挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
慧音SS小説Dream=Curse東方Project 作者:銀桜紅樹
1/1

東方Project

この作品は東方Projectを元にした二次創作です。
またよくある百合描写はありません。
もし百合描写を期待しているのであればブラウザバックを推奨いたします。
慧音SS小説「???(ネタバレになるので伏せておきます)」

5月某日。
俺は一年と一か月働いていた会社をやめた。
そして一日たった後、気晴らしに諏訪大社へ向けて愛車でツーリングをしに行こうとした。
俺は、岩井口弦。23のプータローだ。

俺は一身上の都合により辞め、再就職口を見つける前に今までのうっぷん晴らしとして、東方Projectの聖地のひとつである諏訪大社へ足をはこんでみた。
諏訪大社の石段を上がりながら妙な違和感を感じながら石段を上る。
違和感がすぅっとなくなった瞬間鳥居が見える。
が、石段の上にいながら、なぜか足元がなくなった瞬間気が付いたときは既に遅し。
俺は暗闇の中に落ちる。
最後に見た光景は、暗闇の入口に赤いリボンをつけたものと、視界に映った不気味な眼。
脳裏に八雲紫のスキマがよぎりながら意識が遠のく。

目が覚めた瞬間俺は見知らぬ天井が俺の視界に映った。
日本家屋の和室の天井。
俺は頭と視線を右にずらし光が強い方へ視界を移す。
何の変哲もない日本の庭。
そしてようやく上体を起こし、今いる状況を確認する。
完全に和室。そこには、部屋の隅に昔ながらの机が追いやられている。
そして、巻物と時代を感じる本らしきものが置かれている。
もしかして誰かに運ばれたのか?
救急車も呼ばずにか?
そしてこの佇まいから察するに、相当の年配のはずだ。
年配の方が俺を運ぶには正直無理がありそうだ。
なら、高くても40代の方?若くても10代・・・いや最近の10代ならそんな奇特な精神を持ってるのは考え付かない。
いてもレアかもしれない。酷な言い方だが俺は少なくともそう思う。

それにしてもさっき石段から真下に落ちたのは俺の幻覚なんだろうか・・・。
いくらなんでも東方projectは架空の世界。八雲紫のスキマに落ちる幻覚を見るなんて俺はどうかしてる。
そう思った瞬間。ガラッと視界の左後ろから部屋の入口であるふすまを開ける音に気が付く。

「お、起きたのか」
声の主が俺に話しかける。その声はハリのある落ち着いた物腰の割と低い女性だ。少なくとも高校生から30代なんだろうなとそういった声の印象。
俺はその声の主を確認するためその方へ振り向く。
だが俺は次の瞬間絶句した。
日本人女性と思っていたのだが、その髪の色は水色と白。そして青い色の特徴的なワンピースをしていた。
東方projectの上白沢慧音の外見そのもの。
いや、コスプレかもしれない。
常識的に考えれば、コスプレをして布団で意識を失ってた俺に声をかけることなんて恥ずかしくてできるもんじゃない。
俺だったら少なくとも羞恥心が邪魔してまず服を着替えて、ウィッグを外してから姿を見せる。
その羞恥心がなければまずこんなコスプレで見舞うなんて無理だ。
ある意味ネジが飛んでる人種しれない。
俺は恐る恐る尋ねる。
「ここは?」
「ああ、私の家だ」
そういいながら、歩み寄って俺の方に近づく。
「俺はいったい・・・」
「ああ、知り合いが竹林で倒れていたところを介抱して私の家まで運んできたそうだ」
「え?竹林!?」
バカな。俺は少なくとも石段から落ちた。それは確かだ。仮に八雲紫らしきスキマを見た幻覚を見たとしてもだ。
そう思いつつ、慧音のコスプレした女性は俺の眼前にまで近づいて座る。
「そうだ。竹林だ。もっともその竹林は迷いの竹林と里の人間から言われていてな」
迷いの竹林だと!?それは幻想郷の名称だ。
「少なくともその身なり、外の世界の人間にはピンと来ないだろうが」
外の世界!?今外の世界といったのか?俺は引き続き幻覚か夢を見てるのか!?それとも誰かのいたずらだろうか?
