突入はありえませんでした。

こんなていたらくだから、大陸に100万の兵を貼り付けたまま、北はアッツ島から南はガダルカナル、そして西はインパールまで戦線をむやみと拡大してしまったのです。

これで勝てたら奇跡です。

こんなスラップステイックな軍中枢と政府の意思決定を、現場力で支えたというのが戦中の日本です。

201112280816367b1

福島第1事故の時の状況と瓜二です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-b103.html

半狂乱の菅首相とその取り巻き、それを掣肘できない保安院の専門家たち。

そして腰抜けの東電中枢。

それに足をからめとられつつ、最後まで死を賭して戦った現場を預かる吉田昌郎所長以下64名の所員たち。

涙が出ます。

私が心から「英雄」と呼べるのは、吉田昌郎所長と、そして彼と共に戦った戦士たちだけです。

それはさておき、この「鉄槌」氏の言うことを聞いていると、右にも左の人にもありがちですが、極端なことを平気で言うことです。

極端なことを言うことは、逆にものすごく易しいことです。

「鉄槌」氏のように、「政府は人権条項をつぶしたいんだ」とか、「一部の中国脅威論者が煽っているから戦争になるんだ」(こうは言っていないがそういうことになります)というのは、相当にバイアスがかかっています。

逆に、「すべて特亜が悪いんだ」「こいつも工作員だ」「工作員を日本から追放せよ」みたいな、一部の右の人の言説も極端にすぎます。

こんなことを言うのも、世界情勢が混沌としていて、どちらに進めばいいのかわからなくなっているからです。

だから単純化したがるのです。

極端なことを言えば、あたかもものごとが単純にスッキリ見えた気がしますからね。

しかし現実はあいにく、そんなにシンプルじゃないですよ。

鉄槌さん。他人に鉄槌を浴びせる前に、その手を降ろして、いろいろな本を読み、他人の意見にも耳を傾けることです。

※お断り 日曜雑感の1は削除しました。

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日曜写真館 紅の奔流

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井上達夫『憲法の涙』の自己分裂

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井上達夫氏の『憲法の涙』を読んでいます。

ご承知のように、井上氏の9条削除論がまとめられた本です。 

一種の覚醒の書であると同時に、分裂の書でもあります。 

井上さんはこの9条削除論を提唱する動機を、こう書いています。

少し長いですが引用します。

「自衛隊という戦力をわれわれは既に海外に出しています。伊勢崎賢治さん流に言うなら、9条下で既に『戦争』をしています。が、これを縛るなんの戦力統制規範も憲法の中にありません。日米安保に対する憲法の縛りもありません。
なぜなら、9条によって、日本には戦力がない事になっているからです。憲法上ないはずの戦力を統制する規範を憲法が規定できるはずがない。
つまり、9条があるために自衛隊という軍事組織と、日米安保という軍事同盟が、憲法害の存在として肥大化しているのです。(略)
そしていまや安倍政権の改釈改憲によって、その憲法外の存在、自衛隊と安保をどんどんと肥大化しようとしている。これが私がいちばん危惧していることです。」

ひとことで要約すれば、井上さんは自衛隊は化外の地で、時の為政者のためにどんどんと「肥大化」しているからをこれをしっかり「縛りたい」のです。

憲法という中に正式に「軍隊」として位置づける代わりに、統制規範を作って自衛隊と安保をこれ以上「肥大化」させるなと言っているわけです。

そして具体的にはこのようにしろと書いています。

「戦力に歯止めをかけるためにも、つまり平和主義のためにも、9条を削除せねばならない。
9条削除まで踏み切れないなら、少なくとも専守防衛明記改憲をして、専守防衛の枠を越えて戦力が濫用されないための統制規範を憲法に盛り込まなければならない。」

初めは読み違ったのかと眼をこすりました。そうではなかったのです。

読み間違いする余地なく「専守防衛明記憲法」の必要性を訴えた後に、井上さんはこんなことも続けて書いています。

前文の平和主義にふれた部分です。

「私の原理的立場から言えば、安全保障の基本政策は憲法に入れるべきではない、ということなので、前文が特定の安全保障政策をもりこんでいるんだったら、それを変えるか、削るかしなければならない」

