農業の競争力強化へ 政府が農協改革の提言決定

農業の競争力強化へ 政府が農協改革の提言決定
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政府の規制改革推進会議は会合を開き、農業の競争力強化に向け、JA全農に対し、農薬や肥料などの生産資材を仕入れる際には競争入札などを導入するほか、農産物の販売方法を買取販売に転換する改革を年次計画などを作成して進めるよう求める提言を決定しました。
それによりますと、JA全農=全国農業協同組合連合会について、「生産資材メーカーの側に立ち、収入の拡大を目指しているのではないか」という批判があると指摘したうえで、真に農家の立場に立った組織に転換すべきだとしています。そのうえで、農薬や肥料などの生産資材を仕入れる際には競争入札などを導入し、農家が品質や価格面で最も優れたものを購入できるよう支援するほか、農産物の販売方法を委託販売から買取販売に転換すべきだとしています。そして、こうした改革が実行されるよう、JA全農が年次計画や数値目標を公表し、政府が進ちょく状況をフォローアップするよう求めています。

規制改革推進会議の作業グループは、JA全農が1年以内に、生産資材の仕入れ・販売事業から撤退することなど、さらに踏み込んだ改革を求めていましたが、JA全農などから反発が出たため、明記されませんでした。

一方、生乳の流通制度をめぐっては、国が指定した農協に出荷した酪農家にだけ、農協を通じて補助金を出す今の制度を改め、一定の条件を満たした酪農家に対し、補助金を直接交付することを原則とする仕組みに改めるべきだとしています。

この提言を受けて、JA全農や農林水産省は、今後、改革の実現に向けた検討を進めることにしています。

首相「生まれ変わるつもりで」

安倍総理大臣は会合の最後に、「農協改革については、集中推進期間における自己改革を加速させる。とりわけ農業の構造改革の試金石である全農改革を推進するため、組合員である農業者、ひいては国民にもわかる成果や数値目標を掲げ、年次計画を立てて、生まれ変わるつもりで自己改革を進めていただく。このほかにも、全農をはじめ、全国の農協組織が取り組むべき多くの課題があり、規制改革推進会議としても、改革の進ちょくをしっかりとフォローアップしていただきたい」と述べました。

農協改革とは

今回の焦点となったのは農産物や必要な資材の流通を取りしきる、いわば、農業界の巨大商社、JA全農=全国農業協同組合連合会です。政府の規制改革推進会議では、全農が農薬や肥料などの生産資材を仕入れる際に、手数料をとるだけでメーカー側と十分な価格交渉を行わず農家のコストが割高になっていることや、農産物を販売する際にも全農がリスクをとらずに手数料を得るだけで、高く売る努力を十分していないと指摘されていました。

28日決定した提言では、JA全農に対して農薬や肥料などを仕入れて販売する部門をスリム化したうえで、外部の人材も入れてメーカー側との交渉力を高めること、農産物の販売については、農家から手数料をとった委託販売からの転換や輸出体制の整備を進めることを求めています。

当初、規制改革推進会議の作業グループは、「1年以内」の抜本的な改革を求めましたが、JAグループや自民党側の強い反発を受けて、JA全農に数値目標を盛り込んだ年次計画をつくるよう求めるにとどまりました。

政府側は流通を取りしきるJA全農の改革を通じて、農薬や肥料などの価格を引き下げるとともにより有利な農産物の販売先を広げ農業の競争力高めて農家の所得向上に結びつけたい考えです。

生乳の流通改革

今回は牛乳や乳製品の原料となる生乳の流通についても規制改革の対象となりました。

現在、国などが指定した全国に10ある指定団体に出荷した酪農家にだけバターやチーズなどの原料となる加工原料乳に対する補助金が国から支給されています。ほとんどの酪農家は原則、生産する生乳のすべてを指定団体に出荷してきました。

この制度は50年前の昭和41年に始まりました。当時、乳業メーカーに比べて規模が小さかった酪農家から生乳をまとめて指定団体が扱うことで価格交渉力をつけて、酪農家の所得向上をはかるのが狙いでした。

今では全国の97%の生乳が指定団体に集まります。政府の規制改革推進会議は特定の団体が生乳をほぼ独占する状態では、酪農家の経営意識が妨げられ、自由に販売先を選ぶことが難しいとして抜本的な見直し内容を検討してきました。

28日決まった提言では、補助金の支給を指定団体以外に出荷した酪農家にも広げることを盛り込みました。酪農家は指定団体以外の卸売会社などに生乳を出荷しても補助金を受け取ることができ、販売先を自由に選べるようになります。酪農家の経営の自由度をあげ、消費者のニーズをとらえた生乳の生産に取り組みやすい環境を整えます。ただ、補助金を受け取ることができる具体的な条件については今後、詳細を詰めるとしています。