最初に断っておきます。今日のウェッブログは長いですよ(普段の6.5倍の文字数があります)。心して読むように。昨日発売された歴史的名盤、GEEKSの1stCircleAlbum「PEDAGOGUE(パダゴグ)」を入手して聴きまくってくれているであろう全世界13兆人の皆様、まことにサンキューでございます。自信に満ち満ちた満面の気迫の表情で胸を張って、本作こそがGEEKSの最高傑作であると断ずるGEEKS一同の評価の信頼性の高さを、この「パダゴグ」を聴いた諸君ならば納得していただけることでございましょう。虚実入り乱れた狂乱の音符のパレードと緻密な計算式のごとき美しき旋律の競演にむせび泣いて下さいませ。さて、この後世に名を刻む歴史的名作を購入してくださった皆様に、ささやかなお礼も兼ねて、CD作品リリース毎発売日翌日ウェッブログ恒例となったセルフライナーノーツを載せておきます。今回も書いてて楽しかったです。内容は全て真実なのさ。まだ買って聴いてないヤツはここから先、絶対に読み進んではいけないぜ。絶対だぜ(ネタバレ有)。

※以下、エンドウ.が海外用に英文で書いたものをそのまま和訳したものとなります。原文は海外のどこかのサイトを探して下さい。

「PEDAGOGUE」
人類がこの世に生を受けて未だにしぶとく生き続けていることの意味や理由は、来年のクリスマスプレゼントの中身のように誰にもわからないことかも知れない(そもそもどちらも存在する保証も無い)。しかし「生きる目的」というものだけはこれ以上ないというくらい明確に君たちの目の前にそびえ立ち続けている。それはたったひとつ、シンプルでわかりやすく、無慈悲で合理的で、さらに何よりもエキサイティングな行動で、つまりは「学ぶ」ということに他ならない。人が生きる上で目的とすべきは、週末のNFL中継を待ちわびながらウィークデイを不満だらけに浪費することじゃない。「学ぶ」ことなんだ。人は生まれて、歩くことを学び、食べることを学び、言葉を学び、人の心を、他者との接し方を、数学を、歴史を、そしてボーイフレンドがいかにガキ臭くて、ガールフレンドがいかに退屈かを学び、金の意味を学び、地獄ってもんはまさにこの世のことであることを学び、何もかもがクソであることも学んで、生きる上で何が無駄で何が必要かをイヤというほど学ぶ。ただ厄介なのは、ほとんどの場合がそれらは独学で学ばれ、しばしば勘違いしたまま学んでしまう連中がいるってことだ。だから俺たちはこの「PEDAGOGUE(意味:教育者、やかましい先公、嫌われ教師)」を作って生徒たちに好き放題に愛の体罰を与えることにしたのさ!

2012年の終わりころ、エージェントのケツにその辺のダイムやダラーをたっぷりぶち込んでアルバム作りの大航海へと出向したって話は、3ヶ月前に前作「GRIMOIRE」を発表した時に書いたとおり。実はそのとき既に「パダゴグ」はその形を成していて、ヤツは獲物を狙う腹ペコのシロワシのような目つきで絶叫の産声を上げる瞬間を今か今かと待ち構えていたんだ。「グリモワ」と「パダゴグ」はまさしく兄弟であり、世界中の兄弟たちの全てがそうであるように、そっくりで、全然似てない上に、お互いを嫌い合って、仲が良い。兄「グリモワ」は呪いと救済と武装、そして生きることと死ぬことを、弟「パダゴグ」は戒めと粛清、そして墓場からの復活を掲げ、こうして1枚に収まるはずだった楽曲たちは二手に分かれ、このどうしようもなく腐敗した世界へ向けて、背中合わせに旅立った。なぜ2枚に分けたかって?そりゃあそこにあるのが1ドルよりも2ドルの方が嬉しいし、ガールフレンドも1人よりも2人いる方が便利ってもんだからさ。歴史的名盤も1枚よりも2枚あったほうが世界のためにイイに決まってる!