昔テレビでやっていたドッキリテレビ的な素人巻き込んでのいたずらか?
俺は一応自分が夢を見てるのかと確認するため、慧音のコスプレをした女性から目立たないように布団の影で片手の手の甲の皮をつねってみる。
ちゃんと痛覚がある。少なくとも夢じゃない。なら幻覚?そう疑いを持ちながらもう一度聞く。
「なぜ外の世界の人間と分かる。至って普通のトレンチコートだぞ」
そう、俺は5月とはいえ防寒対策として黒のトレンチコートを着ている。
「トレンチコートというのかその服は。普通のコートと違うのか?」
「妙なことを聞くな。あなたみたいな年頃の女性がそんなボケ方をするなんてまずない」
そして、軽くジャブ入れた直後に本命の踏み込みを入れる。
「仮にあなたがコスプレだとしてもそのボケ方は無理があるんじゃないかな?上白沢慧音さん?」
「!?」
激しく動揺の色を見せる。
「なぜ私を知っている!?まだ名を名乗ってないぞ」
そこか。【コスプレ】か【上白沢慧音】どっちかで反応するだろうと踏み込んでみたら。コスプレはという単語はなんのことだといわんばかりな空気を見せた。
だが名乗ってもいないのに自分の名前を出した。探りを入れるつもりだったが、急に飛んできた言葉に動揺する縁起なんてプロの役者でもない限りそれはできないだろうが、もう少し探りを入れてみるか。
「知らないものはいないさ。東方projectというゲームを基軸にした架空の世界を舞台にしたゲームを一通りプレイした人間ならな」
「ゲーム?なんのことだ?」
「遊びだよ遊び。幻想郷の言葉でいうなら遊戯だ。主だった登場人物が弾幕をばらまきそれを避けながら反撃して相手のバーとストックを0にするまで反撃するゲームだ」
「外ではそういった遊びが流行ってるのか?」
「少なくともごく一部だよ。俺はその遊びをプレイした経験者というわけだ。そして、上白沢慧音。あなたもその登場人物の一人。そしてそのコスプレをしていて俺の反応を見てる。ちがうか?」
「どういうことだ?」
ちょっと、興奮しながら話を続ける。
「とぼけるなよ。俺は諏訪大社の石段を上った。その途中で俺は落ちた。真下にな。真下というには物理上おかしな話だが、俺は落とし穴か何かの類に落ちてここまで運んで東方キャラのコスプレをして反応を楽しむいたずらをしてる。そうなんだろ!」
あ、ちょっとどころかかなり興奮して深く踏み込み過ぎたか。これは探りを入れるどころじゃないぞ。
ところが、少し顔をひきつらせて口を押さえながら頭をたらして笑いをこらえてる。ビンゴか?
「なるほど、私が誰かとぐるになって君をだましてるとそう思っているわけか」
「そうだ」
すると上白沢慧音のコスプレをした女性は顔を上げ答える。
「残念ながら。私がそういう悪ノリを好んで片棒を担ぐユーモアセンスは持ち合わせていない」
これで確信した。
どういうわけかしらんが、俺はゲームの登場人物が目の前にいるという摩訶不思議な状況に立たされている。
そして目の前にいるのが上白沢慧音本人ということ。それだけは確証がいった。
そして俺は向き直り土下座をする。
「申し訳ない。いろいろ勘繰りしてしまって。今この場で謝らせてくれ」
「いいよそれは。それに私が名乗る前に私の名前をなぜ知ってるのかもっと詳しく知りたいんだが」
そして俺は知ってることを洗いざらい話した。

「なるほど、この幻想郷を舞台にした弾幕ゲームという遊びが外の世界で私たちが知らない文明の利器で私たちの存在が一部の人間にどういうわけか知れ渡ってると」
「そういうことだ。なぜ原作者ZUNさんが知ってゲーム化したのか。他説があるとしたらその出どころがうかんできてキリがないがな」
俺が話をひとしきり終えた直後、俺も考えてみた。ファンタジーであるかのような場合もある。
ZUNさんが夢で見てそれを基に世界観をゲームにした説。
もしくは誰かから見た夢を話を基にしZUNさんが作った説。
それかZUNさんか関連した人が幻想郷を自由に行き来してそれを基にゲーム化した説。
それと八雲紫が自由に行き来しZUNさんに口伝を伝えた説。
という場合もある。
限りなくファンタジーかもしれんが、現に上白沢慧音がこの場にいるんだ。あってもおかしくはない。
「もっとも、慧音さんも別の形で伝わってるかもしれないけどね。」
