国連安保理 北朝鮮への新たな制裁決議採択 輸入石炭制限など

国連安保理 北朝鮮への新たな制裁決議採択 輸入石炭制限など
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核実験を強行した北朝鮮に対する追加制裁を協議してきた国連の安全保障理事会は、国連の加盟国が北朝鮮から輸入する石炭の量を現在の半分以下に制限することなどを盛り込んだ新たな制裁決議を全会一致で採択しました。
北朝鮮がことし9月に5回目の核実験を強行したことを受けて、安保理では3か月近くにわたってアメリカと中国が中心となり北朝鮮に対する追加制裁について協議を続けてきましたが、30日午前、日本時間の30日夜遅く、新たな制裁決議が全会一致で採択されました。

決議では、北朝鮮が主に中国に輸出し収入を得てきた石炭について、国連の加盟国が北朝鮮からの年間の輸入量を750万トン以下か、輸入額で4億ドル以下のいずれか低い方に制限するとしています。また銀や銅、ニッケルなどの鉱物については、北朝鮮からの輸入を全面的に禁止するとしています。

アメリカのパワー国連大使は記者団に対し、「安保理が近年決定したいかなる制裁よりも厳しいものだ」と決議の意義を強調し、日本の別所国連大使も「今回の合意はきわめて重要だ。すべての国が決議を実行することを望む」と述べ、各国に制裁を着実に実施するよう呼びかけました。

国連の外交筋によりますと、一連の制裁が実施されれば、北朝鮮の年間の外貨収入は全体の4分の1近くにあたる8億ドル減ると見られていて、今後、国際社会が結束して北朝鮮の核やミサイルの開発を封じ込めることができるのか注目されます。

新たな決議の内容は

新たな決議は、北朝鮮がことし9月に再び核実験を強行し安保理決議を無視し続けていることを厳しく非難したうえで、さまざまな追加制裁を盛り込んでいます。

【企業活動】
決議は、北朝鮮と取り引きのある外国企業に対し、北朝鮮国内に所有する事務所や銀行口座をすべて閉鎖することや、こうした企業に対する金融支援を禁止することが定められています。

【北朝鮮外交官】
また、北朝鮮の外交官が不正な活動を通じて外貨を獲得しているとして、各国に対して自国で活動する北朝鮮の外交官の数を減らし、銀行口座を1人1口座に限ることを定めています。

【天然資源】
一方、北朝鮮が中国に輸出してばく大な収入を得ているとされる石炭について、これまでの制裁決議では、市民生活の必要性などの例外規定があったため、十分守られていないという指摘がありました。このため今回は例外規定を撤廃し、北朝鮮からの年間輸入量を750万トン以下か輸入額で4億ドル以下のいずれか低いほうに制限すると定めていて、北朝鮮の年間の収入を7億ドル減らす効果があると見られています。また、前回の決議で金やチタン、レアアースなどの輸入が禁止されたのに続いて、今回は、銅、ニッケル、銀、亜鉛の輸入も禁止し北朝鮮の年間の収入をさらに1億ドル減らす効果があると見られています。さらに、北朝鮮が外貨収入の1つとしてアフリカ諸国などで建造してきた銅像についても、各国が輸入することを新たに禁じています。

【派遣労働者】
そして今回初めて、北朝鮮が外貨を獲得するために海外に労働者を派遣していることに懸念を示し、加盟国に対して警戒を呼びかけています。

安倍首相「採択を高く評価する」

安倍総理大臣は、国連の安全保障理事会が北朝鮮に対する新たな制裁決議を採択したことを受けて、コメントを出しました。

コメントは、「北朝鮮に対する制裁措置を格段に強化する国連安保理決議が全会一致で採択されたことを高く評価する。北朝鮮の核実験および弾道ミサイルの発射は、許し難い暴挙であり、断じて容認できない。9月の核実験は、相次ぐ弾道ミサイル発射と相まって、日本を含む国際社会全体にとって新たな段階の脅威であり、今回採択された決議は、この新たな段階の脅威に対して、国際社会が、これまでと全く異なる新たな次元の厳しい対応を取ることを国際社会の意志として明確に示したものだ」としています。
そのうえで、「日本政府は、北朝鮮に対し、国際社会の声をしんしに受け止め、採択された決議をはじめとする一連の安保理決議を誠実かつ完全に実施し、更なる核実験や弾道ミサイル発射などの挑発行動を行わないよう、強く要求する。特に拉致問題については、『対話と圧力』、『行動対行動』の原則を貫き、1日も早いすべての拉致被害者の帰国に向け、全力を尽くしていく」としています。

各国の反応は

アメリカ、ホワイトハウスのアーネスト報道官は記者会見で、「アメリカや日本、韓国だけでなく世界中の国々の決意を明確に示すものだ」と評価しました。そのうえで「北朝鮮がこれまで経験したことがない方法で圧力を強めることになる。制裁で北朝鮮が態度を変えることを期待している」と述べました。アメリカ政府は国連安保理決議に基づく制裁に加え、独自の措置として、外貨稼ぎのために海外に労働者を派遣している北朝鮮の企業に制裁を科す方針です。

韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相は声明を発表し、「軍事面以外の制裁としては国連の歴史の中で最も強力だ」と評価したうえで、「非核化の決断を下さなければ外交的にさらに孤立するだけでなく、国連加盟国としての権利も停止されることになる」と北朝鮮に強く警告しました。
そのうえで、日本やアメリカと同様、韓国としても独自の追加制裁を速やかにまとめる考えを重ねて示し、北朝鮮への圧力をさらに強める姿勢を強調しました。

北朝鮮の強い反発は必至

北朝鮮はこれまでのところ公式の反応を出していませんが、強く反発するのは必至です。北朝鮮はことしに入って、10月まで毎月、核実験や弾道ミサイル発射などを繰り返してきました。先月は目立った動きが見られず、アメリカのトランプ次期政権の行方や、国政の混乱が続く韓国の情勢を見極めようとしたためだという見方が出ていますが、制裁決議への反発を口実にして、今後再び、軍事的な挑発に出るおそれがあります。

さらに北朝鮮は今月、17日でキム・ジョンイル(金正日)総書記の死去から5年、30日でキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の軍最高司令官就任から5年、といった節目が続きます。このため、北朝鮮がキム委員長の権威づけや国威発揚を図るうえでも、事実上の長距離弾道ミサイルの発射などを強行する可能性があり、関係国は警戒と監視を強めています。