1.PEDAGOGUE CIRCLE
この曲のタイトルはつまり邪悪な教育者集団であるGEEKSそのものだ。闇に身を潜め世を嘆き、怪物的な力で愚か者どもに戒めと粛清をプレゼントするダークヒーロー達が、今夜も寝起きで面倒臭そうに寝床から這い出して出かける準備をしているような・・・そんなシーンを想像して3人でよってたかってあれこれ無茶で色とりどりの注文を添えてカオルに押し付け、その間に俺たちはスタジオのラウンジで、空が晴れていることと酒を飲めることと今日も地球は回っていることを祝って乾杯した。やがて夜が空を覆い隠し、つまむべきプリングルスも飲み干すべきハイネケンも尽きた頃、ふとスタジオの扉の向こうから子守唄のように聴こえてきた旋律に、俺たち3人は面倒臭そうにソファーから立ち上がり演奏する準備を始めていたんだ。流石マッドガッサーの生まれ変わり、今まさに俺たちが注文したとおりのシーンじゃないか。そう、ここからが幕開けなのさ!

2.NOBLE DARK
ハートマン軍曹のように目を血走らせて自由とアイデンティティを叫ぶやつほど実は盲目で、気がつくとスタジアムの巨大なマスゲームの小さな部品に成り下がっているなんてまさに不幸なジョークであるけれど、そんな連中がサハラの砂粒のように敷き詰められたこの世界においては、偽りの巧みな舌と耳障りがいいだけの声で大衆を煽動する者こそが輝かしい太陽であり、その有害な光を見つめすぎた代償にモグラのようにすっかり視力を失った憐れな愚者たちが、今日もまたその声を頼りにゾンビのようにふらふらと並んで歩いている。GEEKSがこの世に存在し始めた頃から途切れる事無く垂れ流しているスローガンは「見抜け」ということ。「ロックはリフでできている」なんて常識はヒエログリフにも書いてあるなんて誰かが噂してるが、イントロから繰り返されるこのリフを思いついた時には見抜いていたよ。盲目の奴隷どもの世界から、君たちを助け出すのはGEEKSしかいないってね!

3.REAPER REAPER
「命は何よりも尊い」なんて言うけれど、ディナーやギター、ベッド、カクテル、ドーナッツみたいに、どこを見渡しても命よりも大切なものの方が多いのが現実で、命よりも尊いものを探すのはジャージーデビルを見つけるくらい困難な挑戦だ。おまけにどいつもこいつも「本当に命を大切だと思っているなら、どうしてそんな無駄で退屈な時間を過ごしているんだい?」と問いかけたくなるような時間ばかり過ごしている。言葉だけを認識していて、意味は身にしみていない魔法の言葉の良い例だよ(似たようなものに「君ってとても綺麗だね」、「Oh my God.」などがある)。そんなメッセージを込めてこのスピーディーなナンバーは、とてもスピーディーに作られたんだが、1箇所だけなかなかスピーディーに行かなかった部分がある。それはバンドインで聴ける俺の思慮深いひと言さ。50通りの言葉を試したんだが、結局パズルのピースのようにしっくりハマったのは「WA!」だったってわけだ。

4.MUNCHAUSEN JOURNEY
2010年8月、俺たちGEEKSは渋谷のストリートで1000人の聴衆と7台のパトカーに囲まれた。どうやら俺たちがデモ音源を無料配布して、さらに隣のやつの耳にキスするぐらい顔を近づけないと会話できないような、ちょっぴり大きな音を出して交差点で演奏したのが気に入らなかったらしい。警察はいつだって大きな音と大きな態度で絡んでくるけれど、自分たちが同じ事をされるのはお気に召さなかったようだ。そのとき配られたファニーな円盤に収録されていたのがこの曲。俺たちはこの曲が大のお気に入りでたびたびショウでも演奏していたけれど、そういえば本格的にレコーディングするのをすっかり忘れていたってことに気付いた時には西暦がクレイジーなことになってた。俺たちはこの曲を収録したいがために「PEDAGOGUE」に「墓場からの復活」というテーマを持って来たと言っても嘘にはならないだろう。自分が何者であるかなんて、それは今から決めること。今日も、明日も、その先もだ。

