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【社会】

通信傍受の対象拡大 改正法施行、乱用懸念も

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 捜査で電話やメールを傍受できる通信傍受の対象犯罪に、組織性が疑われる詐欺や窃盗など九類型を追加する改正通信傍受法が一日、施行された。捜査当局は振り込め詐欺などの摘発に活用したい考えだが、傍受件数は大幅に増えるとみられ、乱用やプライバシー侵害を危ぶむ声が出ている。

 改正法は、容疑者取り調べの録音・録画(可視化)を警察と検察に義務付け、司法取引を導入する改正刑事訴訟法と併せて国会で審議され、今年五月に成立。捜査機関側が、取り調べに代わる証拠収集の手段として傍受対象の拡大を求めていた。

 通信傍受法は二〇〇〇年八月施行。傍受は、他の方法では犯人の特定や犯行状況を明らかにすることが著しく困難な場合に限られ、裁判官の令状も必要になる。だが「通信の秘密を保障した憲法に抵触する」として立法時に激しい反対運動が起き、対象犯罪は薬物・銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四類型に限定されていた。

 改正法は、これに殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など九類型の犯罪を追加。

 捜査・公判改革を議論した法制審議会(法相の諮問機関)の部会では、委員の弁護士から「冤罪(えんざい)防止策が不十分なまま、捜査手法が大幅に拡充された」との批判が出た。

 政府は毎年、傍受の実施状況を国会に報告しなければならない。法務省によると、〇〇年八月の法施行から昨年末までに裁判所が発付した令状は三百二十三件で、六百四十人の逮捕につながった。一方、一五年に傍受した約一万四千回のうち犯罪に関連があったのは約五千回。傍受の経緯や事件の具体的内容は明らかにされていない。

 改正法では、傍受データを暗号化できる専用機器が導入され、NTTなどの通信事業者の立ち会いが不要になる。この規定は二年半以内に施行される。

 

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