アドビが「2ケタ成長」を続けられる根本理由

変革を恐れないからこそ進化がある

「デジタルマーケティングの分野ではアドビがリーダーになっている」と話すシャンタヌ・ナラヤンCEO(写真:大沢 誠)
すさまじい勢いでビジネス環境が変化する中、企業もつねに変革することが求められている。が、多くは必要に迫られるまで動き出さないし、今あるビジネスをなんとか現状維持できればと十分だと考えている。下手に変化を起こそうとすれば従業員が混乱するかもしれないし、失敗に終わるかもしれないからだ。
が、米アドビシステムズは違った。「フォトショップ」や「イラストレーター」など画像加工ソフトで知られる同社が、こうしたソフトのパッケージ販売をやめて、すべてのソフトをクラウドに移行し、サブスクリプション(定額配信)型のビジネスを始めると発表したのは2009年。同時期にマーケティング企業を買収して、未知の分野にも乗り出した。
移行直後には収益は大きく落ち込んだが、その後の業績は好調そのものだ。9月末に発表した2016年第3四半期(1~9月)の売上高は前年同期比18%増、営業利益にいたっては60%以上伸びている。株価を見ても、きれいな右肩上がりが続く。企業が変わる秘訣は何なのか。変革期を率いてきたシャンタヌ・ナラヤンCEOに聞いた。

顧客体験がより重要になっている

――近年、顧客のニーズはどのように変化していますか。

コンテンツにはライフサイクルがある。それは、創造から始まって管理、分析、そしてマネタイズとあるわけだが、多くの顧客がこれを一貫してできるようになることを求めている。多くの業界で「ディスラプション(破壊)」が起こっており、これに対応するためには顧客体験を高めなければならないと感じているからで、それに対応するには(コンテンツ制作とマーケティングに)一貫性が必要となってきている。

顧客がアドビを信頼する理由のひとつは、われわれ自身がデジタルマーケティングを通じて、自らのビジネスを変革してきたことがあるだろう。顧客はアドビがどうやって変革したのかを知りたいと考えているし、われわれも各企業がどういった課題に直面しているのかを理解しながら、イノベーションを続けられるように支援したいと考えている。

――具体的には、どういったニーズが出ているのですか。

どの企業も顧客体験をよりよくしたいと考えている。そのうえでの課題はいくつもある。たとえば、その顧客体験は説得力があるか、パーソナル化されているか、そして使い勝手がいいか。また、どこでも、何を通じてでも、同じ体験をできるかどうか。企業にとっての課題はまず、同じような体験を、チャネルや方法にかかわらず、できるようにすることだろう。

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