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【社会】ふるさと納税 10区が返礼参戦 23区の減収、16年度129億円
自分の生まれ故郷や応援したい自治体などに寄付する代わりに所得税や住民税が軽減される「ふるさと納税」を巡り、寄付者に返礼品を用意する動きが東京二十三区で広がっている。高級和牛や魚介類といった豪華な返礼品目当てに地方の自治体に寄付する人が増える一方で、都市部の税収は減少。二十三区側が対抗措置に乗り出した形だ。 (神野光伸) 「返礼品競争に参入するつもりはないが、財政への打撃が大きすぎる」。十月中旬から、区内のレストランの食事券や、交流自治体の地酒や米などを返礼品として贈るようにした中野区の篠崎茂雄・政策室係長はこう訴える。 二〇一五年度に約八千万円だった寄付による減収額は、一六年度は四・五倍の約三億六千万円に増大し、個人区民税全体(約三百億円)の1%を超えた。 全国最多の待機児童数(四月時点で千百九十八人)を抱える世田谷区は、一六年度の区民税の減収額が約十六億円(個人区民税全体の1・5%)に上る。 「それだけあれば、定員百人の認可保育所を五カ所整備できる」と笹部昭博・政策企画課長は打ち明ける。同区は本年度、福祉作業所でつくったお菓子などを返礼品にする試みを始めた。 こうした状況は各区に共通している。ふるさと納税は、都市部の住民が地方の自治体に寄付する傾向が強く、二十三区の区長でつくる特別区長会によると、一六年度の二十三区の区民税の減収額は合計で百二十九億円。前年度の五・四倍に膨れ上がった。 特別区長会は九月、「自治体の返礼品が過熱している。本来の趣旨に立ち返って考えるべきだ」との見解を発表している。とはいえ、行政サービスに支障を来しかねない現状に、本年度から返礼品を取り入れたり、種類を拡充したりした区が少なくない。 本紙の調べでは、返礼品を導入しているのは中野、世田谷に加え、文京、足立など計十区。足立区が〇九年度に始めたのが一番早く、この数年、導入や拡充の動きが目立つ。杉並区は来年度から始める方向だ。 ほかにも「減収は看過できない」(吉本浩章・葛飾区広報課長)と導入を検討している区もある。「寄付とは本来、善意による無償の行為」(江東区)として静観の構えの区も多いが、税収減は悩ましい問題。中央区の担当者は「区の考えに賛同する人が寄付してくれればいいと思っているが、返礼品ありきの現状では、区税流出に歯止めはかからない」と苦悩を明かした。 PR情報
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