そして、口伝や伝承というのは伝言ゲーム同様実際起こったことが人に伝わるたびに何かが変に伝わってる可能性もある。
今いる上白沢慧音すらも、ゲーム向きに性格や設定が異なるかもしれない。
「かもしれんな。こういうことは言い伝えと同じようなものだ。外の世界にも新聞というものが存在するだろう?」
「ああ。」
「新聞も大衆が興味を引き付けるように一部変えられてる場合もあるからな」
俺は笑みを浮かべた。
「なんだ?」
「いや、俺と似たようなこと考えてたんだなって思ってな。さすが、知性派の女性だ。頭の回転が速い」
「そ、そうか。」
少し照れながら慧音は返す。
その直後外から声がした。
「ごめんくださーい」
少し高い女の声。
「すまない。君とはもう少し話をしたいが、客人のようだ」
そういって慧音は立ち上がり、客が待つ玄関まで向かう。

俺も気になって数秒遅れで慧音と同じ方向へ向かう。
そして、慧音が会話してる相手は
ブレザーにうさみみ、そして紫色の長い髪、その左隣にはピンクのワンピースと黒髪ショートにうさみみの二人がいた。
正確には右側はうさみみはつけ耳だが。
そう、鈴仙・イナバ・優曇華院と因幡てゐである。
俺は陰で覗き見をしながらその二人を確認した。その優曇華院は背中に何か背負ってる。
いや、昔薬屋が自宅訪問して薬売りするときいたことがある。優曇華院は八意永琳の使いで上白沢慧音に薬がいるかどうか訪問しにきたんだろう。
この距離ではあんまり会話が聞き取れないためそういう解釈をして俺がいた部屋まで戻ることにした。

しばらくたってから、慧音が戻ってきた。
「どうだった、慧音さん」
「ああ、お客人は帰って行ったよ」
「どんな人だった?」
「とぼけるのか?君が覗き見してたのはバレバレだぞ。もっとも最初に気付いたのはそのお客人だが」
さすが、元月の兵。優曇華院にはすぐ気付かれたか。もっとも、それが外の世界に流れた設定どおりならな。
「あの二人にはすぐ気付かれたか」
「そもそも、君を助けた人間を見かけて薬売りとして様子をうかがいに来たようだ」
「助けた人間?いや、まさか・・・」
迷いの竹林に人を助ける人間といえば・・・まさか。俺はあの不老不死のモンペ少女を思い出した。
「知ってるのか?」
「ああ、多分な。外の世界に流れた設定どおりならばな。それは、藤原妹紅だろ。慧音さんと親しい不老不死の蓬莱人。あってるか?」
念のため確認を取ってみる。
「そうか、そこまで知ってるとはな。ならあの二人も知ってるだろう。」
「ああ、背が小さいのが因幡の白兎の元となった兎妖怪の因幡てゐ。でもう一人が元月の兵士であり今は永遠亭の八意永琳の弟子になってる優曇華院だろ」
「そうだ。」
「だが解せないな」
「どういうことだ?」
「こっちの話だと、妹紅と輝夜は永遠に殺し合う間柄。いわば敵同士。にもかかわらず、妹紅と親しい慧音さんに薬を売るというのはおかしな話だ」
「ああ、そういうことか。いくら妹紅の味方してるといっても、普段は寺子屋の教師だからな。たまに寺子屋の子供たちが近場で遊んで怪我をした時に応急手当の薬を用意してることもあって永遠亭もそのことを考慮してたまに薬を売りに来てるわけだ」
「なるほどな。」
「それに、如何にも外の世界の恰好してる人間が迷いの竹林に倒れたという妙な事態にも察しての訪問ということもありうる」
確かにな。そもそも外の世界の基本的な入口は博麗神社と聞いてるし、無縁塚という場所にも行きつく可能性もある。普通に考えればその二択。だが俺は迷いの竹林で気を失っていた。その謎は、多分八雲紫が一枚かんでると思うが。
「ところで、その『慧音さん』というのはやめてくれないか?すでにため口を聞いてる状態で私の名前だけさんづけというのは違和感があってだな」
「ああ、すまない」
やっべ、いつの間にかため口になっていたか。一方的とはいえ見知ってて親しみを感じてるせいかつい自然にため口になっていたか。
「なら、今後慧音と呼ばせてもらうよ」
「それでいい。ところでだ、君の名前を聞いてなかったな」
「悪いな。改めて紹介させてもらう。岩井口イワイグチ、岩井口弦だ。よろしく。」
「さて、ところでだ、君を初めて見たとき思ったのだが」
なんだ?まさか・・・一目ぼれとか?
