ソーシャルレンディングとは、お金が必要な人や会社に、お金を貸したい個人がインターネット経由で直接貸し出す仕組みで、低金利時代に高い利回りの金利が得られる運用方法として人気です。
サービス提供を行うソーシャルレンディングの事業者は、融資を受けたい人とお金を融資(投資)したい人をインターネット上で結び付けます。ネットの力によって低コストで運営される金融市場を作っているイメージです。
そんなソーシャルレンディングの基本を解説して、高利回りが得られる仕組みやクラウドファンディングとの関係、海外事情などを初心者向け基礎知識をまとめます。
Contents
ソーシャルレンディングの仕組み
日本の間接金融(証券市場を介さずにお金の貸し借りする)市場は、これまで銀行や信用金庫などの金融機関が独占していました。
お金を借りたい企業は、銀行などの金融機関に融資を頼むしか方法が無かったのです。
上の図のようなイメージで、お金が余った人から銀行が集めて、それを必要な人に配っている形ですね。貸し借りの中心にあるのは銀行です。
インターネット上に金融市場でできた
しかし、インターネットと金融技術(フィンテック)の発達で状況が一変します。
インターネット上で直接貸し借りできるので、銀行が間に入らないお金の貸し借りを実現しました。
そもそも市場とは、消費者や需要家に物品やサービスが提示され、売買契約や利用契約が交わされる場のことです。
いまは消費者の多くが自宅に居ながらにして買い物でき、一般的な商品なら大抵翌日には手に入ります。これにはネットでサービスを提供する業者の企業努力や技術力の向上が貢献しています。
こうしたインターネットの核心は金融業界にも広がります。
金融業界で初めにインターネットが発達した情報社会の恩恵を受けたのは株式市場で、ネット証券ブームを作りました。ネット証券の登場で株式投資手数料は100分の一以下に下がり、多くの成功した個人投資家を生み出しました。
次いでFX業者が隆盛し、個人がアクセスしにくかった為替市場にも、自宅から簡単に参加できるようになっています。
情報技術の発達で、売り手と買い手が一箇所に集まらなくても需給バランスや相場が共有できる状況となり、インターネット上に金融市場ができたのです。
ネット上の金融市場はついに、資金の貸付市場にも誕生しました。
それがソーシャルレンデイング市場です。
インターネットを介したソーシャルレンディングでは、インターネット上の市場サイトを入り口とするプラットフォームで金銭の貸し借りが行われます。
ソーシャルレンディング事業者は、貸し手と借り手をマッチングして必要な契約を手続きし、資金を受け渡しするなどサービシングを行います。
中心にあるのは、あくまで金融市場であるわけです。
そのため、銀行のように資金を預かって、貸し付ける、という業務は行いません。
その代わり、銀行が行ってきた融資案件を調査すると必要が出てきています。
ソーシャルレンディングが高利回りなわけ
ソーシャルレンディングの特色は、従来の銀行が行っている貸付のように間接的な金融仲介とはちがい、借入ニーズに応じて直接、個人など広くお金の貸し手が集まってくることです。
これまで銀行が独占してきたため、貸し手は安い金利で銀行に預けて、それを銀行が高い金利で貸付てきたわけですが、この中抜きができるようになったのがソーシャルレンディングの功績ですね。
ソーシャルレンディングが高利回りなのは、銀行を介した借入や貸付に比べて、貸し手にも借り手にもメリットのある仕組みが構築されていることが大きいです。
銀行は給料の高い人員を多く抱え、維持費がかかる店舗、高額なIT投資を行っています。その銀行が間に入ることで、貸し手は安い金利しか受け取れず、借り手は高い金利で借りなくてはならなくなっていました。
短期的
ソーシャルレンディングの歴史
ソーシャルレンディングの草分けは英国のZopa 社であるといわれ、2005 年に営業開始されています。
ソーシャルレンディングは、借り手と貸し手をPerson to Person(またはPeer to Peer)で結び付ける意味でP2P レンディングとも呼ばれます。
草分けのZopa のビジネスモデルは正にPerson to Person のP2P です。
ソーシャルレンディングは借りたい人と貸したい人を一対一で結び付ける形で発展してきました。
一対多数の貸付に発展
しかし、インターネット上で人と人(又は企業)を結びつける方法は、なにも一対一とは限りません。
一人(一社)の借りたい人に対して、複数の貸したい人が集まって資金を融通しても良いはずですし、むしろ形としては自然でしょう。
クラウドファンディングとソーシャルレンディングの関係
ソーシャルレンディングと似た言葉に、クラウドファンディングというものがあります。
両者は何が違うのでしょうか。
じつはクラウドファンディングというのは、ソーシャルレンディングも内包する幅広い概念なのです。
クラウドファンディングの投資型に相当
クラウドファンディングは主にインターネットを通じて不特定多数の相手から資金拠出を募る取り組みであり、①寄付型、②購入型(報酬型)、③投資型があります。
クラウドファンディング寄付型では基本的に見返りが求められないのに対して、購入型では資金使途であるプロジェクトの産物やサービスなど金銭以外の報酬が資金の出し手に提供されます。
そして投資型では金銭のかたちでの配当や元本回収が期待されるため、だいぶ投資に近いイメージです。
米国のクラウドファンディング
たとえば米国は、寄付のほかに購入型のクラウドファンディングが広く行われていたという素地がありました。そこにソーシャルレンディングの登場で投資型クラウドファンディングへのシフトが促されました。
米国でも現在は融資型クラウドファンディング、すなわちソーシャルレンディングがもっとも盛んなクラウドファンディングになっています。
日本のクラウドファンディング
日本ではソーシャルレンディングが最もメジャーですが、最近では投資型クラウドファンディングについても広がろうとしています。