5.CARCASS CIRCUS
珍しく歌いたいメロディが先にあって、それを彩るためにわざわざテラスでお喋りに夢中になっていたGEEKSどものケツを蹴り上げ、鞭でひっぱたきながら音符を皿の上に盛り付けていったのがこの曲。古いフィルムのようなイントロがとっても気に入っているよ。この曲にはバンジョーの音色を添えてやろうと思っていたんだけれど、俺はバンジョーを弾いたことも無ければ、一本も持っていないことに気づいちまった(「PEDAGOGUE」が出来上がったあとで古道具屋で半死状態のバンジョーを見つけて買ってきたよ)。かわりにカオルを更に鞭でひっぱたいてありったけの鍵盤とシンセサイザーとクラシカルインストゥルメンツをぶちこんで、逆に俺は極力ギターの音を減らしフレーズも簡単にするように心がけた。なぜならそうすることによってステージでこの曲を演奏する時に俺が楽だからだ。そして俺が楽になるということは、俺は思う存分この曲に没頭して陶酔して溺れることができってことだ!

6.WENDY.13
初めてGEEKSとして全員で楽曲を作ってみようと挑戦した結果に生まれたのがこの曲。2008年のはじめ頃に出来上がった時点でのこの曲は、大嫌いな要素と大好きな要素が共存する非常に厄介な存在だった。あれから5年、当時から一切の成長をやめていた俺たちは久し振りにこの厄介者のことを思い出し、大幅な外科手術をすることで蘇らせることができるんじゃあないかって話に今更いきついた(相当酔っていたんだろう)。すぐに構成をぶちこわし、リズムの解釈を変更し、歌詞の向きを270度ガラリと方向転換して、最後にBPMをたっぷりと上乗せして、永遠に思えた難題は見事解き明かされたよ。「大人になんてなりたくない!」なんてロマンチックなたわごとばかりで、ネバーランドから出たがらずに逃げ惑うジャンキーどものこめかみに、この裁きの鉄槌のようなサウンドをお見舞いしてやりたいね。なぜならネバーランドの住人は俺たちGEEKSだけで充分だからね。

7.GENIUS MONSTER
ルーズでルーツなロックサウンドってものはチョコレートのように飽きることの無い永遠の美食であると信じている俺たちは、またしてもそんなテーマを追い求めてスタジオに入った。これは輝かしく偉大なマンネリズムを目指して日夜悪と闘い続けるGEEKSにとってはもはや心地よいルーティンワークみたいなものであり、自宅のソファなんかよりもよっぽど居心地のいいものなんだ。そんな楽園に怒りと不満と呪いと嘆きのスパイスをいつものようにたっぷりと・・・いや、今回はそれらの感情を表面に出すのはやめようじゃないか。なんてったって「GURIMOIRE」で散々表に出したばかりだからね。この曲も、他の「PEDAGOGUE」のどの曲も、俺たちGEEKSの陳情であり、賛美歌であり、レクイエムであって、決意表明でもあり、慰めでもある。この曲は特に優しい曲だと俺は信じているよ。俺たちは常に攻撃的ってわけじゃあないんだぜ?なにしろ攻撃するにはエネルギーを消費する。そのエネルギー補給には大量のビールが要るってミツがうるさいからな!

8.WEREWOLF HYMN
誰にだって自分に対する試練と挑戦を自ら課してそれを克服したり乗り越えたりしてみたくなるような馬鹿げたマゾヒスティックな衝動を抱くときがあって、GEEKSにとってそれは今年の春頃であり、そのときの自分たちで用意した愚かなハードルのひとつがこのナンバーのイントロだった。まるで「それじゃあ・・・」とクイズ問題を出すように、その場で悪ふざけのように思いついた奇妙なフレーズを3人に示し、誰が最初にそれを理解し、記憶し、弾きこなすかを競い合って、結局テクニカルな部分よりも理解や記憶が追いつかなくて4人で苦しみのたうち回って喜んでた。そんなキケンな遊びを繰り返した結果、こんなにもアッパーでゴキゲンなナンバーを作り出すことがでたんだから、俺たちのスイサイダルな志向もあながち間違っちゃいないことが証明できたってことだろう。紳士淑女の諸君も、なにか思い悩むことがあったらこのイントロを演奏してみて欲しい。このフレーズよりも悩ましい事態なんてこの社会にあるはずもないのだから。