「外の人間の割になぜか霊力が目視できるほど漏れていた。何か心当たりはないか?」
何だ違うのか。はは、ですよねー。
「心当たりというか、よく幼い頃から常人には見えないものが見えたり、一歩間違えたら酷い事故に遭いやすい体質というだけだな」
「ちょっと待て!後に言った言葉が自然となんでもなかったような風に聞こえるぞ。大事じゃないか!」
え?そこに突っ込むの?
「え?ああ、なんというか慣れた」
「慣れたって・・・弦、君というやつは」
ああ、そういやあ知り合いにもそこ突っ込まれたな。確かに人から聞いたら重い事態に感じるだろうけど。
「仕方ないだろう。こういうのは慣れて感覚がマヒしてるんだから」
今思えば、よく生きていられるもんだなと思う。幸か不幸か今となってはどっちでもとれる。
まさか、幻想郷の字は【幸運と不幸の境界にいる程度の人間】か?なんて自分でも思ってしまう。
「それにここも妖怪がはびこってて捕食者と被食者の関係が常になってるんだろう?でスペルカードルールと弾幕ごっこで防衛するというのが日常茶飯事だろう?つまりはそういうことだ」
慧音がよくわからん理屈だなという顔をしてる。
「そういうものなのか?」
「ああ。そういえば、霊力が漏れてるといったけどそういったことの経験と体質の裏返しかもしれないな」
「うむ。その経験があるという里の人間は古来ごく一部見られたということもあったというしな。もっとも、スペルカードルールができる前の話だが。」
その直後に慧音が何かを思いついたようだ。
「弦。もしかしたら、スぺルカードを扱えるほどの素質があるかもしれんぞ」
「へ?」
「いや、幼い頃からそういった外の人間からしたら特殊な経験をしたんだ。多分できるのではないかと思ってな」
「まさか」
「いや、ものは試しだ。私の押し入れに余ってる白紙のスペルカードがある。私が持て余してるカードだ。やってみてはどうだ?」
そういいながら慧音は屋内の押し入れを開け、手前を探し出す。
にしても持て余してるカードか。ゲームの設定ならば永夜抄と文花帖以降出番ないものな。もし楽屋内の話だと次作の出番を待ちわびていたにも関わらず【おめーの役ねーから】的な扱いで干された役者のようだな。
っとこれ口にしたらまずいな。
あと、ここに古明地さとりがいたら完全に筒抜けだ。さとりの外見も可愛らしいしお目にかかりたいものだが、今ここにいないことを幸運と感じる。
そういったら、漫画やゲームだと即座に超速フラグ回収って扱いだろう。
そう感じて、慧音から視線を外し周りを確認する。もちろん後ろもだ。昔のドリフのお約束【志村ーうしろうしろー!】っていうことも起こりかねないからな。
確認が終わってみると。慧音が押し入れから頭を戻し
「あったあった」
とこっちに向き直る体勢を始める。そして俺に歩み寄って抱えてる小箱を畳に置き開封する。
「これだ」
「これが、スペルカードというやつか。はじめてみるな」
俺は一枚を手に取り透かしてみるかのような行動をとる。
「それにスペルカード名を書き込み霊力をこめて自分の思い描いたものを顕現するんだ」
「至ってシンプルだな」
いやいたってシンプルな分そのイメージ力が必要とされるな。それと霊力。よく漫画でいうなら必要最低限の霊力許容量とコントロール力なんだろうが。
これが使えたら、独り歩きして妖怪に遭遇してもある程度抵抗できるな。俺は思いついた。
「なあ慧音」
「なんだ?」
「もしこれが扱えるのなら、俺を助けてくれた妹紅に礼を言いに行きたいんだが」
「なっ!」
「ダメか?」
「弦、本気で言ってるのか?」
