カジノを解禁する統合型リゾート(IR)推進法案の審議が衆院内閣委員会で進んでいる。

 朝日新聞は社説でカジノ解禁に反対し、ギャンブル依存症をはじめ、負の側面を慎重に議論すべきだと主張してきた。

 与党と日本維新の会は今回、民進や共産の反対を押し切って法案を審議入りさせた。おとといの委員会では民進欠席のまま質疑を進めた。わずか2週間の延長国会で成立をめざすという。異常な状況である。

 刑法が禁じる賭博に、民間業者が営むカジノという新たな例外を認めようとする法案だ。国内外の反社会的勢力に利用されないか。治安が悪化しないか。国民の懸念は根強い。

 国会で議論することまで否定しないが、幅広い合意を得る努力が不可欠だ。与党の公明党内にすら慎重論がある。ましてや年金制度改革法案をめぐって与野党の対立が激化している現状では、じっくり議論できる環境は整っていない。一方的な審議で成立に走るのは強引すぎる。

 今回の法案は特区でのIR整備を促すもので、いずれ詳細な制度設計は政府に委ねられる。最大の懸念のギャンブル依存症に関しては、日本人のカジノ入場について「必要な措置」を講ずるよう求めてもいる。

 賭博が禁じられている日本だが、競馬や競輪などの公営競技や、「遊技」とされるパチンコがあり、依存症患者は海外と比べても多いと指摘される。

 14年には厚生労働省研究班が「依存症が疑われる成人は全体の5%弱の536万人いる」との推計を示して注目された。

 推進派は国会審議で、カジノ解禁と合わせて依存症対策を総合的に進め、悪影響は最小限に抑えると強調した。

 しかし、目の前の課題である依存症対策と、新たなリスクであるカジノの解禁がどうしてセットなのか。説得力は乏しい。

 推進派がカジノ解禁を急ぐ背景には、20年東京五輪と合わせ、海外から観光客を呼び込みたいとの思惑がある。25年大阪万博誘致構想を掲げる維新は、万博候補地の人工島にIRも、と夢を描く。

 近年は大型資本が手がけるカジノの開設がアジアで相次ぐ。先行事例を見れば、一定の経済効果は期待できよう。だが、五輪、万博、カジノと、いずれも欧州発祥の発想に頼るばかりで、日本は世界の人を引き寄せ続ける観光大国になれるのか。

 カジノ解禁は、国の様々な施策にかかわる問題といえる。数の力で無理やり決めるようなことはあってはならない。