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第七十三話〜結婚式が始まりました〜
「タイシさーん。タイシさーん?」
「無駄じゃ。帰ってきてからずっとあの調子でな」
今、俺は最大限の集中力で各種装備を作っている。既に精神耐性魔導具と魔物除けの結界を生成する魔導具は必要数を作り終えている。今は通行証に組み込む携帯型の魔物除けを量産中だ。
とりあえずこれを作り終えないことには俺自身用の装備作成に入ることができない。
「鬼気迫る、といった様子ですね」
「お身体に障らなければ良いのですけど……」
ルーチンワークは慣れている。
というか戦争に使う武器と違って数千単位で必要なわけじゃないからまだ気が楽だ。精々数百くらいのものだし、そんなに大きなものでもないので一個あたりの時間も大したことはない。
「手の動きがやばい」
「目が回りそうですー」
俺の彫金はレボリューションだ! うん、テンションがおかしくなってきた。工業用ロボットかよって勢いで彫金しているからな。
今日ばかりは晩飯を断って作業を続ける。
集中力が切れてきたら外に出てミスクロニア王国側の街道開拓をザクザクと勧める。飛んで魔法をぶっ放すだけなので良いストレス解消だ。魔砲で直線状に大樹海を薙ぎ払い、薙ぎ払った箇所を土壁の魔法で道にして行く。そしてメニューのマップ機能でカレンディル王国側の宿場建設予定地間の距離を測り、だいたい同じくらいの間隔を置いて宿場造成用の資材となる石材を地魔法で作って積み上げる。
多少ズレてても許せ。運んでくれ。
本当は道も国民達に作らせて仕事を与えようと思っていたが、そんな暇は無さそうなのだ。いつなのかはわからないが、神自身に試練はすぐそことか言われたら悠長なことをしている場合ではない。
俺が居るうちに済ませられることは済ませるべきだ。
魔法をいいだけ使って気分転換が終わったら転移で工房に戻って作業を再開する。急げ、急げ。折角ここまで積み上げたあれこれを神の試練とやらで失うのは御免だ。
何よりマールを、皆を失うなんて絶対に耐えられない。神の試練とやらがどんなものかは知らないが、叩き潰す。完膚無きまでに完全に、一分の隙も無く叩き潰してやる。
と言いつつも万一やられてしまった場合の準備を優先してしまうのは弱気の証だろうか? まぁ性分だな。仕方ないね。
「ふぅ……」
携帯型の魔物除けの量産が終わったところで一息吐く。流石に疲れた。肩が凝ってる感じがする。作業台から立ってストレッチをしていると工房の扉が開いた。入り口からこちらを覗き込んでいるのはカリュネーラ王女だ。普段彼女が工房を覗きに来ることは殆ど無いんだが、はて?
「随分と根を詰めているようですわね」
「んー……まぁちょっとな」
「理由は話して下さらないの? 私も含めて、皆心配していますのよ?」
「クロスロードの礼拝堂でな。多分だが、地母神ガイナに会った」
「え?」
うん、そういう反応になるよね。
「金髪碧眼ぼんっきゅっぼーんのすごい美人でな。なんというか見つめられるだけでヤバい存在だった。俺が今正気を保っていられるのも嫁達のおかげだね」
「……それで、根を詰めているのとは何の関係がありますの?」
「試練が近い、備えろとさ。そう言って光に包まれて忽然と消えていったよ」
「それは……」
言葉を失うカリュネーラ王女を見ながらストレッチを終わらせる。よし、頑張るか。
「カリュネーラ王女、悪いがマール達にも今の話を伝えてくれるか? 俺は色々と準備するから――」
「嫌ですわ」
「なんですと?」