「ああ、俺は命の恩人に礼を言いに行きたいだけだ。迷いの竹林という何時外敵が襲ってくる場所を抵抗手段0という状態でいったらせっかく拾われた命を無駄にするだろうが、もし抵抗できるのなら俺はその力で切り抜けて妹紅に会っておきたい」
「いいだろう。もしできなかったら私も同行しよう。少なくとも弦を守ることはできる」
「そうか、ありがとう。」
「私はその間に妹紅に渡す弁当を作っておく」
「ああ、俺はそうだな」
外を見やる。
「俺は外でスペルカードを扱えるように練習しておく」

といいつつも自分が使いたいスペルカードか。正直悩む。ゲーム原作通りなら能力も属性もかぶってはいけないしな。
俺が使いたいのはRPGでよくある魔法。属性魔法だ。
属性魔法というとすぐパチュリー・ノーレッジが思いつくわけだが。
まるまる属性魔法というのはやめておたい。
しかし、この幻想郷にも漫画とかによくあるマナとか四大元素に働きかけることで助力を得て顕現化できるのなら、微弱な妖相手にまずひけはとらないだろう。
なら、身近な空気と大地に働きかける魔法。それでいてパチュリーにまんま被らない魔法といえば・・・。
俺は空を仰いだ、そこには鳥が重力に逆らって羽ばたいている。
重力・・・そうか!ファイナルファンタジーには重力魔法というグラビデ系があったな。
重力だけじゃない。重力以外にも空気圧というのもある。つまりは圧力だ。となれば・・・。
俺は筆を借り、慧音の庭にあった切り株の上で白紙のスペルカードを書き込む。
まずは、試作型を作り出す。
よしできた。
俺は試作型を手に取り。手ごろな石ころを切り株の上に置きある程度距離を取る。
そして目を閉じ試作型を掲げ霊力を高めてスペルカードにいきわたるイメージをする。
その直後弾幕の型を全周囲にイメージ。マナがあるかのようなイメージ。風の精霊シルフがいるかのようなイメージ。そして空気圧をイメージする。
俺は目を見開きスペルカードの名称を叫ぶ。
「空圧符『ウィンドカッター』」
その直後周りに風が騒ぎ立てるかのような感覚がおこり、眼前にも風が空気圧でできたブーメランに近い風の刃が形成される。直後ターゲットである石ころに向かい真っ二つになる。そして他の風の刃も弾幕を張った状態で展開される。
よしっ!自機狙いと逃げ道を狭める弾幕の展開の同時行使ができた。一発でできるとは思わなかった。しかし、空圧符って我ながらネーミングセンスねーなと思ってしまう。まるで紅魔館の当主みたいだ。それとウィンドカッター。
まんまテイルズシリーズの風属性魔法だしな。
ともあれ、試作型としては上場だ。
よし、本格的にスペルカード作るとするか。
俺は結果として他に4種類を作った。むろん試射も込みだ。そのうち切り札もできた。これで並みの名無し妖怪には対抗できる。
その直後。
「結果はどうだ?」
俺はその声に気付き後ろを振り返りながら昔見ていた仮面ライダーの主人公見たく満面の笑みでサムズアップをする。
「どうやら私の見込んだ通りだな。私の力は必要ないかもしれんな」
「そうならないように心掛けるよ。」
「だといいけどな。迷いの竹林の妹紅が大体いそうな区域を書き込んだ地図と弁当だ。それと、ナイフだな」
マーキング用か。それと護身用でもあるかな。あとは万が一絶体絶命の時痛みを感じて食い殺されないための自害用も兼ねてるか。さっき慧音の発言からすればそういった配慮でもなさそうだが。
「すまないな、慧音。何から何まで用意してくれるなんて」
「ちゃんと戻ってこいよ」
「ああ」
俺は慧音に見送られながら慧音宅をあとにした。

俺は森林を抜け竹林に踏み入れた。
俺は迷いの竹林の地図を開きマーキングされたポイントを確認する。妹紅と頻繁に会いに行ってるためだろうか。迷いの竹林にしては書き込みが細かい。
