中国で建造された2隻目のLNG自動車運搬船=林哲平撮影
【上海・林哲平、ブリュッセル八田浩輔】大気汚染につながる船舶の排ガス規制が厳しさを増す中、環境負荷が低い液化天然ガス(LNG)を燃料とする船の開発・利用が世界的に広がりつつある。日本でも海運大手、日本郵船がLNGを燃料に使える世界初の自動車運搬船を環境規制が世界で最も厳しい北欧に年内にも投入する。
日本郵船が投入する自動車運搬船は、全長約180メートル、総トン数が約4万2000トンで、約3900台の車を積載できる。ベルギーの港ゼーブルージュを拠点に、バルト海などで同社のノルウェー子会社が運航する。受注した造船大手、川崎重工業の中国合弁会社「南通中遠川崎船舶行程」(中国江蘇省)では9月に1隻目が完成し、2隻目も11月29日に引き渡された。
船内にLNGタンク(約800立方メートル)が装備され、英国で専門の訓練を受けた船員が勤務するという。LNGを使うことで排ガス中の硫黄酸化物(SOx)をゼロにできるほか、二酸化炭素排出量も重油を燃料とする時と比べて約30%削減できる。LNGの補給拠点はまだ限られているため、重油による航行もできる仕様だ。
硫黄酸化物など大気汚染物質の規制は、自動車など陸で先行してきたが海運分野でも急速に進んでいる。船舶による環境汚染防止に取り組む国際海事機関(IMO)は、バルト海や北海などで運航される船舶の燃料に含まれる硫黄分濃度を、2015年に1%から0.1%以下に規制するなど北欧海域では厳しい環境基準がとられている。IMOの10月の会合では、全海域で20年から0・5%(現行3.5%)に引き下げることが決まった。
日本郵船はベルギーでLNGの供給事業も始める予定で、「普及が見込まれるLNG船舶事業は大きなビジネスチャンス」(同社)とみている。