まさかの答えにびっくりしてカリュネーラ王女に向き直ると、彼女は拗ねたような表情をしながら腰に手を当てていた。私、怒ってますのよと全身で主張している。なんだこの可愛い生き物。
「ネーラって呼んでくれないと言うこと聞いてあげませんわ」
「頼むよ、ネーラ」
「もう、仕方ありませんわね。この私を小間使いにするなんて貴方くらいですわよ?」
「文句を言いながらもちゃんとしてくれるネーラは可愛いな」
そう言うとネーラは顔をボンッと赤くして走り去っていってしまった。うん、可愛いな。あの子も幸せにしてやらなきゃならん。神の試練なんぞに負けてやるわけには行かない。
「とは言え、どうしたものか」
神の試練と言っても相手がわからないので、これといった対策を立てることは難しい。
ではどうするべきか。やはり物理で殴るのが一番だろうか? 物理無効とか魔法無効とかそういうズルをしてくる可能性もある。ううむ。
とりあえず、今の俺の手持ちの武器を整理しよう。
まず神銀の刃にクリスタルを組み込んだ接合剣、大氾濫を共に駆けた武器だ。魔力を増幅して衝撃波として放ち、広範囲に攻撃可能。剣としても使えるけど強力な武器と打ち合うと破損する恐れあり。どちらかと言うと剣というよりも魔法の威力や消費を抑える杖みたいなポジションだ。
次に神銀棍。総神銀製のクォータースタッフだ。あまり使っていないが、魔法を使うなら接合剣よりもこちらのほうが安定度が増す。武器としての耐久性もこちらのほうが上だ。
後は最近作った神銀自在剣。大きさを三段階に変えられる剣で、最大の巨剣モードならドラゴンだって叩き切れるだろう。武器としての性能は随一で、耐久性も高い。当初はロマン武器として作ったのだが、使ってみると想定以上に使い勝手が良い。俺のお気に入りだ。
他には……半ば趣味武器として作った巨大なハンマーであるパニッシャーか。武器としての性能は高いけど、取り回しは今ひとつ。衝撃波を放つ機能がついていたりする試作品だな。ブン殴った時のインパクトは決して侮れるものじゃないけど。
黒鋼製の投擲杭もなかなか使い勝手が良い。黒鋼自体が持つ強力な対魔力性によって魔法的な防御をいともたやすく貫通する。単純に金属としても頑丈なので、使い勝手は非常に良い。
手持ちの武器はこんなところだ。これに魔法も加えての戦闘が俺のスタイルなので、遠近共に割りと隙の少ないスタイルだとは思う。
「神銀製の投擲杭を作るか……加速と耐熱の魔法刻印を組み込んで」
対魔法特性は見込めないが、単純に速度が向上するので威力と物理貫通力は上がるはずだ。作るのも簡単なのでサクサクとある程度の数を作る。黒鋼は魔力親和性が低すぎて刻印を入れても意味が無いんだよな。本当に脳筋のためだけにあるような金属だ。
「うーん……」
いざ強力な武器を作ろうと考えるとなかなか案が浮かばない。オリハルコン製の武器を作るくらいだろうか。オリハルコンと神銀を比べると、加工のしやすさ以外の性能は全てにおいてオリハルコンの方が上だ。金属としての特性も、魔力親和性も。
ただ、どうもオリハルコン製の武器というのは俺の肌に合わない。確かに性能は良いんだが、加工がしにくいので魔法刻印を刻んだりするのも面倒なのだ。しかも他の素材と組み合わせようとすると性能が微妙になる。そういった意味では神銀の方が余程素直で汎用性が高い。
「接合剣をアップグレードするか……?」
接合剣は俺が魔法刻印を使うようになる前に作った一振りだ。言うなれば第一世代の武器である。魔法刻印によって強化を加えたマール達のミスリルの短剣が第二世代、強化だけでなく複雑な機能を付け加えた神銀自在剣やパニッシャーは第三世代の武器と言えよう。
「ふむ」
接合剣の弱点を克服しつつ、更に進化させる。うむ、やる価値はあるのではないかな?