未開の地はマーキング必須というわけか。念のため入口にマーキングしとくか。
そして俺はさらに進む。念のためにすでに10か所もマーキングしている。慧音は空を飛べるから空からの地図書き込みと地上の様子と誤差が生じるだろうし、土地勘ゼロの俺にとっては何時迷ってもおかしくはない。
そう考えればこれだけマーキングしても罰が当たらない。だが逆にリスキーかもしれないな。これだけ真新しいマーキングをしていれば妖怪は人間が侵入してると嫌でも気づく。
できれば一回も妖怪にエンカウントせずに妹紅のところへ辿り着きたいものだ。
といいつつ、妖怪どころか妖精一匹すらも見かけない。これは幸運というべきかな。
そして俺はもう一度妹紅がいそうなポイントを再確認してみる。ん?今視界の端っこに黒いものが移動したような。あと後ろで物音がした気がするが。
さてあっちか。と歩き出したら、左脇に小さな女の子が走り寄ってきた。
それは、金髪で赤いリボン黒のワンピース。それを確認した瞬間、その女の子と目が合い大きな口を開けて笑う。
ルーミア!こいつは人食い妖怪ルーミアだ!俺は、とびずさり距離を取った。
なんてことだ!なんで俺は黒いものが視界の端に映って物音がした時にルーミアと気づかなかったんだ!俺のバカ!どれだけ気が緩んだんだ!
「わはー!お兄さん。おいしそうなモノもってるねー」
あ、ルーミアは自分で作った暗闇の中で空飛ぶと同時に自分の作った暗闇で見えなくてよくぶつかる設定の他、雑食とかもあったな。
「この、弁当の事か?」
匂いに釣られたか。
「そう。それちょうだい」
「残念ながらある人間に届けるものなんでな。おいそれとあげるわけにはいかないの!」
つい幼い外見のために小さな子供にダメだという口調になってしまってる俺がいた。
「そうなのかーだめなのかー」
ルーミアはしょんぼりとする。
「でも、お兄さんの方がもっとおいしそう」
げ!阿求が書いたといわれる設定のファンブック通りでやっぱり俺が目当てか。
「お兄さんは食べてもいい人類?」
「おあいにくさま。スペルカード持ってるんでな。おいそれと食われてやるわけにはいかないんでね」
そういいながら地図をポケットにしまいトレンチコートの裾のポケットからスペルカードを取り出す。
「スペルカードもってるのかー残念。」
少しうらめしそうな表情をしたがすぐに切り替わり
「でも、勝ってしまえばいいもんね」
ああ~やっぱり。基本的なルールなんて外聞で知ってても本場では歪曲して伝わってるわけか。
噂とかって所詮伝言ゲームか。
「いくぜ!スペルカード!」
まずはさっき使った試作型のカードを使ってみる。
「風圧符『ウィンドカッター』」
大気に風の精霊シルフがいると想定してシルフに呼びかけ風の刃を具現化するイメージ。
自機狙いと相手の行動範囲を狭める弾幕。俺は東方原作で見た弾幕パターンをイメージして周りの空間に霊力の感触を肌でとらえる。
慣れていないせいなのか、その感触がまだ体になじんでないため周りを確認する。
これで本番で失敗したら元も子もない。そんな不安があった。
失敗したらこの場でルーミアに捕食されてしまうからだ。
そして思ったより配列はイメージしきれてないものの弾幕としては十分形になっている。
これが天才肌の霊夢ならば初回というハンデでも周りなど見ずに普通に飛ばすのだろうが。
「いけっ!」
ルーミアに向かって風の弾幕が襲い掛かる。
自機狙いは簡単に避けられたが行動を狭める弾幕はまずまずの配列。
「これ、カウントは?」
「ん?ああ、20カウントだ。今はな」
しまったカウント設定するの忘れてた!