9.BANDAGE SYNDROME
2007年の夏から秋にかけて、俺はまさに絶望的だった。朝起きてはイヤフォンをつけて10kmのジョギングをしてるだけの毎日だった。何にも縛られない自由な日々なのに、まるで囚人のような気分だったよ。その時に「虹色の電流」という曲を作り、同時にこの曲の原型となった「月光レジスト」を作ったんだ。そして「月光レジスト」と呼ばれた名曲はステージで2回ほど演奏されただけでなぜか永遠の眠りについてしまった(その理由はケネディ暗殺の真相と同じレベルの謎だ)。しかしその別れをやすやすと受け入れるGEEKSじゃあない。俺たちは6年の歳月をかけて死者復活の秘法を追い求め世界中を旅し、今年ついにそれを手に入れたんだ(6年のうち71ヶ月はひたすら別のことに意識を集中し、そして俺たちにとっての世界とは北はセンダイから西はヒロシマまでのことだ)。この曲にはまさに俺が当時思い描いていたまだ見ぬ新バンド「GEEKS」のイメージが凝縮されていた。そんな曲が今も違和感無く溶け込めるってことは、俺の予知能力はなかなかの的中率だったな。この曲の輝かしい未来が見えるよ!

10.WALPURGIS NIGHT
この世のありとあらゆるエンターテイメントの絶対的ルールブックには必ずハッピーエンドが約束されていなくてはならないと信じている俺たちだから、この一連のプロジェクトのエンディングは当然ハッピーなものにしようと決意していた。その決意はダチのガールフレンドが焼いたクソ不味いミートパイのように固くタイトなもので、それを脅かすものなんて何ひとつなかったし、全ての障害は乗り越えたあとだった。願わくばこの「PEDAGOGUE」を聴いてくれた全ての奇人変人どもに、現時点でGEEKSが提供できる最高の祝福と少しのお説教と、ほんの少しの愛をプレゼントしたい、そんな意味を込めてこの曲を作ったよ。危険や偏見を恐れず、夜な夜な人目をかいくぐり、光に目が眩んだ盲目の奴隷の世界から抜け出して、誰も踏み入れない森の奥で繰り広げられる俺たちのWALPURGIS NIGHTに集まった物好きな紳士淑女の諸君に、必ずやハッピーエンドが訪れるように。そして何度だって再会できるように。今宵こそが、全てのスタートなんだ。お前らのハッピーエンドはGEEKSが約束しよう!

以上が俺の主観が語る「PEDAGOGUE」のほんの一部分の素顔だ。近作のその全容は、音を聴きこみ、CDパッケージの隅々を睨みつけ、ブックレットを熟読し、このセルフライナーノーツで混乱し、最終的に諸君らの賢い頭脳で情報を補って推測してくれたらいいだろう。どの楽曲の主人公も君だし、もうこの作品は君の人生の所有物だからね。まったく不幸なことにこの絶望的な世界は少しも変わりなく健在で、決して悪い夢のように冷めてくれたりもしないけれど、それでも諸君らの明晰な耳と頭脳が健在だからこそGEEKSはそのサウンドを「音楽」として発信することができる。GEEKSのエネルギーの源は君たちの存在だ。だから君たちがこの先遠くない未来でハッピーエンドへ到達するための道標がGEEKSの「音楽」だったとしたら、それは本当に俺たちにとってこの上なく幸福な出来事だろう。そんなわけでこの「PEDAGOGUE」を親愛なる君たちへ。俺たちが日本のGEEKSだ。今後ともどうぞよろしく。

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