方向性としては神銀自在剣の逆を行くべきだ。神銀自在剣のコンセプトは徹底的な物理戦闘への特価なので、接合剣の後継は魔力撃と魔法を使ったあ魔法戦闘に特化した武器とするのが良いだろう。
そうなるとやはりクリスタルの使用は外せない。どう見ても金属には見えないが、叩けば叩くほど蒼さが増して魔力の増幅能力が高まる不思議鉱石だからな。これを芯にした上で不朽の魔法文字を刻んでまず弱点を克服しよう。神銀製の刃には収束の魔法刻印を刻んでみるか。第一世代の接合剣は増幅した魔力が拡散して一振りごとに衝撃波が爆裂してたからな。
あれはあれで対多数への攻撃方法としては良かったが、今回は威力を収束させて高める方向で行きたいと思う。よし、燃えてきた。
☆★☆
作業そのものは難航を極め――ることもなかった。第一世代の接合剣を分解して、極限まで精錬したクリスタルはそのまま打ち直して流用したからだ。
打ち直したクリスタルの芯に魔法刻印を刻み、神銀製の刃を被せて接合する。その上で更に魔法刻印を刻み込んで接合剣を生まれ変わらせる。
過去にいいだけ試行錯誤した工程なので、今更苦戦することもない。夜が明ける頃に新しい接合剣が打ち上がった。
デザインは接合剣とそんなに大きくは変わっていない。片手剣として少々長めの片手半剣になっているのも同様である。両手でも扱える分技量は要求されるが、剣術のレベルが最大なので何の問題もない。
名付けるなら晶芯刃銀剣といったところだろうか。魔力を通してみた感じだと、接合剣に比べて魔力の保持性能も上がっているためか、魔力撃を維持したままにするのがかなり楽だ。暴発して衝撃波を放つこともなく、実に安定した使い心地である。うむ、これは良い。
クリスタル製の芯材に神銀製の刀身、それぞれに魔法刻印を刻むことによって二つの魔法刻印効果を発揮できているのも良い感じだ。第四世代の武器と称しても良いのではないかな。
試し振りをするために外に出て晶芯刃銀剣を振るう。刀身のバランスも俺の意図した通りで、問題は無さそうだ。魔力を篭めて振るうが、やはり衝撃波が暴発することは無い。意図した通り、魔力は刀身にちゃんと収束して留まっているようである。
出来に満足したので上空に向けて篭めた魔力を開放する。
――ッ!
開放された高圧の魔力が光の刃となって雲を真っ二つにして消し去った。あるぇ? なんか思った以上にデンジャーな現象が発生しましたよ? 結局じゃじゃ馬なのは変わらないのね、こいつは。取扱いには気をつけよう。
後は防具だが、こればかりはどうにもこうにも。ペロンさんにドラゴンレザーと神銀で作って貰った鎧があるから、それを着るくらいしかないな。ワンタッチで魔法防壁を展開する魔導具も作ったことはあるのだが、俺自身が張るレベルの障壁を展開しようとすると魔力的なコストが高くなりすぎて割に合わないのだ。
流石に疲れたのでストレージに剣をしまって全身に浄化をかけながら寝室に向かう。腹も減ってるが、それ以上に眠い。
「あら、今から寝るの?」
「んー、おやすみ」
「はいはい」
エプロンをつけているデボラと欠伸をしながら擦れ違い、寝室に入る。俺のベッドではマールが寝ていた。そうか、昨日はマールの番だったか。悪いことをしたなぁ。だが今は眠い、すまんマール。
ストレージに来ている服をしまって一瞬で下着姿になりながらマールが寝ているベッドに潜り込んでマールに抱きつく。ああ、温かくていい匂いがするなぁ。
そして少し寝て、目が覚めたら天国だった。
いや、比喩表現だけど。目が覚めて目の前に男のロマンがあったら男にとってそれ以上の天国などあるだろうか? いやない。どうやらマールのお胸に顔を埋めたまま寝ていたらしい。
顔をあげるとなんだか優しい笑顔を浮かべているマールと目が合った。
