「君の名は。」（新海誠監督）が空前のヒットとなる中、毎週金曜日掲載の映画評「シネマパラダイス」の評者を務める映画評論家４人が選ぶとっておきの「大人のアニメ」。後編の２人が選んだのは、やはりあの映画だった。
折田千鶴子氏、おかむら良氏ともに選んだのは１２日に公開され、話題を集めている「この世界の片隅に」（片渕須直監督）だ。
折田氏は「非常に衝撃を受けました。戦時下の人々の生活の空気が、肌感覚として伝わってきてリアルに感じられ、と同時にどこかふわふわもしていて、ずっぽり魅了されました。人々の気持ちを慮らせる作りになっている潔さとか、刺激的ながら、温もりに満ちている。日本人には絶対に見てほしい映画」と推す。
おかむら氏も「秀逸」とした上で「原作の良さをそのままアニメに生かしている。着物をもんぺに縫い直し、野草を料理する日常を通し、戦争の理不尽さを浮かび上がらせているのがすごい」。
このほか、折田氏が「五感が研ぎ澄まされるような衝撃」と語るのはイスラエル映画の「戦場でワルツを」（アリ・フォルマン監督）。監督が自らの戦争体験を描き、２００９年のアカデミー賞外国語映画賞に選ばれたドキュメンタリーアニメ。
旧友と再会を果たしたアリは、会話の途中でふと自分の記憶が一時期だけ抜け落ちていることに気付き、戦友たちのもとを訪れ、自分の記憶をたどっていくが…。