退位 有識者会議 専門家のヒアリング終了

退位 有識者会議 専門家のヒアリング終了
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天皇陛下の退位などを検討する政府の有識者会議は、30日法制度に詳しい大学教授など5人からヒアリングを行いました。
ヒアリングのあと大学教授らは、退位の容認は皇室制度を脅かすなどとして反対の考えの一方、高齢化社会の到来に伴い例外的に譲位を容認すべきだなどといった考えを示しました。
天皇陛下の退位などを検討する政府の有識者会議は30日午前、総理大臣官邸で3回目となる専門家からのヒアリングを行い、憲法など法制度に詳しい大学教授など5人から個別に意見を聞きました。

このうち、最初に意見を聞かれた八木秀次・麗澤大学教授はヒアリングの後、記者団に対し、「自由意思による退位の容認は次の世代の即位拒否や短期間での退位を容認することになり皇室制度の存立を脅かす」と述べました。

そのうえで、八木氏は、「陛下のご意向を受けて政府が動くことになれば憲法に抵触するし、退位を強行すれば憲法上問題のある退位となり次の天皇の即位にも問題が生じる」と述べ、退位に反対の考えを示しました。

また百地章・国士舘大学大学院客員教授は、「超高齢化社会の到来に伴って例外的にご譲位を認めることはあってもいい。制度としては、皇室典範の中に例外的な譲位を認める旨の規定を置いて、それを元に特別措置法を作る方法が憲法2条の趣旨にも反しないし望ましい」と述べ、特別措置法の制定で例外的に譲位を容認すべきだなどといった考えを示しました。

有識者会議は、30日の会合で予定していた専門家16人からのヒアリングを終え、次回の会合からは論点整理の取りまとめに向けた議論が行われる見通しです。

「天皇制度を決定的に毀損する懸念ある」

八木秀次・麗澤大学教授は、総理大臣官邸で記者団に対し、「退位の容認は天皇制度を決定的に毀損する懸念があり反対だ。自由意思による退位の容認は次の世代の即位拒否や短期間での退位を容認することになり皇室制度の存立を脅かす」と指摘しました。
そのうえで、八木氏は、「特例法であろうが、皇室典範の改正であろうが、立法としてかなり無理筋であり、天皇陛下のご意向を受けて政府が動くことになれば憲法に抵触する。退位を強行すれば、憲法上問題のある退位となり、次の天皇の即位にも問題が生じる」と述べました。
そして八木氏は、「憲法には、国事行為の臨時代行と摂政の制度が明記されており、もっとも現実的なのが国事行為の臨時代行だ。要件に『高齢』という部分を入れて少し緩和し、国事行為の臨時代行を運用すれば、天皇陛下がご高齢である中で、かなりのご負担は軽減できる」と述べました。

「特別措置法で退位容認が望ましい」

百地章・国士舘大学大学院客員教授は、「超高齢化社会の到来に伴って例外的にご譲位を認めることはあってもいい。制度としては、皇室典範の中に例外的な譲位を認める旨の規定を置いて、それを元に特別措置法を作る方法が憲法2条の趣旨にも反しないし望ましい」と述べました。
そのうえで、百地氏は、特別措置法の制定が望ましいとする理由について、「皇室典範の本則の改正となると、譲位規定を置くにしても関連するさまざまな諸規定すべてに目を通さなくてはならず時間がかかる」などと述べました。
また百地氏は、天皇陛下が退位された後のご活動について、「象徴の二重性や国民統合の象徴が事実上、分裂する事態を避ける必要があるので、国事行為はもちろんできないし、公的行為も理論的にはできない」と述べました。

「皇室典範の改正で退位できるように」

大石眞・京都大学大学院教授は、「高齢社会を迎えた今日、(こんにち)天皇の終身在位制は広範囲にわたる公務の遂行とは両立しがたい状況に至っており退位を認めるべきである」とする意見書を提出しました。

また意見書には、「退位は、どの天皇にも適用できる恒久的なものに制度改正すべきだ。特例的な立法措置で対応するという議論もあるが、高齢を理由とする職務不能という事態は今後も十分に起こりうるから、そのつど特例を設けるのは妥当ではない」などとして、皇室典範の改正で退位ができるようにすべきだという考えが明記されています。

官房長官「議論を見守る」

菅官房長官は午前の記者会見で、「ヒアリングをきょう終えたあと、有識者が議論するので、政府としてはそのことを見守っていくことが大事だ。有識者会議の議論が一定の段階に至った時点で、与野党も交えた議論も考えていきたい。具体的なやり方はまだ何も決まっていないが、例えば、衆参両院の議長・副議長と相談しながら進めることも1つの考え方だ」と述べました。