「おはようございます」
「おはようございます」
そのままじっと見つめ合い、どちらからともなく唇を交わす。
この後滅茶苦茶イチャイチャした。
「あー、なんかこの自堕落というか退廃的な感じ。久しぶりな気がするわ」
「ふふ、大氾濫が来る前はこんな日が結構ありましたよね」
「あったなぁ。そんなに前でもないのになんか懐かしいわ」
疲れ果てるまで何かを作って、疲れたら寝室で寝ているマールやフラムの横に潜り込んで寝る。起きたら気が済むまでイチャイチャして、そこら辺の屋台で買っておいた食べ物を食べてダラダラと過ごす。
大氾濫に備えて色々と準備をしていた頃はそんな生活を送っていた時期もあった。大氾濫が終わって、獣人の村を見つけてからは色々とやることが増えてこんな風に過ごすことも無くなっちゃったんだよな。ああ、ずっとこういう生活をしていきたい。好きなことだけやって生きていきたい。
「なんだか今日のタイシさんは甘えん坊ですね?」
「そういう気分なんだ」
「そういう気分なら仕方ないですね!」
「ああ、仕方ない」
そうやってイチャイチャしているとティナが殴り込んできた。ずるいずるいと騒ぐティナをいなして三人で笑う。そうしているうちにフラムを先頭にしてクスハやデボラ、メルキナ、カレンにシェリーにシータンが、ネーラも遠慮がちに入ってくる。ステラは部屋の外から微笑ましげにこちらを見ていた。
この光景を失くしてはならないと心に強く刻み込む。俺達の戦いはこれからだ!
☆★☆
「さて、では結婚式の計画を進めていきましょうか」
「はい」
幸せな家庭を築いたらそこで終わりではない。寧ろここからが人生という舞台の始まりである。俺は外敵から、神の試練から、あらゆるものから彼女達を守っていかなくてはならないのだ。その区切りとなる結婚式もまた一つの戦場である。
とは言っても、正直ここは嫁達に丸投げなのであるが。俺はハイハイと従って彼女達の望むままに振る舞うまでである。結婚式において男の役割など独身男のやっかみを受けながら酒と飯を振る舞うくらいのものなのだから。俺の出で立ちや立ち居振る舞いに注目するもの好きなど居るはずもない。
「とりあえずタイシさん、これがミスクロニア王国での結婚式のスケジュールです。暗記しておいてくださいね」
「こちらがカレンィディル王国のものになりますわ」
「うっそだろお前ら」
突如突きつけられる式典のスケジュールと儀礼の内容。新郎って新婦さんの前に行って何か適当に宣誓して指輪交換してキスしたら後は座ってるわけの簡単なお仕事じゃないんですか!? やだー! え? スピーチもするの? やだー!
「俺に任せたら爆弾発言を乱発するぞ。夜のマールの赤裸々な話とか」
「千切りますよ?」
「やだこわい! でも実際のところね、俺に気の利いたスピーチとか期待されても困る。俺は貴族としての教育も何も受けてないんですよ?」
「それは勿論存じ上げておりますわ。なので、ちゃんと原稿も用意してありますのよ。覚えてくださいませ」
「やだー!」
「タイシが駄々っ子みたいになってる」
「ちょっと可愛いかも」
「いやお主ら、それでいいのか」
床に寝転んでじたばたする俺を呆れた表情で見下ろす王族組とクスハ。対してフラムとメルキナ、獣人組は同情する視線やら何故か興奮した視線やらを向けてくる。待て、駄エルフは何故そんな顔で俺を見ているんだ。身の危険を感じるぞ。
「タイシさんはこれであれですからね、内弁慶というか引きこもり気質というか人見知りですからね。そういうのを今まで私やティナに任せてきたんですから、今回は諦めてください」
「食事をする暇無し。笑顔で耐久挨拶レースですよ」
「私達はそれに加えて何度もお色直しをしなきゃいけませんのよ」
