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冬コミおつかれさまでした!
2014-01-03 (金)
オフライン活動 | 二次創作
お久しぶりの更新です。
冬コミでスペースにお越しくださった皆様、ありがとうございます!
ご芳名をお伺いしていないので、どなた様と申し上げることは出来ませんが……
見本誌ぱらぱらとご覧頂いたあと、お求め頂いたお嬢様。ありがとうございます。
企画その他で交流ある方は、少しお話させて頂いたのでどなたがどなたか把握しているつもりですが、
万一ご挨拶しそびれていたら申し訳ないです;
人生初のコミケ参加がサークル側ということで、ドキドキして舞い上がっちゃってたので(汗
何か失礼あった方いらっしゃいましたら申し訳御座いません。
(今のところ、拍手などでの匿名のご指摘とか頂いている訳では無いので、おそらく大丈夫だと思いますが)
夏のすごさは未知数なのですが、一般入場開始とともに会場を横切るお兄さんたちの列がすごかったです。
企業スペースに行かれる皆様だったのでしょうか。
西館ということもあって、わりと穏やかな雰囲気でした。
密かに、通勤ラッシュ時の地下鉄の混み具合を想像してた私は、
「あ、10月のインテと同じ位のまったり加減かも?」と思っていました(笑
おかげさまで夏コミ合わせで制作した本は完売しましたので、Pixivのサンプルは撤去してきました。
次回のイベント参加は1月12日の冬インテです。
印刷屋さんへの発注書を間違ってしまったので、冬コミには最新刊は持っていけませんでしたがインテには持って行きます。
あと、私の描くのが間に合えば、別ジャンルでコピー本持っていくかも。
あらためまして、冬コミ参加された皆様、おつかれさまでした!
黄泉路の記憶 ※2013年10月発行の同人誌に再録してあります。
「――っ、忍ちゃん!」
背後に殺気を感じて振り返ると、忍の背後に迫る紅蓮の鬼が見えた。
慌てて声をかけるが、遅い。
不意を突かれて陣形を乱され――何時もなら俺の後ろにいるはずで、普段ならばほぼ、見ることの無い――忍の後姿が見える。
「クソ、忍から離れろ!」
いくら討伐に慣れてきたといっても。
忍が次々斬撃を浴びる様など、見たいものか。
「透ちゃん――」
寒いよ……そう言うと忍は、俺の生母――忍にとっては祖母に当たるが――の形見だという、風の守護を受けた薙刀にすがるように、ふらつく足元を支えた。
紅蓮の鬼――燃え髪大将の指先に、幾つもの火球が点るのが見えた。
(あれは、花連火の術! ――くそ、弓さえあれば――!)
拳や刀の間合いは短く、踏込まなければ相手に一太刀浴びせることは出来ない。
考えるより先に体が動く。
肉の焦げる不快な臭いが鼻を突いた。
(――良かった)
忍に術が当たることは何とか防げた。
鬼が腕を振り上げるのと同時に、俺も父の形見の剣を構えて踏込む。
鬼の爪が脇腹を抉るのが判った。
(熱い――)
イツ花が願いを込めたという白ハチマキは、血を吸ってべったりと背中に張り付いていた。
どくどくと流れる血が、足元で泥と混じってどす黒い水溜りを作る。
すれ違いざま、燃え髪大将が倒れこむのが見えた。
忍に駆け寄りたいが――体が重かった。
何とか足を引きずるようにして、忍の側まで行き――声をかけると、寝起きのようにボンヤリと焦点の合わない様子で、目を薄く開いた。
「忍ちゃん、しっかりせえ! 絶対、家に連れて帰ってやるさかい」
「……透、ちゃん――?」
その場しのぎの傷の処置しか、出来なくても……せめて、血を止めて薬をつける位は。
「大丈夫やから」
「透ちゃんも、寒いん……?」
寒い寒いと、言っていたのは忍の方なのに、何故。
傷の手当てをしようと伸ばした俺の手を、そっと包む込むように忍が握る。
「……手、震えてる」
「寒いんか、何なんか。もう、俺にも判らん」
寒くないのかと問う忍の手の方が、冷たくて――俺の背筋にじわりと厭な感覚が走る。
(――何や、今の)
俺は思わず、忍の体を抱きしめていた。
「死なんとってくれ――忍ちゃん」
