4、ある閉ざされた雪の山荘で
5、すべてがFになる THE PERFECT INSIDER
理系ミステリとして有名な第1作!
僕が好きなミステリー小説は森博嗣の「すべてがFになる」です。大学教授の犀川とその生徒の西之園が天才として名高い真賀田四季の研究所を訪れ、事件に巻き込まれていくという話です。最近では、アニメやドラマ化もされ、その映像を見たことがある方も多いと思います。理系ミステリとして、随所に理系にはたまらない数学や工学の話が出てきて、一風変わった作品になっています。捉えどころのない文章で、普通のミステリーに飽きた、という方におすすめの作品です。
6、人形はなぜ殺される
8、向日葵の咲かない夏
9、殺しの双曲線
11、仮面山荘殺人事件
12、密室殺人ゲーム王手飛車取り
15、イニシエーション・ラブ
イニシエーションラブは青春小説である
イニシエーションラブという小説は青春小説です。男女の付き合いの様子を詳細に描写した小説で主人公もどこか親近感がわくようなキャラなので、気づくと読書に没頭してしまうほど面白いです。時代設定が少し古いため若い人は想像しずらいかもしれませんが、固定電話で恋人とやりとりする描写などもありなんとも愛おしく感じます。ヒロインもとても可愛く、話にのめり込んでいくとこの二人は末永く幸せになってほしいと応援する気持ちが芽生えるほどです。
イニシエーションラブはミステリーである
イニシエーションラブが紹介されるときよく目にするもの「最後の1行でどんでん返しが起こる」という広告です。途中まで読んでいくところでは、その恋愛物語の描写が素晴らしくその広告自体忘れてしまうほどかもしれません。この小説は大きく2つの章に分かれています。この2つに分かれているということが自然に作られているので違和感はないですが、この構造は2度目3度目と読んでみるとその意味が分かるようになっています。1回目に読んだ時の感想と2回目に読んだ時の感想がここまで変わる小説は他にない。
結論、イニシエーションラブとは
イニシエーションラブはこのように青春小説でありながら、ミステリー小説でもあるという珍しい作品です。特に1回目よんだ時は普通の青春小説だったのに、2回目読み始めるとなんとミステリー小説に変わります。そのくらいの衝撃があります。「どんでん返し」があるということで初めから疑った読み方をすると、この作品の面白さが削られてしまうかもしれません。先入観を持たず期待しすぎることなく、肩の力を抜いてリラックスして読むのが一番良いと言えます。
17、連続殺人鬼 カエル男
20、七回死んだ男
西澤保彦「七回死んだ男」がスゴ過ぎる
SFでありながらミステリー
基本的にミステリーとSFは相容れないモノということが出来ます。SF設定だと本当にもう何でもアリになってしまうので普通に考えるとミステリーとして物語が成立することはないのですが、西澤さんのスゴイ所はミステリーとSFを見事に融合してしまった所もあります。「7回死んだ男」は反復落し穴と言う不思議な時間軸を生きる少年探偵が主人公のミステリーで何度も時間が巻き戻り殺人を阻止しようと孤立奮闘する物語です。ありえない設定ですが、スンナリと設定を飲み込み物語を楽しむことが出来るのは作者の力量と言えます。
キャラクターの魅力
主人公の久太郎は16歳の高校生でありながら人とは異なる時間軸で生きていて不意に時間が反復するという特異体質です。同じ1日を7回繰り返し1回目から6回目まではリセットされ7回目が改訂版として人々の記憶に残るという設定です。自分の意思ではどうしようもない体質ゆえに実年齢は30歳ほどで思考も見た目も老けているというのが面白いと言えます。いろいろ達観している部分もあり、そうかと思うと年相応な部分もありそのアンバランスな所が魅力と言えます。
後味がいいミステリー
多くのミステリーは殺人事件が起こります。名探偵はその後活躍するので最後に犯人が分かり事件を解決してもどこか後味の悪さが残るものです。最近は日常の不思議を扱ったライト系のミステリーも増えてきましたがそれだとどうしても迫力に欠ける部分があります。ですがこの7回死んだ男は殺人事件は起こりますが、主人公の特異体質故に非常に後味のいいミステリーと言うことが出来ます。途中はハラハラドキドキしますがラストはスッキリ平和的解決なので楽しく読めます。
25、世界の終わり、あるいは始まり
新本格の異端児・歌野昌午が放つ、マルチエンド型ミステリー
ゲームの世界ではマルチエンディングというのは特に珍しくはないのですが。
基本的にはひとつの筋にそって結末まで進んでいく小説の世界では珍しいものです。
過去にゲームブックが流行ったことがありましたが、そういう選択肢を選ぶような形式であれば納得ですが、この小説はあくまで一本の筋で物語を読んでいきます。
その中であらゆる可能性を追っていくうち、あらゆるバッドエンドが思い浮かび……。
ぞっとする妄想の展開と、そこから一旦現実に戻って事件を追って行き、また妄想に気がつけば入っている。
その繰り返しを経てやがて見えてくる真実は、きっとあなたをあっと驚かせることでしょう。
丁寧に描かれる、事件後の犯人の家族がどのような苦境に陥るか……
ミステリー小説を読んでいると、いつも物足りなく思うことがあります。
それは ”これほど大きな事件を起こした犯人は、その後どうなるのか” ということです。
この小説はそんな不満に真っ向から答えてくれました。
恐らく神戸で起こった少年事件の家族をモチーフに描かれたものだと思いますが、事件を起こした少年と、その家族が世間やマスコミからどのようにバッシングを受け、どのようにそこから逃れていくかをリアルに丁寧に描いています。
そのくだりだけでもこの本を読む価値があると言えます。
シリアスな中に、クスッと笑えるユーモアも
もしも自分の息子が殺人犯だったら?!
