私の京都朝観光~京都人が勧めるとっておきの朝~ 哲学の道~南禅寺界隈・平安神宮界隈~ 放送作家・脚本家 小山薫堂さん

小山薫堂さん

小山 薫堂(KUNDOU KOYAMA)

熊本県出身。「料理の鉄人」など、数々の番組制作を手掛ける放送作家。初脚本の映画「おくりびと」では第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。ゆるキャラくまモンをプロデュースするなど、日本を代表するクリエイターとして活躍中。料亭「下鴨茶寮」の主人、京都観光おもてなし大使、京都市の東京アンテナショップ「京都館」の館長を務める。

京都との繋がりが深まることで知る
自分にとってこの街が大切だと思う理由

 京都と深く付き合うきっかけになったのは、3年前の夏。下鴨神社近くにある老舗料亭「下鴨茶寮」の経営に携わるようになり、1ヵ月の内3分の1程度は、京都で暮らすという小山薫堂さん。それ以前から、京都にはさまざまな思い出があると話す。
 「京都は、好きな場所で憧れの地。京都の大学が良くて受験をしたほどです。結局、東京の大学へ進みましたが、学生時代には時間をつくり京都をよく訪れていました。2015年9月に出版をしました『ライカと歩く京都(PHP研究所)』にも書きましたが、クリスマスを嵐山の渡月橋で過ごしたこともあります(笑)。また、京都のバーにボトルをキープするなんてこともして、まるで住んでいるかのような過ごし方をしていましたね。おごりなのかもしれませんが、誰でもいく観光名所へはさほど行かず、一般的な観光客とは違う目線を持つようにしていたことを覚えています。
 通うようになったのは大学生の頃からですが、実家の貸衣装屋が西陣へ仕入れに行くので、僕も幼稚園児か小学生の頃から京都へ来ていました。幼な心に京都らしい情緒を感じ、京ことばを話す女性に憧れを抱いていました。流れる空気感といいますか、雰囲気といいますか。自然や四季のうつろい、千年の都の歴史や文化、芸術など、豊かさの幅が広い京都。小さな頃から、この京都独特の豊かさを感じていたのだと思います。だから、東京の大学へ通うものの、京都への思いが募り、恋しい気持ちがあったのでしょうね。とにかく、僕は京都通いをしていたわけです。」

哲学の道
哲学の道

心が洗われていくような「哲学の道」
触れ合いを感じるゆったり朝散歩のススメ

 京都に居を構えてからは、朝の散歩を楽しんでいるという小山さん。市バス5系統に乗り銀閣寺道停留所で下りて、琵琶湖疏水分線に沿った「哲学の道」をゆったり楽しみながら、南禅寺の方面へ歩くコースは、「水辺沿いが気持ち良い」という。小山さん曰く、自身の原点回帰だと話す。
 「大学受験で京都へ来た時に「哲学の道」を歩いたんですね。その時のことをとても覚えていて、「哲学の道」を歩くたびに18歳の頃の自分に戻り、フレッシュな感覚になります。いわゆる原点回帰ですね。自分のクリエイティブの原点に戻るような道だと思っています。春は桜が咲いて、夏は深い自然の緑、秋は紅葉、冬は雪景色に、水の流れ、細い散歩道という風景が素晴らしい。住みついているのであろう猫や散歩されている地元の方との触れ合いもあり、哲学の道から少し山側へ入っただけなのに、すごく山奥というか手つかずの自然を感じるような場所があったりするのも京都だなと思います。
 「哲学の道」の最南端になる若王子神社から、そのまま永観堂の前を通り、南禅寺を通り過ぎていくのがいつものコースですが、そこから、朝がゆで有名な瓢亭方面へ行き「無鄰菴(むりんあん)」を訪ねたり、「平安神宮の神苑」に行ったりするのもオススメです。
 京都は歩くのにちょうどいい街です。それに、京都は朝が良いんですよ。美味しいパン屋さんやコーヒー屋さんもたくさんあるので是非行っていただきたい。これは全てに言えることかもしれないけれど、昼間は驚くほど観光客の方が多いのに、朝はすっぴんの街といいますか。素の京の街を見て、なんでもないけど素敵だなと思います。」

無鄰菴(むりんあん)
無鄰菴(むりんあん)

暮らす人々がいる京の風景に親しむ
本当の京都を知るには「朝」が良い

 京都で暮らすということは、風の音や土の香り、空の変化や季節のうつろいを感じられるということ。また、京ならではの習慣や歳時と触れることでもある。小山さん曰く 「まだホテルに連泊をしていた時に、ちょうど、そのホテルの前の神社におじさんが水を汲みにきていたんですね。それが、毎日のことで日課になっているんでしょうね。僕も朝の散歩に出た帰りに立ち寄り、水を飲んで部屋に戻るということをした思い出があります。朝、神社のお水を目当てに歩くのもひとつの楽しみ方。朝こそ、暮らす人々から学ぶ、本当の京都を知れる時間帯なのだと思います。 他にも、最近は京都にいて気づくことがいろいろあります。食べることに関してですが、昔は、ある老舗料亭に行けば間違いないと思っていました。それは確かにそうですが、他のところは知らなくてもいいと思っていたんです。でも、ワイン好きがワインを飲み始めた時に五大シャトーを飲んでいればいいやと思うようなもので、そうじゃなくて、安くておいしいところを見つける喜びがあるじゃないですか。京都に暮らしてみると無名だけどすごく良い、通いたくなる店が無数にあって、特に和食のレベルの高さを改めて感じますね。東京で和食に行かなくなりました(笑)。とても誠実で、おいしいものを提供しなきゃという情熱。あとは誇り、プライドですね。鼻が高いという意味ではなく、ゲストを絶対満足させるという見えないところへのこだわりとか、仕込みに手間をかけるとか、仕入れを見極める力とか。そういうものが非常に優れていると思うお店を発掘したい。京都に暮らさずとも観光でも良いと思います。興味があるものなら何でも良いから、本当の京都を探して極めるって面白いと思いますよ。」

哲学の道エリア概要DATA

  • 哲学の道

    哲学の道

    京都市左京区銀閣寺橋~若王子橋
    市バス銀閣寺道からすぐ

  • 南禅寺

    南禅寺

    京都市左京区南禅寺福地町
    地下鉄蹴上駅から徒歩10分
    時間/8:40~17:00(季節により変更あり)
    休み/年末(12/28~31)
    料金/方丈庭園 500円 三門 500円 南禅院 300円

  • 無鄰菴(むりんあん)

    無鄰菴(むりんあん)

    京都市左京区南禅寺草川町31
    地下鉄蹴上駅から徒歩7分
    時間/9:00~17:00
    休み/年末年始(12/29~1/3)
    料金/410円

  • 平安神宮

    平安神宮

    京都市左京区岡崎西天王町
    地下鉄東山駅から徒歩10分
    時間/6:00~18:00(季節により変更あり)
    休み/無休(ただし、10/22は 12:00まで)
    料金/無料(ただし、神苑(8:30~17:30(季節により変更あり))入苑は有料)

小山さんおすすめ「哲学の道~南禅寺界隈・平安神宮界隈~」の朝観光ルート

  • 1哲学の道
  • 2南禅寺
  • 3無鄰菴
  • 4平安神宮・神苑

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