マールとティナとネーラが恐ろしいことを言ってくる。なにそれこわい。結婚式こわい! 戦慄していると肩をポムと叩かれた。肩を叩いたのは俺と同じように情けない表情をしているフラムだ。
「諦めましょう」
フラムも士爵の娘とは言え、三女の上に女だてらに騎士になり、後ろ暗い部隊に配属されていたような身の上だ。社交界とかの華々しい世界とは無縁だったという。
「私は諦めました」
「諦めんなよ! 諦めんなよ、お前! どうしてそこでやめるんだ!」
「そんな暑苦しく言ってもダメですからね。観念してください」
「人間は相変わらずめんどくさいわねぇ。ズボッとヤッて赤ちゃんができればそれでいいじゃない」
「いやぁ、流石にそれは私もどうかと思うよ。動物じゃないんだからさ」
マールの無慈悲な言葉にメルキナがどこかズレた意見を出し、デボラがそれに突っ込む。いつもの流れですね、わかります。
「綺麗なドレスを着てお嫁さんになりたいです……」
「ん、女のロマン」
「うむ、女の一世一代の舞台じゃな」
「みんながおめでとうって言ってくれれば、それでいいと思います」
クスハは意外と三人娘と中が良い。今回、人間以外のメンバーはミスクロニア王国とカレンディル王国の結婚式には参加しないのだそうだ。何それ羨ましい。
「私達は全員両方の結婚式に参加ですけどね」
「これが絶望、か……」
「これの手綱を握るマールは大変ですわね」
「ネーラ姉様も握ってくださいね。飴と鞭が重要です」
「そこ! なんかこわい新人教育やめて!?」
ティナがネーラに何か危険な事を吹き込んでいる気がする。是非止めていただきたい。ネーラはいつまでもいじられキャラで居るべきだと思うんだ、俺。
ふとした拍子にメニューを開き、ボタンを押す。応答はない。
☆★☆
クローバーの運営業務を結婚式に参加しないメンバーと住人達の中から選出した役人達に任せ、俺達は結婚式の準備に奔走した。俺はそれに加えて神の試練とやらの対策のために余りに余っているスキルポイントを使うことを決断した。
やはり俺自身の強化となるとスキルの取得が手っ取り早い。経験上、スキルはただ取るだけではその性能を十全に活かしきれない。特に魔法スキルはその傾向が顕著だ。威力や範囲を舐めて極大爆破を使った挙句マールともども死にそうな目に遭ったのは中々忘れられない苦い思い出である。
【スキルポイント】174ポイント(スキルリセット可能)
【名前】タイシ=ミツバ 【レベル】73
【HP】932 【MP】4967
【STR】1880 【VIT】1915 【AGI】1778
【DEX】519 【POW】1034
【技能】剣術5 格闘5 長柄武器5 投擲5 射撃1 魔闘術3
火魔法5 水魔法5 風魔法5 地魔法5 光魔法5 純粋魔法5 回復魔法5
始原魔法2 結界魔法5 空間魔法5 生活魔法 身体強化5 魔力強化5
魔力回復5 交渉2 調理1 騎乗5 鍛冶5 彫金5 魔導具作成5
気配察知5 危険察知5 隠形5 鑑定眼 魔力眼 毒耐性3
ここのところレベルは全然上がっていない。まぁ、大して戦闘もしていないので当たり前と言えば当たり前なのだが、道を作るために大樹海を薙ぎ払った程度じゃ全然だめだな。
さて、何を取るか。
魔眼系のスキルとパッシプ系のスキルは特に慣熟せずとも簡単に使えるイメージがある。
ステータス上昇系のスキルは全部取ってる状態なので、この上となると……耐性系のスキルを取ろうかな。ひとつ18ポイントで耐性を最大まで上げられる。
火属性、水属性、風属性、地属性、光属性、闇属性の耐性スキルを最大にするか? 俺のPOWを貫いてくるような魔法攻撃もこれでかなり耐えられるようになるだろう。
それとも状態異常耐性を優先すべきだろうか?