返事は無い。ただ、浅い呼吸があるだけだ。一刻も早く、屋敷に帰らなければ。
その晩、俺は酷く厭な夢を見た。
――はらはらと、舞い散る白い風花。
(ああ――これは。この雪は。大江山……)
紅く染まる白い大地と、外套の下に着込んだ白装束。
美しかった、長い水浅葱の髪も血糊でべったりと斑に染まっている。
――おとうさん……わたし……もう、ダメみたい。
……ごめんね……。
浅く早い呼吸の中で、掠れて告げる幼い声。
腕の中で、どんどん冷たくなっていく、小さな体。
俺に出来ることはといえば、冷たくなっていく娘の体を、ただ抱きしめることだけだった。
いくら癒しの術をかけても、止まらず流れ出る血。
「お願いだ、俺より先に死なないでくれ――」
滲む視界。
「……さま。透さま!」
荒っぽく体を揺さぶられて、俺はゆっくりと目を開ける。
「イツ花ちゃん……そない乱暴にされたら、僕ホンマあの世にいってまうやろ」
「ああ、良かった。いつもの透様ですね」
あちこち痛いような気がするが、布団の中で昼子そっくりの顔に見下ろされるのは何となく癪に障る。俺は無理矢理体を起こすが、イツ花に止める気配は無い。
「ひどく、魘されておいででした」
だからイツ花なりに気を遣って、起こしたということなのだろうが……俺でなければ本当に、そのまま永眠しかねない。もう少し穏やかな起こし方というものがあるだろう。
「忍ちゃんは?」
「お薬が効いているのでしょう。もうじきお目覚めかと思いますが……」
少し言いにくそうに、イツ花は一旦言葉を切る。
「透様、起きて大丈夫なのでしたら……お湯をお持ちしましょうか」
怪我の所為なのか、夢見が悪かった所為なのか、布団がじわりと湿気る程に汗をかいていた。
しかし、いい加減見慣れても良さそうなものだが、イツ花もやはり素顔の俺を見ると落ち着かなさそうにしている。
天界にしょっちゅう出入りしていれば、真紅の瞳など珍しいものでもないだろうに。
「ああ、盥と一緒に眼鏡も持ってきてくれへん?」
「え――はい。あれれ、でも……透様は眼鏡が無くてもお差し支えないはずでは?」
「落ち着かんねん」
イツ花が用意してくれた盥を使い、適当に体を拭く――が、やはり腕は折れていたのだろう。
固定して少しきつめに包帯を巻いてあるので、そのままにしておく。
寝間着から着替えて、忍の部屋に向かおうとしたらイツ花が折れた片腕を吊ってくれた。
薬が効いているのか、忍は穏やかな顔で眠っていた。
顔に巻かれた包帯が痛々しい。
いくら、傷跡が残らないとは言っても――忍は、年頃の娘だ。
「……堪忍や」
包帯の上からそっと頭を撫でると、ゆっくりと瞼が持ち上がった。
俺は慌てて手を引っ込める。
「――透、ちゃん?」
「気ィついたんか」
忍の視線が、吊られた俺の腕から、顔へと移動する。
泣きそうな目をして、忍は言う。
「ごめんなさい……わたし」
「謝んな!」
自分でも驚くほど荒い声音に、俺は続く言葉を見つけることが出来なかった。
てっきり泣くかと思っていた忍は、困ったように微笑んだ。
どうしたら良いのかわからないまま、俺はそのまま身動きが取れずにいる。
ゆっくりと忍の手が持ち上がり……そのまま、俺の頬に触れた。
忍の手は、仄かに暖かかった。
「姿絵、ですか?」
「はい。『異国の絵師にお願いするから、見栄えの良いお方をバーンとぉ! 攫ってきてネッ☆』と、昼子様からのお言いつけです」
「それなら、日柳さんか藍晶の方が適任なのでは?」
先代当主へ届いた文への代返の手を止めて振り返ると、氷雨は少し不思議そうに首を傾げる。
「日柳様は、『バーンとォ! 嫌どす』と、お断りになりましたよ。藍晶様は『よく似た顔立ちを沢山見て有難みが無いから却下』だそうです」
「私は藍晶に似た顔立ちの方にお会いしたことはありませんが……そうか、藍晶か」
まだまだ山積みになっている文の山と、イツ花の顔をちらちらと交互に見遣りながら思案していた氷雨は、何か思いついたのか筆を置き、イツ花の方へと向き直った。
「イツ花さん。藍晶を呼んで来てくれませんか」
「はいはーい。んで、御用って何ですか? 当主サマ」
イツ花と入れ替わりに、両手で大きな包みを抱えた藍晶が現れる。