それに悩む親の苦悩がこの小説の基調にあります。
そんな主人公の前に同じ年齢の息子をもつ会社の同僚は、こんな悩みをこぼします。
「最近息子の部屋からハードなエロ本が見つかったんだよ。どうしたらいいだろう」
かたや息子のエロ本を発見して悩んでおり、その悩みを相談した相手は自分の息子が殺人犯かも知れないということに悩んでいる。
エロ本を発見した親はそれはそれで深刻に悩んでいるのですが、それがクスリと笑えるくらい軽い悩みに見えてくる構図は、なかなかのユーモアと言えます。
ミステリーの枠を超えた、意欲的な実験小説ともとれる作品ですが、ミステリーを読み飽きた方や、刺激的な小説を求める方にはおすすめできる作品です。
30、ロートレック荘事件
31、開かせていただき光栄です
35、告白
圧倒的な序盤中盤
学校の先生が教室のみんなの前で話し始めることから物語がスタートし、そこからだんだんと不穏な空気に……。そしてそこで語られるのは、彼女自身の子供の死に関する重大な事実。「このクラスの中に犯人がいる」
そして、そのために彼女はある復讐の種をまいていたのでした。これは最初の数十ページのお話ですが、初っ端からものすごい勢いで物語に引き込まれます。そして、ページが進むにつれ、様々なことが明らかに……。
複雑に絡み合う人間関係
湊かなえさんの作品は、綿密なストーリー構成でページが進むにつれほんの少しずつ明らかになっていく事実と、その背後にある人間関係が一番の魅力だと思います。序盤から中盤にかけては特に、その内容が非常に深く、複雑でありながらわかりやすく、そして一気に読めてしまうというミステリーの最高傑作だと思います。ただ反面中盤以降の展開は普通に面白いのですが、序盤と比べると若干勢いが落ち着いた感じがしてしまうかもしれません。
最後の最後に……
サイコパスともいえる異常な性質を持った男の子、先生の嘘に振り回された少年。明るく理想に向かって突き進む教師、その誰もが魅力的で、そして彼らの織り成す物語は最後に一つの形となって収束に向かいます。
しかし、それは仕掛けた本人にとっての最悪の形で終わりを迎えてしまいます。それを因果応報と呼ぶべきなのか、それとも悲しい運命のいたずらとも言うべきことなのかはわかりません。それでも、そのどんでん返しは一見の価値がある作品です。
39、迷路館の殺人
45、容疑者Xの献身
悲しい動機に心揺さぶられる
隣人の殺人に加担・・・序盤からドラマチックな展開
『容疑者Xの献身』は日本を代表するミステリー作品と言っても過言ではない、作家、東野圭吾さんの代表作です。ある日、発作的に殺人を犯してしまった花岡母娘。緊張が走る殺人現場に現れた救世主は隣の部屋に住む中年男、湯川。教師であり研究者でもあった湯川は、母娘の殺人の隠ぺいに協力すると言い出します。平凡な生活を送っていた花岡母娘と湯川の描写が一変し、思わぬ殺人事件の発生で、序盤からの急展開に、読者はぐいぐい引き込まれていきます。私が衝撃を受けたのは、殺人現場を隠そうとした花岡母娘に対し、冷静に状況を見抜いた湯川の態度。どこにでもいそうな冴えない中年男に見えた隣人の、ただならぬ観察眼が、事件の幕開けに相応しい緊張感をもたらしています。
前代未聞のトリックに、読者は騙される
この作品の面白さは、終盤までトリックが明かされないことは勿論、読者に推理する隙を与えない、構成の工夫にあります。
遺体が見つかり、警察からマークされる花岡母娘ですが、なぜか捜査が行き詰まります。怪しいと思われており、実際に殺人を犯しているのに決め手に欠ける。その状況が淡々と描かれます。湯川が仕組んだトリックに、読者も騙されてしまう。ミステリー小説の醍醐味とも言えるトリックの面白さです。
そして終盤に明かされる衝撃のトリックに、筆者は唖然とさせられました。まさに前代未聞、「そんなこと、思いつくの!?」と驚かされるトリックでした。これを一瞬で思いついた湯川というキャラクターの冷静ぶりに、またもやビックリ。ここまで来ると湯川が冴えないおじさんには思えなくなります。
