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支店体制のメリット
 アダストリアは2018年を目処に支店制度を導入するそうだ。これまで本部に集中していた店舗運営業務を全国20ヶ所に置く支店に移管し、ブランド別に行って来た採用や店舗運営の人員配置、商業施設デベとの交渉も地域毎に集約する。
 今日のアパレルチェーンでは本部集中型の店舗運営が主流となっているが、前世紀のナショナルチェーンや大手アパレルは地区毎に支店を置いて採用や人員配置、VMD運用など店舗運営はもちろん、商業施設デベとの交渉や在庫の店間移動など二次DB業務も担っていた。今世紀に入っては急速な多店化やPOSシステムの普及、Eメールの日常業務定着、近年ではスマホやタブレットによる一元情報交流グループウェアの普及によって遠隔地店舗とのコミュニケーションが加速度的に進み、支店営業体制の必要性が薄れて本部集中体制が主流になっていた。そんな中、支店体制を復活させる意味は何なのだろか。
 アダストリアの場合、急速な多店化と多業態化に伴う店舗要員不足を同一商業施設内や近隣の店舗間で融通し合うエリア・レイバーマネジメントで解消したいという意向が強いと推察される。加えて、同一商業施設内に多店舗を布陣する立場で商業施設デベとの交渉を有利に進めたいという意向もあるのだろう。
 この構図は大手アパレルの支店営業体制とも通ずるものがある。オンワード樫山は地域の百貨店に多数のショップを布陣して人員や在庫の運用を支店が統括する体制を採って来たが、販売人員や在庫の効率的運用に加えて百貨店側との交渉を一本化して有利に運ぶメリットも大きかった。百貨店の改装に際して有利な売場を大量に確保する営業力はライバルのアパレルに恐れられたものだ。
 百貨店がすっかり勢いを失って百貨店アパレルも売上減少が続き、樫山以外の大手アパレルは悉く支店営業体制を放棄して店舗運営から在庫DB運用まで本部集中体制に切り替えたが、その弊害は小さくなかった。支店体制の運営固定費負担からは逃れたものの、販売員の採用や定着、配置運用が難しくなって販売代行への切り替えが進み、POSデータによる遠隔操作DBではカラー、サイズなど微妙な在庫バランスが崩れがちになり、地域の百貨店に対する交渉力も低下して縮小均衡に陥らざるを得なかった。
 アダストリアの場合、支店に二次DB業務まで分担させるのかどうか知らないが、支店の営業マネージャーやVMDコントローラーによる‘見えるDB&VMD運用’まで踏み込んでルート便体制を確立すれば、マークダウンロスは6掛けに減少し、在庫回転も2〜3割は加速するはずだ。前世紀のアパレル直営店網を回していた支店営業体制の神通力はオムニチャネル時代の今も通用するはずで、アダストリアの成果が注目される。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/12/01 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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