二つの文章をつなげてみます。

憲法には特定の安全保障政策を盛り込むべきではないが、専守防衛を明記すべきである

何を言っているのか理解できません。明らかな矛盾です。わずか2頁のうちで、まったく別のことを井上さんは書いてしまって、平然としています。

気がつかないのです。

<専守防衛>という概念が、「軍隊であって軍隊でない何者か」である自衛隊が生み出した、苦し紛れの防衛ドクトリン、すなわち井上さんが自分で憲法に盛り込むなと言っている「安全保障の基本政策」だということに。

そしてこのドクトリンを作ったものこそ、まさに井上さんが鋭くその矛盾をえぐった9条そのものなのです。

<専守防衛>とは平たく言えば、「自分の国だけ守って引きこもっていたい。それも攻めてきたら守備する程度にしたい」という考え方です。

そもそも世界には、「専守防衛」に相当する外国語がありません。

「個別的自衛権」という、去年盛んに登場した用語に当たる外国語もありません。

存在するのは唯一、「自衛権」 right to defenseだけです。

防衛に集団的も個別的もなく、「専守」がないように「侵略」だけの軍隊もないのです。

「自衛隊」という表現は日本語ではなんとなくフツーに聞こえますが、欧米諸国で the Self‐Defense Forcesとは、「自分を守るための軍隊」という奇妙な意味となります。

余談ですが、かつて幹部自衛官が、外国で他国の将校たちと歓談していた際に、Self‐Defense Forcesと自己紹介すると、嘲笑を込めた爆笑に迎えられたそうです。

Self‐Defense Forcesとは直訳すれば、「自分だけを守って国民を守らない軍隊」という意味になってしまうからです。

この自衛官は憤然として、帰国後退官したそうです。

私はこういう退嬰的、かつ思考停止的な思考を、<9条ワールド>と皮肉をこめて呼んでいます。

井上さんはどうやら、<9条ワールド>を守りたいために9条削除論を唱えているわけです。

氏が誠実なことは大いに認めますが、分裂しきっています。

井上さんはいかにも憲法学者らしく、安全保障領域の現実をほとんど理解していないようです。

現代における戦争は、戦後憲法が生まれた終戦直後から劇的に変化しています。

去年安保法制の審議で、野党はしきりと「どこまでが戦闘地域か」とか「どこまでが後方支援か」と執拗に問いただそうとしていました。

私はそれを聞きながら失笑した記憶があります。

この制限・限定論の論理自体が、古色蒼然たるもので、世界の現実を知らない空論です。

では、できるだけかみ砕いてご説明しましょう。

まず現代においての<戦争>は、冷戦期の大国間の正面戦はほぼありえないと考えられています。

なぜかといえば、核戦争の恐怖によって、大国間の全面戦争をすれば己も滅亡することがわかっているからです。

この核兵器による「恐怖のバランス」のことを、「相互確証破壊」(MAD)と呼びます。
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そして全面戦争の代わりに登場したのが、冷戦崩壊とともに起きた各国の独裁政権の崩壊後の状況でした。

独裁政権は、たとえばイラクのフセインなどが典型ですが、国内的には恐怖政治を敷きながら、一方では宗教対立や民族紛争を押さえ込んできた側面があったわけです。

それを米国が打倒してしまったわけですから、まるで地獄の釜の蓋を開けたように宗教紛争と民族紛争が吹き出しました。

イラクに侵攻した、世界最強を誇る米軍はイラク正規軍をたちまち片づけましたが、その後に彼らを待っていたのは延々と続く、対テロ戦争でした。

軍服を着ない民間人を装ったテロリストが、身体に爆弾を巻き付けて米軍のパトロール部隊に飛び込んでくるわけです。

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(写真 イラクにおける路肩爆弾。手製信管を砲弾に取り付けて、携帯で信号を送る。市街地をパトロール中の米軍はこれに苦しめられた。Wikipedia)

大砲の弾丸に手製の起爆剤をつけた路肩爆弾が、米軍車両をようしゃなく襲いました。

イラク戦争における4千人もの米兵の戦死者の大部分は、イラク正規軍との戦闘によるものではなく、テロリストによって市街地の路上に仕掛けられた手製爆弾と自爆テロによるものでした。

