【高橋信之コラム】
ファンによって描かれた映画の魅力をまとめたレポートマンガ【拡大】
たったの60館ほどの興行でスタートした「地味なアニメ映画」が、初登場で興行ランキング10位に現れた。
映画の動員や興収ランキングとは200館、300館規模での劇場公開をする大作同士の戦いだ。
だが『この世界の片隅に』は、さながら巨人に挑むドンキホーテのように、押し寄せる大国アメリカに竹やりや木製飛行機で挑んだ日本のように、決して勝ち目のない(と思われがちな)戦いを始めている。
いや作っている側は、そんな戦いに挑むことになるとは思ってなかったのだろう。こぢんまりと良い作品を作ろうという良心的なヒトたちなのだから。
その挑戦を起こしたのは、この映画を見た観客たちだ。
試写を観た僕は興奮気味にプロデューサーに尋ねた。「目標は興収20億円クリアですか?」と。
今年の日本映画界は、大変なヒットイヤーで『君の名は。』は200億円超え、『シン・ゴジラ』は80億円超え、あろうことか『ガルパン』も20億超えといううれしい成績が見えている。
だが関係者の読みは堅かった。
まずは目標3億円だねと聞き、正直驚き、そして落胆した。
これだけの傑作が、もっと多くの人に観られるべき作品が、そんなささやかな動員人数で良いわけがない。