毎日4000本を制作する「コンテンツ大量生産企業」とは

検索エンジンでテーマを決め、フリーランスたちに安価にコンテンツを大量制作させる企業が興隆している。今回米Yahoo!社が買収した米Associated Content社もそのひとつだ。


Ryan Singel


1887年の印刷工場。画像はWikimedia。Wired誌の記事はDemand Mediaについて、「メディア業界においてフォード自動車の大量生産システムを導入した」と評している

米Yahoo!社は5月18日(米国時間)、米Associated Content社を買収し、「ウェブ向けにコンテンツを大量制作する業界」のレースに参入した。買収額は公表されていないが、約9000万ドルとされている

Associated Content社は、検索アルゴリズムを利用して制作するテーマを決め、大量のフリーランサーを動員して、一般受けするハウツーやプロフィール、なにかのトップリストなどを、ウェブ公開向けに書いたり動画にしたりするサービスを提供している。同種のサービスとしては、ほかに米Demand Media社や、米AOL社のSeedプロジェクトがある。

Associated Content社はサイトに有名な広告主を呼び込むことに成功しており、特にハウツー記事には広告主が多い。たとえば、適切なサイズのハンマーを選ぶ記事などは、米Coldwell Banker Real Estate社や米Fidelity Investments社の広告に囲まれている。

米comScore社によると、Associated Contentには月間1600万を超えるユニークユーザー数があり、またこの買収を発表するプレスリリースによると、同社の編集スタッフは「記事、画像、音声、ビデオをひっくるめて月に5万件を超えるコンテンツを審査している」という。

Associated Content社は自社を、Demand Media社よりはグレードが上の会社だと考えている。Demand Media社は、検索ログを使って、ユーザーが探しているが得られなかった隠れたトピックを見つけだし、安いコンテンツを大量制作していることで注目を集めている

[リンクされているのはWired誌の記事で、毎日4000本の動画や記事を公開するDemand Mediaについて紹介している。YouTubeではハウツーもの動画セクション『Expert village』など
17万本を公開し、最大のコンテンツ供給者となっている同社では、テーマはアルゴリズムを使って検索結果から自動的に分析し、平均して1記事執筆あたり15ドル、1動画制作あたり20ドルという低価格で発注、大量生産を行なっている。編集作業も分割して発注されており、同社に編集者がいたときよりも20〜25倍の利益が可能になったという]

今回の買収発表でYahoo!社は、Associated Content社のサービスを世界的に展開するつもりであり、秋には買収が完了すると述べている。

Yahoo!社のCarol Bartz最高経営責任者(CEO)は、「われわれの世界クラスの編集チームと、Associated Content社のチームが1つになれば、これまでの流れを変える存在になりえる」と話している。

Yahoo!社はこれまで、自分たちは、よりハイエンドなメディアの提供者だと考えてきた。自社スタッフが書いたニュースや特集を、有料のニュースフィードと組み合わせ、そこに「キュレートされた」(日本語版記事)他サイト・コンテンツへのリンクを追加してきたのだ。

Associated Content社の記事が、Yahoo!サイトに展開されるのか、それとも、これまで通りに独自サイトが運営され、検索を通じて偶然コンテンツに到達した訪問者からページビューと売り上げを得るのかについてかは明確になっていない。ただしYahoo!社は、気をつけないと、そのブランド価値を低下させ、広告主にプレミアムレートの課金を行なえない大量の広告スペースを生み出してしまう危険性もあるだろう。

[日本語版:ガリレオ-緒方 亮/合原弘子]

WIRED NEWS 原文(English)