「んじゃ、反撃!」
そういいながら通常弾幕を張ってくる。
「え?ちょちょちょ!」
「何?」
「反撃弾幕もありなのかよ!」
「えー!だってこんなの当たり前だよ。博麗の巫女も黒服の魔法使いも私と初めて会った時も反撃してたし」
冗談じゃねえぜ。普通の人間ならこんなの一撃でお陀仏だろうが。
ん?こういう時障壁張っておくのか。
壁。圧力でできた壁。そうイメージする。
やばい!着弾する。
と思った瞬間。
多少はダメージが通るものの、障壁はできた。
「おー。すごいすごい」
危ねぇ~。つか慧音はこれいわなかったな。慧音とあろう知識人が。まさか、【あー、すまなんだ。知ってると思ってつい】というオチなんだろうか。
それにしてもおい。スペルカードと反撃用の通常弾幕と障壁のやりとりを空飛びながらあの二人はやっていたのかよ。結構霊力消費するぞ。
それにこんなことを呼吸をするかのようにできるあの二人も相当の人間業じゃない。
っと、これは今の位置にいるとすぐ終わるな。少し位置変えて撃つほかないか。
俺は、今の位置から右へ4メートルぐらい移動しまた弾幕を撃つ。
イメージのリソースもせずに先ほどの弾幕が出る。
まるでPCのバックアップデータからすぐ呼び出したみたいに出る。
なるほど。どうやらカウント設定してる時間内は簡単にフィードバックする仕組みらしい。
だが確実に当たりダメージは蓄積されていく。
これがスペルカードルールってやつか。
意外と楽なもんじゃあないな。
そしてカウントは解け、ウィンドカッターは自然と消滅する。
「んじゃ、あたしの番。いくよー。夜符『ナイトバード』」
そういいながら青と緑の弾幕が飛んでくる。相手の位置を見ながら先ほどのウィンドカッターの直線弾の弾幕を張りつつ避けようとする。
この手の弾幕は距離を取ればとるほど隙間が結構広い。悠々と避けるまでもなくギリギリのところでかわす。
いわゆるグレイズだ。
「なっ!?グレイズ!」
「おうともさ。そうそうと決着付けたいんでね。悠々とかわすよりぎりぎりまでひきつけたかったのさ。」
そういいながらルーミアは体の頑丈さは人間とはくらべものにならないせいか障壁なしで直でダメージを受ける。
そしてダメージが限界値まで達し強制終了。
「さて、攻守交代だな。次のカードは・・・」
手札を見定めてみる。
「これだ!土圧符『バレットストーン』」
そう宣言してイメージ。土の精霊ノームに語りかけ大地の震動を発しそこから振動から浮かびあがった石が宙へ。そして、ルーミアの周りにあったいしつぶてが自機狙いで一斉にかかる。
それは、囮。と思ったら、ルーミアは上空に上がる。
「そうはいかないよーだ。」
しまった!彼女は妖怪。上空へ逃げるのは当然。
そして弾幕を張り始める。当たるのを覚悟して二撃目を続ける。
とんだミステイクだ。実際飛べない俺から見れば3次元構造の対空処理なんて意外と厳しい。命中率も格段に落ちる。
まるで空を飛べない有名な鉄の城が肘から出すドリルミサイルをうつかのような不利っぷりだ。
ゲームの中でしか感じたことはないが、実際対空攻撃をするとよくわかる。
そう思いながらまた場所を移動し、また命中率が格段落ちる攻撃をする。
「今回はカウント25だ」
といいつつこれは正直キツイ。水圧符にした方がまだよかったか。そんな後悔をしつつじりじりとダメージを削られる。
そして障壁が持ちこたえられず、原作でいうところのスペルブレイク判定。
お互いスペルブレイクは1対1。
「今度はあたしだよー。闇符『ディマーケーション』」
そう言いつつ上空から弾幕を発する。2Dなら縦横だけでいいのだが、今回は高さまで混じっているため実際の誤差が生じる。
意外とやっかいだ。どこかの赤と銀が基調となってる光の国の巨人のような斜め前の転がりをするため反撃の通常弾が遅れる。
対地と対空でこうも差が出るなんて誤算だ。
太平洋戦争の旧日本軍がトーチカでアメリカの戦闘機のへ攻撃に四苦八苦したのがわかる。