ファンド形態と株式形態の投資型クラウドファンディングが広がっており、ファンド形態ではすでに10 社程度の業者が案件を取り扱っています。
株式形態(エクイティ型)の投資型クラウドファンディングについては、2015年5 月に「株式投資型クラウドファンディング」が制度導入済ですが、まだ案件としての具体例はありません。
FinTechとソーシャルレンディングの関係
ブロックチェーンのような高度な技術を使うわけではないものの、インターネットという技術と既存の貸付という金融取引を結び付けたことで、ソーシャルレンディングはFinTechの一分野になっています。
ソーシャルレンディングの革新性
マーケットプレイス・レンダーのFinTech は、プラットフォームを訪れた借入希望者が入力した情報に基づき、本人確認など最低限の手続きを除けばほとんど人力にも頼らないで資金実行までたどり着くことです。
従来の銀行の与信手続きとは異なる独自の信用力評価とアルゴリズムによって短時間で借入希望者を評価し、資金提供の可否や金利を提示して迅速に手続きを進めることが革新的です。
銀行が単にインターネット上に窓口を置いて借入申込を受け付けるのとは、全く異なる金融技術なのです。
機関投資家が積極的にソーシャルレンディングに参加する米国
米国では高い利回りを求めて、機関投資家までもがソーシャルレンディング市場に参加します。
たとえば、米国のLending Club 社は、ソーシャルレンディング業者として全米で最有力な業者です。
Lending Club は、貸付金額に応じて公募社債をシリーズ発行することで資金調達しています。調達した資金は産業銀行に預けられ、それを担保に産業銀行から貸付が行われています。社債は単位額面25 ドルに小口化してネット上で投資家を募集して発行され、機関投資家も受け入れつつ個人投資家の投資を募っています。
ただし個人が投資家となる資格は年収が7 万ドル以上あることなど要件が厳しく、州によっては適格投資家であることが求められています。
小口の個人投資家が中心の日本と、プチ富裕層と機関投資家が中心の米国ではだいぶ参加者が違いますね。
それでもLending Clubは個人投資家が集まって投資する仕組みが大事と考えており、機関投資家への販売額に上限を設けてなるべく個人投資家から資金調達できるように運営しています。その成果で、実際に機関投資家の購入割合は、昨年まで2~3 割に留められています。
海外のソーシャルレンディング事情
ソーシャルレンディングが発達しているのは英国、米国、中国です。
米国でもっとも古いマーケットプレイス・レンダーはProsper 社で、2006年に開業している。他に大手としてLending Club、OnDeck、Avant があります。
米国の例は上で機関投資家が多数参加していると説明したので、ここでは軽く流します。
中国ではソーシャルレンディング業者数が急増しており1,500 社を超えるといわれており、中国らしく数で勝負ですね。中国ではソーシャルレンディングが不動産市場への影響力を強めており、規制の対象にまでなっています。
ユーロ圏では国境を越えるビジネス展開
また、ユーロ圏では通貨が共通であることを背景に、国を超えて貸し手(投資家)を募るソーシャルレンディング業者があります。これは1国の経済規模が小さく国内だけでは資金の出し手が少ないせいもあり、東欧の業者がドイツやフランスなど国外投資家へのアピールするケースが多いようです。
たとえば2015 年1 月にラトビアで開業したMintos 社は先月だけで950万ユーロの貸付を行っているが、借り手はラトビア、エストニア、リトアニア、ジョージア(旧グルジア)の4 国、投資家はEU 各国とスイス、ノルウェイで募っている。他にもBondora(エストニアで2012 年に開設されている)、Zlty Melon(スロバキア/2013 年)、Mintos(ラトビア/2015 年)、FinBee(リトアニア/2015 年)などが国境を越えて投資家を募っているいずれの国も日本とちがっておおむね銀行や預金取扱金融機関の預貸率が高く、間接金融だけでは消費者や中小企業の資金需要に応えきれないという事情がソーシャルレンディングの活発化を後押ししているようです。
日本のソーシャルレンディング業者でも、欧州の周辺国に積極的に貸し出している業者がおり、社会貢献と高利回りの実現のため利用しても良いでしょう。
公正なソーシャルレンディング市場の整備が進む
ソーシャルレンディングの社会的な位置づけが上昇するにつれて、適正な市場環境を育成するため金融規制当局もルールの明確化を進めています。英国ではFCA(金融行為規制機構 Financial Conduct Authority)が14 年3 月に、デット型のクラウドファンディング業者に対して、資本規制や開示ルールのほかリテール投資家の制限によって投資家保護にも鑑みる規制を導入しました。
日本におけるソーシャルレンディングの意義
ソーシャルレンディングが銀行システムを補う存在で社会的な意義を増していることは、これまで見てきたとおりです。
日本では銀行システムが堅牢で、個人や中小企業も含めだいたいお金が借りたい人は借りられる状態にあるように見えます。
しかし、一部の不動産ファンドや太陽光ファンドが一時的に必要な資金を、迅速に貸してもらいたい、というニーズを銀行がすべて満たせているかというと、そんなことはありません。
日本の金融機関は、非常に組織として整っている反面、急に資金が必要になった企業にリスクを負って貸し出す、ということは得意ではありません。
金融機関の失敗が許されない組織文化も、硬直的な融資姿勢を助長します。
こうした環境下で、金融機関が満たせない資金調達ニーズを迅速に満たせるのがソーシャルレンディングです。
金融システムが強固な日本においても、技術革新と柔軟さが生み出すソーシャルレンディングは、価値のある存在として地位を向上させていくものとみられます。