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「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(4):なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?

―時系列分析による検証―

2016年12月2日
川本卓司*
中浜萌**

要旨

本稿では、「量的・質的金融緩和」導入から3年余りが経過した後も、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「物価安定の目標」である2%程度に到達しなかった背景について、定量的に検証する。具体的には、時系列モデルの要因分解(VARのヒストリカル分解)の手法を用いて、消費者物価がどのような要因によって「量的・質的金融緩和」導入当初の日本銀行政策委員の見通し(中央値)から下振れたのかを実証的に明らかにする。分析の結果、2015年度の消費者物価前年比の下振れ幅(−1.9%ポイント<見通し:+1.9%、実績:0.0%>)のうち、約5割(−1.0%ポイント)は原油価格の下振れによるものであり、1割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因に起因することがわかった。インフレ固有の要因は、需給ギャップや原油価格、為替レートでは説明できない消費者物価の下振れを意味しており、これは、予想物価上昇率の高まりが当初の想定に比べると小幅なものにとどまったことを表していると解釈される。

JEL分類番号
C32、E31、E52

本稿の作成にあたっては、関根敏隆、中村康治、法眼吉彦の各氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。また、調査統計局の河田皓史氏には、データ作成面で多大な協力を頂いた。ここに記して感謝したい。

* 日本銀行調査統計局 E-mail : takuji.kawamoto@boj.or.jp
** 日本銀行調査統計局 E-mail : moe.nakahama@boj.or.jp

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