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【美濃加茂市長逆転有罪】
1審と正反対の結論 判断分かれたポイントは…
受託収賄などの罪に問われ1審で無罪判決を受けた岐阜県美濃加茂市長、藤井浩人被告に逆転有罪判決が言い渡された。賄賂の受け渡しは密室性が高く物証が得られにくいため汚職事件の捜査は供述が最大のカギを握る。今回は供述の信憑(しんぴょう)性をどう評価するかで判断が分かれ、正反対の結論が導き出された。
「証拠を見てもらえれば有罪になると思っていた」。法務・検察幹部の一人は淡々と判決を振り返った。1審は贈賄側と収賄側で事実認定が異なる“ねじれ”が生じていたが、検察内では「裁判官が変われば控訴審で然るべき判決が出る」(別の幹部)との見方が大勢を占めていた。
検察側立証の核となったのは、藤井被告への贈賄を認めた地下水供給設備会社社長、中林正善受刑者(46)=懲役4年の判決確定=の証言だ。
弁護側は「社長が余罪追及を免れるため検察と取引した」と主張。1審判決は贈賄側に虚偽供述の疑いがあるとまで言及していた。
控訴審でも中林受刑者の証言の信用性が争点となり、職権で証人尋問が行われた。藤井被告が受け取った賄賂は30万円だが、「額が少なく、(他の使途と)紛れてしまう」(別の検察幹部)という問題もあった。
検察側は控訴審で、賄賂の原資とされた金融機関の出金記録や現金授受後にメールが急に増えた点などを指摘し、供述を裏付けた。
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は逆転有罪判決について、「控訴審で贈賄側から破綻のない証言が出たことと、検察側の裏付け立証もより緻密にされたのが主な理由だ」との見方を示した。今回の公判では、供述の信用性を慎重に吟味し、立証することの重要性があらためて示された形だ。