そして脳天気にも、米国が支援した「アラブの春」は、統治の外にある崩壊国家を大量に作り出してしまいました。

そしてその混沌の中から、史上最凶のテロ集団であるISが生まれます。

彼らはウイルスのように各国で増殖し、パリ同時テロのように今までテロの対象とされていた軍隊や国家機関ではなく、市民が憩うカフェや劇場といった無防備な場所を血の海に変えました。

このような新しい形の戦争の特徴は、前線と後方の区別がなくなり、戦闘員と非戦闘員の区別もなくなってしまったことです。

つまりハーグ陸戦条約が通用しない世界が誕生したのです。

思い止まりましたが、米国は苛立ち、ジュネーブ協定からの離脱を言い出したことすらあります。

ですから、去年の安保法制の時に論じられた「どこまでが戦闘地域か」などという、地域限定論が存立する基盤それ自体がそもそも消え失せているのです。

前線も後方もなく、したがって危険地帯と安全地帯の区別すらもない世界、それが現代における<戦争>なのです。

そしてテロリストだけではなく、大国すら扉を開けて正面から襲ってくるのではなく、秘かに気がつけば浸透されていた、という浸透戦略を公然と取るようになります。

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(写真 ウクライナ領内におけるロシア軍。国籍マークを取り、顔を隠している。いうまでもなく、ハーグ陸戦条約違反)

また、ロシアのクリミア侵攻や、東ウクライナでの戦法は、国籍マークを外した軍隊の浸透でした。

ロシアはウクライナ紛争において、この浸透戦術とロシア系住民による住民投票を絡み合わせています。

ちなみに、私は中国の沖縄に対する攻勢は、この浸透と住民投票という戦法を使うと思っています。

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(写真 中国漁船団。漁民の中に大量の特殊部隊員や海上民兵を紛れ込ませるのが常道。いうまでもなくハーグ陸戦条約違反だが、この中露が拒否権つき常任理事国であるために、国連は機能マヒになってしまった)

さてその中国ですが、かの国が南シナ海をいつの間にか埋め立てて、軍事基地化してしまったのはご承知の通りです。

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(写真 軍事基地化されたファイアリー・クロス礁)

中国については大量に書いていますから、そちらをご覧ください。
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そして今やもっとも熾烈な戦闘空間は、米中間の電子上のサイバー戦争てす。

サイバー戦争に至っては、前線も後方もあったもんじゃありません。

これらすべての現象が、20世紀末から21世紀に入って立て続けに起きました。

つまり、日本を囲む国際軍事環境は急激に変化し、それに対応して「軍事における革命」(RMA)といわれる新たな対処が生まれました。
軍事における革命 - Wikipedia

「軍事における革命」は単に技術的なものに止まらず、テロや紛争などの脅威に対して国際社会が軍隊を出し合って、ひとつの大きな集団を作り対抗しようとする所まで進んでいます。

井上さんはいまだに、「対米従属の肥大化」という古くさい左翼用語を使っていますが、現代の<戦争>はそんなに分かりやすいものではありません。

具体的には、現代の戦争は各国の軍隊を、ひとつの指揮・情報・命令系統に束ねて、ネットワークでつなぎ、ひとつのユニット単位で行動します。

日本国内で考えられているように、ここまでが多国籍軍、ここからが後方支援の自衛隊という線引き自体が、前世紀の遺物なのです。

おそらく井上氏は、これら現代の<戦争>の動向をまったく学んでいないはずです。

学んでいればのんきに、「集団的自衛権は国連のみに認める」といったレトロなことを言えるはずがありません。

そのPKO自体も第2世代PKOとして、かつてのPKF的な任務に変化してきています。

現代は大きな流れが、渦を巻いて急激に変化する時期にあたっています。

このような時期に1952年の現実である、専守防衛明記憲法など、新たに作ってどうするのですか。

日本国憲法を改憲するなら、新たな「縛り」を作る井上流9条削除論ではなく、この国際情勢の変化にいかようにも対応できる柔軟なものでなくてはなりません。

経済と安全保障は生ものです。

憲法にこまかく書着込むもんじゃないのです。

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