アブダビで初の王者に輝いてから1週間にも満たないが、ニコ・ロズベルグがF1を引退すると発表した。
2日(金)はウイーンでFIAの表彰式が行われており、ロズベルグはそこでチャンピオンシップトロフィーを授与されることになっている。チャンピオンになるという幼少時代からの夢をかなえた今、F1というプレッシャーを離れてもっと家族と多くの時間を過ごしたいのだと彼は述べており、"あれをもう一度やり遂げることは無理だ"と語った。
2014年、2015年とチームメイトであるルイス・ハミルトンとの直接対決に敗れたロズベルグはようやくハミルトンを倒し、タイトルを手にしたばかりだった。今後F1に戻ることは考えていないと決意を口にしている。
「さて、今日は夕方にトロフィーを受け取るすごく特別な日。でも、それには他の理由もあるんだ」と彼は述べた。「この機会を借りて、僕は今、ここでF1キャリアを終えると決断をしたことを発表したい。説明すると、僕は6歳でレースを始めた時からとても鮮明な夢を持っていたんだ。それはF1ワールドチャンピオンになることだった。成長していく中で記憶がある限りではずっとそれを自覚していた。こうしてそれを達成し、25年間のレースで自分の全てをささげた気がする」
「周囲のすべての人々、僕のファン、僕の家族、僕の友人たちのおかげで今年それを達成した。この素晴らしい経験は永遠に忘れない。同時にそれはとてつもなくタフな日々だった。ルイスに負けた過去2年間は僕にとってすごくつらい時間だった。それをモチベーションに、僕は自分でもどうやったのか分からない方法で反撃し、自分の夢をようやくかなえたんだ。今年も信じられないほどタフだったけど、全身全霊を注ぎ、敗北に苦しんだ去年のオースティン以降、何一つとしてやり残さないよう努力した」
「全てにおいてクレイジーなほどプッシュしたよ。それに関わるすべての人々、僕の家族・・・が払ったたくさんの犠牲に感謝したい。特に家を守ってくれた妻には感謝している。僕が家にいる時、彼女は休息が必要なことを理解してくれていたから、僕は一度も夜更かしする必要がなかったし、娘の世話も全て彼女がやってくれていた。夜更かしもせず、面倒なことは全部任せきりだったのに、彼女は常に僕を支え、全てを可能にしてくれたんだ」
「それは僕らがささげた献身の一例に過ぎない。子ども時代の夢を達成した今、同じようなことをもう1年やろうとは思わないんだ。でも僕は4位になんて興味はないし、ファイターだから戦えば勝ちたいと思う。もうおなじことを繰り返すのは嫌なんだ。自分の心に尋ねると、ここで止まって終わりにしよう、他のことをしようと言う。その心に従うことにしたんだ。ワンダフルな時間だったよ。今僕はこれで良かったと感じている。すごく、すごく楽しみなんだ。妻のビビアンは夫が帰ってきたことを喜んでくれている。僕は父に戻るんだ。それはきっと素晴らしい日々になる。だからこれまでずっと支え続けてくれたみんな、ありがとう。僕はこの瞬間を大事にかみしめている。多くのことを経験してみんなと成功を共有している。本当に驚異的な日々だった」
クリスチャン・トト・ウォルフは次のように述べた。
「これはニコによる勇敢な決断であり、彼の意志の強さの証明だ。彼は子どもの頃の夢を達成し、ワールドチャンピオンとしてキャリアの頂点で去ることを選んだ。決意の強さは見て取れたので、私は言われてすぐにそれを受け入れた」
「1人の人間の全体像を短い言葉で表すのは不可能だよ。だが、ニコは天性の才能とファイティングスピリットの絶妙なコンビネーションを持っており、それが彼をここまで導いてきた。父親がワールドチャンピオンなのだから、さぞかし恵まれたキャリアを歩いてきたのだろうと人々は考えるだろう。だが私が思うに、それはむしろ彼のチャレンジを一層大きくしていたのではないかと思う――両肩に期待の重さを感じながら、彼は人並み以上に必死で戦わねばならなかったのではないだろうか」
「メルセデスでのニコは妥協を許さないコンペティターで、タフな時でも周りを巻き込みながら立ち上がってみせた。その粘り強さ、ファイティングスピリット、プレッシャーの下での品位によってスポーツ全体の尊敬を集めた。2010年から彼がチームにコンペティティブなエネルギーを注いでくれたおかげでわれわれは強く成長した。シンプルに"ありがとう"と伝えたい。彼は2人の偉大なドライバー、マイケル(シューマッハ)とルイスの隣でわれわれの成功のために途方もない貢献をしてくれた」
「チームにとってこれは予想外のシチュエーションだが、同時にエキサイティングでもある。テクニカルレギュレーションが一新される新時代の始まりに、メルセデスのコックピットに空きができた。必要な時間をかけてオプションを検討し、将来に向けた正しい道を見つけたい」