美しくも悲しい動機に、涙するラスト。
なぜそこまでして湯川は花岡母娘をかばうのか?花岡母娘にも、読み手にも想像さえできなかった動機。冷静な湯川のキャラクターからは想像もできない秘めた想いが、読み手の感情を揺さぶります。この動機あってこその巧妙なトリックでもあります。この事件に至るまでの湯川の描写が、切ない。「そんなこと、本当にできるの?」と思わずにはいられないトリックですが、そこに説得力を持たせる東野圭吾さんの文章力に拍手を送らずにはいられません。罪を犯した花岡母娘と、湯川ですが、最後まで彼らを憎むことはできず、悲しい余韻を残したラストです。ミステリー小説でありながら、純文学のような美しさを兼ね揃えた作品。未読の方にはぜひお勧めしたい一冊です。
48、獄門島
49、盤上の敵
50、火車
「火車」を生み出した作者の作風、
宮部 みゆきといえば、時代物の好きな人にはNHKの大河「草燃える」でもお馴染みになりましたね。 そんな彼女はその後には女性のミステリー作家として不動の地位を確保しています。 テレビや映画にもなった「火車」をはじめ、「模倣犯」や「本所深川ふしぎ草紙」など現代物から江戸期の風俗を交えた作品には定評がありますね。 そう言えば彼女は東京深川の生まれでチャキチャキの江戸っ子でも有り、それに両親とも江戸っ子で根っからの職人らしいのです。 そんな事で職人の父親から、落語や講談の怪談噺(はなし)を聞かされ育ったといわれてます。 又、時代物も好きで特に一家で大河ドラマを観て、自分もファンになり、特に中学自分から小説らしいものを書くことに興味を持ったと言われていますし、又、現代物にも興味をもつようになり模倣犯や「火車」の名作を描くようになったのでしょう。
「火車」のあらすじと展開
犯人確保時に負った傷のために休職を余儀なくされていた本間俊介刑事は、そんな彼の元に亡き妻の千鶴子の親戚で、銀行員の栗坂和也が意外な事を頼み込むことになる。 其れは、突然の理由もなく失踪してしまった和也の婚約者である関根彰子という女性をを探し出して欲しいと頼み込むのである。 ところが彼の話によれば関根彰子という女性は何故か自己破産経験者であることが判ったのである。 勿論、当の本間刑事は本職の刑事ながらも休職中で警察手帳も持っていなかったので、雑誌記者と偽って捜査を開始することになる。 彰子の履歴書を見た本間は、その写真を見て彼女の余りの美貌に驚くのであるが、其の美しさの中に何処か清楚な雰囲気が漂っていた彼女であったが。 しかし、次に彰子の自己破産の原因を突き止めていくと、彼女ははOLとして会社勤めの傍らサイドワークとして水商売に身を挺していたことが判り而も、容貌の特徴は大きな八重歯だという。 本間は彼女の美貌、性格其れに素行からしても、夜の仕事には染まらないであろうし、どうも彼女の生き方が一致しないと考えていたのであったが・・。
「火車」を読んだ感想
元より休職中の刑事が遠縁の男に頼まれて行方不明になっている彼の婚約者の女性を捜すことになったのだが。 彼女は自らの意思で失踪したようであり、而も、完全に足取りを消し、自分の存在を消したのだが、彼女は何故そうしたのか、彼女は一体何者なのか・・?、謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていたのでした。 即ち、「火車」はカシャと読んでいるようですが、文字通り借金地獄による火の車のイメージャが沸々と湧いてくるのです。 此れは余りにも現代社会の特殊な金融社会を写し取っているミステリーなのです。 此のようなことで「火車」というミステリーは最後まで犯人が物語上に登場しないという稀有な小説でも有り、即ち、ミステリー的には極めて大胆な手法を使った空前の作品で、宮部みゆきらしい本領が此処に出ているのです。 其れに、ラストシーンに限って言えば、最早これ以上ないのではないかと思えるほど格好いい終わり方をしていて。最後の1行まで楽しめた稀有な傑作ともい言えるでしょう