幸い、弾幕発射時一時静止してくれるから狙いはつきやすいが。
そうこういってる間に、カウント切れ。タイムアップ。スペルブレイクはならず。
これは結構ジリ貧だな。
どうすべきか、やっぱり対空攻撃が難しい以上、縦横処理に頼るしかない。
となると切り札か。やらなきゃやられる。しかたないか。
「切り札を使わせてもらう。重力符『グラビティランス』」
そう宣言するとまず重力のフィールドで相手の飛行能力を無効化するイメージをする。
その直後ルーミアは重力に捕まり落下。そして地面に激突。起き上がるが体が重いせいか動きが緩慢だ。いわゆる低速状態だろう。
そして、周りの弾幕は重力圧でできた大玉と重力圧を圧縮したナイフ弾のような槍が生成される。
まず大玉が動き、次が槍が飛ぶ。正直自分の重力も制限されるので、この槍を発射直後移動するため重力を1Gに解除。
また重力を行使という単純なワークである。
無論一時解除の時間はルーミアも高速移動が可能だが。
「卑怯だぞ~。」
「悪いな。博麗の巫女や魔法使いならいざしらず、こちとらただスペルカードが扱えるただの人間なんでね。こっちの陣地に引きずり込んだだけだ」
「ちなみに30カウントだ。」
こりゃ、ゲス野郎と呼ばれてもしかたないな。だが知り合いに昔見せてもらった封神演義の大公望やらベルセルクのガッツやらはわかってていてもそれをやる。生き残るためならそれをやっても仕方がない。
蛇蝎の如くって某明治剣客漫画の百識の法治も覚悟決めてやっていたしな。
そうこういってるうちに3撃目で被弾。
「まだ、いけるよ。月符『ムーンライトレイ』」
「え、このタイミングで?」
といいつつ、この弾幕も見慣れてるためか開始同時に大幅に削る。そして、ルーミアが重力から解放されてることを気づかずにそのまま二撃目。ふと思い出したのか三撃目で上空に上がり上空からしかけてきたのだが、
その時すでに遅し。原作でいうならカウントダウンのSEが聞こえそうなあたりでスペルブレイク。
ルーミアがあのファンブック通り頭が回ってなかったおかげと割かし卑怯くさいスぺカのおかげでルーミアに勝てた。
今回得た収穫は、空飛べる飛べないだけで結構勝手が違うということ。
それを実感した。
「うーんやられたー」
「・・・ふうなんとか勝てた。だが勝ちは勝ちだこのままいかせてもらうぜ」
とルーミアに背を向けた直後
「ちょっとまった!」
その幼い声に反応して背を向けたら
「人間ごときがよくもルーミアを。私が相手よ!」
そこには東方クラスタではバカルテットの一人と称されるミスティア・ローレライが立っていた。
「えー」
俺は露骨に嫌な顔をする。結構霊力消費が半端ない(ような気がする)のに連戦はきついんだけど。
まるで某2D格闘ゲームの餓えた狼の二作目並みの挑戦者デモのスピード感だ。
「なによ。その物凄く嫌そうな顔は」
「だってさ、空気読まないような連戦勘弁してほしいんだけど。お前の相手する霊力は多分ない」
「問答無用。ルーミアの仇!」
「あたしは死んでないぞー」
小声でルーミアが突っ込む。
「待てぃ!」
その直後竹の天辺から凛々しい少女の声がする。
「仇討と称して消耗しきった人間にしかける。その行いを恥と知れ!人、それを外道という。」
えっ・・・とどう見てもモンペの少女ですけどもう彼女しかいないよね。
「だっ、誰だ!」
おいおいお前ら顔見知りだよね。なにこれ・・・ニコニコでも某スーパーロボット大戦でもこのネタ見たことあるんですが、みすちー変なところで空気読み過ぎだろう。
「貴様に名乗る名前などはない!」
そういいつつ背中から鳳凰の翼を出す。このモンペの少女は一体誰なんだ!と俺もモノローグで空気を読みつつ次回へ。
なお同人即売会で(コピー)本を出した時期は15年2月の「月の宴」で掲載した分の半分です。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