既に取得している毒以外だと、石化耐性、精神耐性か。え? これだけ? 麻痺とか沈黙とか無いの? あ、もしかして毒扱いなのかな。魔法によるものだと精神耐性でカバーとか? とりあえず全部取るか! 耐性はいくらあっても困らないよな。
久々に大量にスキル習得。
おぉ? 取得可能スキルに物理耐性が増えてる。複数のスキルを取ることによってアンロックされる場合もあるのか! 取り敢えずこれも最大に……ってこれ重いな!? レベル1取得に5? ということはレベルが上がるごとに10、15となると。
すげぇ、ピッタリ使い切るんじゃないか、これ。
うん、防御面に不安があったから耐性を取ったのはアリじゃないかな? 慣熟も不要で単純に戦力の底上げになったと思う。
そして物理耐性を取ったら魔力耐性なんてのが出てきた。ええ……スキルポイント無いんですけど。スキルリセットしても死んでるスキルなんて騎乗5くらいだぞ。交渉、調理、射撃は最初から持ってたスキルだから多分リセットされないし。でも騎乗をリセットすれば恐らく2までは取れるな。他にリセットするとすれば隠形くらいか?
でもあれもなかなか使えるスキルなんだよなぁ。うーん……取り敢えず騎乗をリセットして2だけでも取っておくか。
【スキルポイント】0ポイント(スキルリセット使用済み)
【名前】タイシ=ミツバ 【レベル】73
【HP】932 【MP】4967
【STR】1880 【VIT】1915 【AGI】1778
【DEX】519 【POW】1034
【技能】剣術5 格闘5 長柄武器5 投擲5 射撃1 魔闘術3
火魔法5 水魔法5 風魔法5 地魔法5 光魔法5 純粋魔法5 回復魔法5
始原魔法2 結界魔法5 空間魔法5 生活魔法 身体強化5 魔力強化5
魔力回復5 交渉2 調理1 鍛冶5 彫金5 魔導具作成5 気配察知5
危険察知5 隠形5 鑑定眼 魔力眼 火耐性3 水耐性3 風耐性3
地耐性3 石化耐性3 精神耐性3 毒耐性3 物理耐性3 魔力耐性2
よし、これで良い。
この耐性スキル習得でどれだけ効果が出るかは未知数だが、きっと有利に事を運べるようになるはずだ。
「タイシさん。タイシさん? 現実逃避してないで戻ってきてください!」
「わぁ、まーるきれい。ぼくのおよめさんきれいでうれしいなぁ」
「完全に現実逃避してますわね」
今日はミスクロニア王国での結婚日当日である。
そう、当日である。俺は招待客が集まっているホールを思い出して全力で現実逃避をしているところだ。だってお前、黒山の人だかりというか、カラフルな人だかりだぜ? 何人居るんだよ、これ。ミスクロニア王国中の貴族が集まっているんじゃないか。
スピーチの内容? そんなもん忘れたわ。もう終わったからな! まぁ当たり障りの無い内容だったけどね。勇魔連合の主として二人を娶り、大樹海にミスクロニア王国とカレンディル王国の架け橋となる国家を樹立する。我々は子々孫々良い関係を気築いて行けるだろう、うんぬんかんぬん。みたいな。
マール達のドレス姿はそれはもう美しいものだ。最初は清楚な純白のウェディングドレスで、今はお色直ししてそれぞれ淡い色のついたドレスに着替えている。
「ほら、どうですかタイシさん」
「うん、綺麗だ」
マールのドレスはスカートがふんわりとボリューミーで、可愛らしい印象を与えてくるデザインだ。淡い緑色がマールの春風のような快活さをよく表していると思う。
「私も見て欲しい、です」
「ああ、ティナも可愛らしい」
ティナのドレスはデザインそのものはマールのドレスと似ている。しかしその色合いは大きく異なり、淡い水色のドレスはティナの楚々とした印象を強く引き出している。
「フラムは艶やかだな」
「その……はい。ありがとうございます」
