バルチック艦隊破り日本は一等国、南樺太を日本領とした「ポーツマス条約」
THE PAGE / 2016年12月2日 12時0分
ポーツマス条約を日本はどう受け止めたのでしょう。国民は、財政的にも軍事力でも、これ以上戦争を長引かせることができない状態であったことを知らされていなかったため、南樺太では納得しませんでした。条約締結日の9月5日、数年分の国家予算に該当する約20億円かかった軍事費を充当する戦争賠償金が得られなかったことに不満を持ち、戦争継続を求める集会を開きます。そして集会後、暴徒化した人々が内相官邸・新聞社・警察署、アメリカ公使館などに次々火をつける「日比谷焼き討ち事件」が起こりました。
海外では、賠償金を求めずにポーツマス条約を締結した「日本は平和国家」と高い評価で報道されました。大国ロシアに勝ったことで、日本は「一等国」と認知され、列強国の仲間入りをします。外国にあった日本の在外公館や、駐日外国公館は公使館から大使館へ昇格しました。
ロシアの矛先は再びバルカンに変更 第一次世界大戦へとつながる
他方ロシアは、不凍港を目指し、極東から再びバルカンへ、南下政策の矛先を変更。この動きが後に、第一次世界大戦へとつながっていきます。また、仲介役を務めたルーズベルト大統領は、ポーツマス条約の和平交渉に貢献したことから、ノーベル平和賞を受賞します。そして米国は思惑通り、その後、極東地域への関与や発言権を強めていきました。
ポーツマス講和会議は、国際社会における“アメリカの世紀”のきっかけになったとも言われています。しかし、日本国民が、講和会議の結果に対して不満を持ち、日比谷焼き討ち事件などの暴動や反対運動を起こしたことは、ルーズベルト大統領や米国内の対日感情を急激に悪化させていきました。
日ロ間で初めて法的に国境線を決めた日魯通好条約以後、日本の北方で、最も大きな領土まで広がったポーツマス条約は、日ロ2国だけではなく、米国や他の諸外国など、その後の世界情勢にも影響を及ぼすものになりました。
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