立ったまま襖を開けるのは、他に誰もいないので目を瞑ることにするとしても。
「『はい』は一回。それと、足で襖を開けるんじゃない」
「あーゴメンゴメン。俺、他所ではしないから。これ繊細だから、畳に置くと散っちゃうんだよ」
藍晶が抱えた大きな包みは、どうやら花だったらしい。まだ日は高いが、出かける予定でもあったのだろうか。
「そう。……参ったな。俺も用事ができたから、御文の代返を藍晶にお願いしようと思ってたんだけど」
藍晶が出かけるなら、代返は帰ってから自分でするか……と氷雨が文箱に目をやると、藍晶の口角が少し上がる。
「用事ってアレでしょ。『異国の絵師さんに頼まれた姿絵に適任の人物』ってヤツ」
「あれ? イツ花さん、藍晶には声かけてないって言ってたけど」
「さっきナギ君が断るところ見てたんだよね。いやー、あの『嫌どす』って笑顔、そのまんま絵師さんが姿絵に出来そうな位、見事なモンだったなー」
言いながら、藍晶は手にした大きな花束を氷雨に手渡す。
淡い薄紅の花びらに彩られた枝と、幾重にも重なった少し色合いの違う桃色の切花。僅かに違う色合いの花も混じっているようだが、基本的に全体の色合いは白に近く、淡い。
かすかに香りがするところから察するに、どうやら生花のようだ。
(これは確かに、畳に置くのは可哀想だな)
「代返、やっといたら良いんだろ? それ持って絵師さんのトコ、行って来たら」
「ああ、これは絵師さん宛なんだね」
花の香りにつられて、自分でも気付かないうちに顔が綻んでいたらしい。
氷雨につられたのか、藍晶も微笑む。だけど一瞬、藍晶の表情に翳りがさしたように見えたのは気のせいだろうか。幼い頃の、無邪気な笑顔とは少しだけ雰囲気の違う笑顔。
しかし、藍晶はすぐにまた機嫌の良い、明るい表情に戻って言った。
「ま、美人に描いて貰えると良いよね。ってかさー。代返のご褒美、お願いしても良い?」
「ご褒美ね……言うと思った。藍晶がその顔するときって、大抵何か『おねだり』をするときなんだよね」
「あ、バレた?」
『美人』は女性に対する褒め言葉だと何度言えば解るのかと、氷雨は心の中でそっと溜息をつく。
言っても無駄だと解っているので、もはや小言は言わないが。
小さい頃に比べれば、こうして藍晶がおねだりをすることもかなり頻度が減ったので、兄としては多少寂しいような、成長が喜ばしいような、複雑な心境ではある。
「どこか、お店が開いているうちに終わればね。――紅月さんの羊羹は藍晶は食べないから、酒蔵にでも寄ってこようか?」
「違うって! あ、いやお酒は正直嬉しいンだけどさ。そんなんじゃなくて」
藍晶がす――と、氷雨の髪に手を伸ばす。
「絵師さんの姿絵、俺にも見せて」
「良いけど。……そんな事で良いの?」
「うん。だってさ、前に歌麿呂さんのとこで描いてた姿絵と違って、一般流通に乗らないんでしょ。貴重じゃん。つかむしろ唯一品?」
ははっと笑うと、藍晶は文机に向かった。
いってらっしゃいという藍晶の声を背に、花を抱えた氷雨は玄関へと向かう。
武者絵と違い、着替える必要は無いと言われ、氷雨は画廊を訪れた着物のままで姿絵のモデルをつとめることになった。
仕上がった姿絵(本来、姿絵は太夫の姿を描いたものをそう呼ぶのだが、戦装束では無いから姿絵と呼んでも差し支えないらしい)を見せて貰い、少々驚く。
(以前、描いてくれた絵師さんとは雰囲気が違うな――もっともあのときは魔槍の方だから雰囲気が違って見えているのかもしれないな)
淡い色彩が繊細で――絵心など全く無い自分にも『美麗』だという印象がある。
自分は、他人の目からはこんなふうに見えているのだろうか。
天界からのお達しと聞いていたから、てっきりイツ花が天界へ持っていくものだと思っていたが、仕上がった姿絵は「差し上げます」と手渡された。
行きの花束と、姿絵の入った包みが入れ替わった形で、氷雨は家路を急ぐ。
日は傾きかけていたが、これぐらいの時間帯なら、酒蔵に寄っても問題は無いだろう。
(――姿絵の良し悪しは、俺には解らないけど。この姿絵に込められた、絵師さんの暖かなお心遣いはわかる。藍晶も気に入ってくれると良いな)