俺の言葉にフラムは少し顔を伏せてはにかんだ。フラムのドレスは膝までがスレンダーなラインで、膝下から尾ひれのようにスカートが広がっている。可愛いというよりもエレガントな印象が感じられるな。淡い紫色の生地が彼女の艶やかな黒髪をより引き立てているように思う。
「私のドレスはどうですの?」
「エレガントだな。その一言に尽きる。ネーラも綺麗だよ」
ネーラのドレスはレースをふんだんに使った淡いピンク色だ。レースの袖に透けて見える肌がどこか艶かしく見える。なんというか、清楚でありながら色っぽい感じだ。
「皆綺麗だよ。俺は幸せものだな」
「カレンディル王国でも同じことをやるんですけどね」
「やっぱり不幸だ」
席に戻ると料理を食う暇もなく次々と挨拶する貴族達がやってくる。それに笑顔で対応する嫁達。俺は一応一国の王という立場でもあるので、直接声をかけられることはさほど無い。殆ど鷹揚に頷きマシーンである。
というか招待客多すぎやねん。これ全部に挨拶したらそりゃ飯食う暇も無いよね。それに座りっぱなしでケツが痛くなりそうだよ。ただでさえピシっとしてて肩が凝る衣装なのに。そんなことを考えていると周囲にザワッとどよめきが走る。
うん? 目の前に誰か立って――。
「まいどー、いつまで経っても呼んでくれんからこっちから来たよ」
清楚な白いドレスに身を包んだアッシュブロンドの美女が目の前に立っていた。スタイルもフラムに負けず劣らずの美女である。
「相変わらずだな。そのクソ度胸には感服するぞ」
「褒めてもうちの身体しかあげられんよ?」
「この場でその台詞を吐くお前がチャンピオンだ」
この女の名はレピア=ドゥ=デュメリ。以前イルさんに馬車馬のように働かされた際に色々とあって俺に身も心も捧げると宣言した女だ。俺の認識としてはクソ度胸のある面倒くさいやつ、だな。政略結婚の駒として一生を終えるのではなく、自分で商会を立ち上げたいという夢を持っているらしい。
「タ イ シ サ ン?」
嫁なるモノから名状し難い恐怖の声が聞こえてくる。ああ! 後ろに! 俺の後ろに!
「この無礼者はなんですか?」
比較的温厚なティナさんまで青筋を浮かべてらっしゃる。フラムはオロオロとしているばかりで、ネーラはレピアに品定めするかのような視線を向けている。周りもザワザワしてるな。これは収拾を付けないとヤバい。
「はい、ボッシュートっ!」
てれってれって~、びよよょ~ん。
レピアの足元に転移門を発生させ、首都クローバーに連行しておく。移送先はパルミアーノ雑貨店なので、きっとどうにか上手くやってくれることだろう。あのクソ度胸女の身よりも自分の身が惜しいんです! はい! 許してください!
そんなトラブルを起こしながらもなんとミスクロニア王国での結婚式が終わった。無事とは言えないが、なんとか乗り切った。
結婚式を終えたその夜は? そう、初夜である。
「初夜も何も……会ったその日に喰われてるんですがそれは」
「がおー」
マールが両手を上げて野獣の雄叫びを上げる。
今日はマールの日で、明日はティナの日。次の日にカレンディル王国で結婚式を行い、その番はネーラ、その次の晩はフラムとなるのだそうだ。勿論嫁達の協議の末に決まったことである。
「夫婦にとって初夜はとても大事なんですよ。過去のことは忘れて、さぁ!」
「さぁ! ってお前ね、もう少しこう、雰囲気ってもんがあるだろう」
「いや、だってその……今更、恥ずかしいじゃないですか」
マールが目をそらしてぼそりと呟く。そして俺は獣になった。
レピアって誰かって? 詳しくは書籍版四巻を買おう!_(:3」∠)_(ダイマ
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