KinKi Kids いつ聴いても古びない楽曲の秘密
日経エンタテインメント!
音楽トレンドが多様化・細分化するなか、流行にのまれず制作され続けるKinKi Kidsの楽曲。一貫した彼らの「歌謡曲イズム」は、いかに形成されてきたのか。KinKi Kidsの曲はなぜ劣化知らずなのか。新アルバム『N album』からひも解いていこう。
■「いい曲を届ける」という強い思い
『硝子の少年』発売から19年。ミリオンヒットを連発していた90年代後半から、音楽シーンは数年タームで様々なブームを繰り返している。世間をにぎわせるヒット曲がどんどん生まれにくくなっているというのに、少しでもトレンドに乗っているサウンドは、すぐ「時代遅れ」となってしまう――そんな状況だ。
その激動の19年間を、KinKi Kidsはマイペースに歩み続けてきた。そこにあるのはただひとつ、「いい曲を届ける」という強い思い。だからこそ、彼らは時代の流行をよそに、普遍的なポップソングを歌い続けているのだ。
他のジャニーズのグループと比較すると彼らは、「トレンド性の高いアーティスト」とのコラボレーションは少ない。その代わり、デビュー曲を手がけた山下達郎、彼らの音楽的礎にもなった吉田拓郎、剛・光一ともにファンを公言するDREAMS COME TRUE、今や2人のナンバーには欠かせない堂島孝平、あるいは玉置浩二、織田哲郎などJ‐POPの歴史を語る上で外せないアーティストたちが楽曲を提供している。だからこそKinKi Kidsの曲はいつ聴いても古びることはないし、逆に『硝子の少年』や『ジェットコースター・ロマンス』といった初期の名曲から18、19年経っていることに驚く人も多いのではないだろうか。
そんな彼らが9月21日に2年ぶりのニューアルバム『N album』をリリースした。ポイントは2つ。「吉井和哉」と「堂島孝平」の存在だ。
■グレーゾーンが反応した新曲
「20周年イヤー突入第1弾シングル」という位置づけで7月にリリースされた『薔薇と太陽』(アルバムにも収録)は、THE YELLOW MONKEY吉井和哉の書き下ろしだった。これまでなかった顔合わせゆえ、KinKi Kidsファン以外の間でも早くから話題に上っていたのだが、この夏、様々な音楽番組で曲が披露されると興味深い現象が起きた。しばらく2人から離れていた「かつてのファン」、生まれた時から音楽シーンに彼らが存在していた若年層、そしてTHE YELLOW MONKEYファンなど、様々なグレーゾーンが反応を示したことだ。初週セールスは前作から約2.5割増の19.3万枚。「KinKi×吉井」という意外な顔合わせも関心を呼んだだろうが、なにより結果につながったのは、生み出された楽曲が時代・世代を超越したものだったからにほかならない。きっと世が世なら「歌謡曲」として愛されたであろう名曲が示した音楽力といえよう。
堂島孝平は、00年からKinKi Kidsに楽曲提供をしているソロアーティスト。『カナシミブルー』(02年)、『永遠のBLOODS』(03年)などのシングルをはじめ、カップリング曲やアルバム収録曲まで作詞・作曲・編曲等で参加している、KinKi Kidsサウンドクリエイターの一員だ。そんな彼が『N album』で初めてKinKi Kidsのアルバムに全面参加。もともと彼が持つ“普遍的ポップネス”がアルバム全体を包み込んだことで、心地よい爽快感を終始味わえる作品に仕上がった。
近年KinKi Kidsといえば、「ミュージカル俳優の堂本光一」、「シンガーソングライターの堂本剛」と、ソロアーティストとしての活躍が目立っていた印象だが、『N album』で改めてグループとしての評価を高めることになるはずだ。なぜなら、このアルバムは彼らがデビュー時から貫き通した姿勢──「いい曲を届ける」こと、「普遍的なポップソングを歌う」ことがより高純度で凝縮されているから。互いが無理に融合するのではなく、相反する個性を尖らせたままで。
アイドルソング、歌謡曲、歌謡ロック、シティポップ、ダンスミュージック、バラード、いろいろなカテゴライズの曲が並ぶなか、最後に残るのは「いい曲」の一言。そんな当たり前の一言をリスナーに言わせてしまう2人の真髄をぜひ感じ取ってもらいたい。
『N album(通常盤)』
全15曲(各盤共通13曲+『Summer~僕らのシルエット~』『雨音のボレロ』)。20Pブックレット付き、3000円。
『N album(初回盤)』
全13曲。『なんねんたっても』ミュージッククリップ&メイキング収録(約22分)。24Pブックレット付き、3500円。
■何年経っても古びないエヴァーグリーンな1作
『A album』から続くオリジナルアルバムのアルファベットタイトルは「N」に到達(07年に『Φファイ』挟む)。「naked&natural」=「ありのままで自然体」。これが今の彼らのモードであり、2年ぶりのアルバムテーマだ。
『ホタル』(吉井和哉作詞・作曲)は、これぞ吉井!という死生観が色濃く表れた、KinKi Kidsとしては異色の1曲。そこに呼応するように堂本剛作詞・作曲の『陽炎~Kagiroi』があるかと思えば、久々のド直球サマーチューン『Summer ~僕らのシルエット~』(通常盤のみ)があったり。通して言えるのは、月日が経っても思い出しそうな歌が詰まっているということ。最終曲のタイトルではないが、『なんねんたっても』古びないエヴァーグリーンな1作だ。
価格は税抜き。販売はジャニーズ・エンタテイメント
(ライター 西廣智一、木村尚恵)
[日経エンタテインメント! 2016年10月号の記事を再構成]
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