「ヌーハラ報道」に、目くじらを立てる理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2016年11月29日 7時29分

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なぜヌーハラ騒動は広がったのか

 少し前、日本人がラーメンや蕎麦(そば)をすする際の音で外国人が不快な思いをするという「ヌードルハラスメント」(ヌーハラ)が注目を集めた。

 テレビで芸能人らが次々と、「食文化なんだから、それが嫌っていうなら来なきゃいいし、食べなきゃいい」(和田アキ子氏)、「日本の食文化に対して外国人にとやかく言われる筋合いはない!」(小倉智昭氏)などと怒りや不快感を表明したのも、まだ記憶に新しいのではないだろうか。

 オリンピックを控え、外国人観光客も年々増加している中で、「客」に配慮すべきか、「客」にこちらのルールに従ってもらうのか、というのは「観光立国」を目指す国ならば、必ず直面するテーマである。そういう意味では、この手の議論が盛り上がるのも悪くないと思う半面、個人的には「ヌーハラ騒動」で論じられなければいけない別の深刻な問題もある、と考えている。

 というのも、実は今回の「ヌーハラ」によって、日本社会が抱えているかなり危うい部分がモロに露呈してしまったからだ。

 それをザックリ言ってしまうと、「マスコミがいともたやすく大衆煽動の手口に引っかかってしまう」という問題である。

 既にネット上で多くの方たちが指摘をしているように、「ヌーハラ」なる概念を唱え始めたのは、外国人の方ではなく、「戦争法廃止の国民連合政府応援隊」なるTwitterアカウント(現在は削除)の方だ。ご本人曰く、『日本人ですし元自衛官』で、アカウント名からも分かるよう、ある特定の政治信条に基づいてSNS上で情報発信をされている御仁である。

 この方が『今まで製麺業界の圧力で隠匿されてきたヌーハラを暴きます』という前口上から始まるツイートを、学研のニュースサイトが取り上げ、毎日新聞のサイトへ転載。それを『ユアタイム』やら『とくダネ!』などのフジテレビ系情報番組が紹介した――というのが「ヌーハラ論争」が盛り上がっていくプロセスである。

●冷静に考えると「ヌーハラ騒動」は恐ろしい

 日本で暮らしている外国人の方たちが「麺をすすることを強要されるのは人権侵害だ!」とか表明したわけではない。韓国のポシンタン(犬鍋)のように、海の向こうから「そういう野蛮なことはやめるべきだ」とかクレームがきたわけではない。ニューヨークタイムズなんかの海外メディアが、「ヌードルハラスメントで吐き気をもよおす外国人観光客が日本で増加中」とかいうニュースを報じたからでもない。素性もよく分からない『元自衛官』がSNS上でつぶやいた話を真に受け、「朝の顔」と呼ばれるようなテレビ司会者や芸能人の方たちが、怒りや不快感を示したのだ。

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