とくべつ企画「洋食」
2016年11月28日
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本場っぽいレシピで作ったカルボナーラ。
カルボナーラを初めて食べたのは今から30年くらい前、隣町にあった大きな病院の最上階にあったレストランで。
ビジュアルショックだった。だって、生玉子の黄身が乗っていたのだ。ナポリタンとミートソースしか知らなかった田舎の少年は驚愕した。 そんなビジュアルのカルボナーラがあるのかって?あったんですよ。 ※この記事はとくべつ企画「洋食」の1本です。 亀田病院で食べたカルボナーラ南房総の鴨川に亀田病院という巨大な病院がある。僕の実家は鴨川の北、小湊にある。
この辺の人はだいたい亀田病院で生まれ、通い、一度くらいは入院し、死ぬ。僕も何度か掛かり、母は4年前にここで亡くなった。 僕が知ってる40年間で4倍くらい大きくなった。
子供の頃、通院する兄にくっついて何度か亀田病院に行った事がある。
なぜ僕までくっついて行っていたのか忘れちゃったけど、ローカルバスに乗って亀田に行くのはちょっとした旅行気分だった(兄にしてみれば迷惑だったかもしれないが)。 新しめの病棟。高級ホテルのような設備でコンシェルジュもいる。
亀田病院の最上階にはレストランがあった。
今でも大概の田舎だが、当時の南房総は大山倍達が山籠もりをするほど(本当)の田舎で、ファミレスもなければコンビニもなかった。 料理屋といえば煮魚や新鮮な刺し身なんかの海の幸ばっか。そんなもんには飽き飽きだった。 ここに写ってる建物は全部亀田病院。真ん中に写ってるのは妻だが、木の枝を持って「大魔法使いになった気分で海を眺めていた」と言っていた。訳がわからない。
僕は魚屋に生まれ、でも魚は大して好きじゃなかった。
そんな松本少年の心をガッチリ掴んだのが亀田病院のレストランだった。食い意地の張った僕のことだからレストラン目当てで兄にくっついて行っていたのかもしれない。 そこにカルボナーラがあった。 今の亀田病院のレストラン階。都会のデパートかホテルの最上階っぽい雰囲気。
なにそれ、スパゲティなの?ナポリタンでもミートソースでもなく、カルボナーラ。え、玉子のスパゲティ?食べたい!と思って注文した。
レストランには、特有の、肉やパン粉、ワインソースなどが混ざった匂いが漂っていた。 今の亀田病院最上階にあるケーキ屋さん。美容院、コンビニ、ギフトショップなど、一つの街が収まっている。
初めて食べる味だった。わぁ、なにこの匂い!食べたことない味!え、黄身だけ乗ってるの?白身はどこ行ったの?すべてが新鮮で、ハマった。
以後、結構な割合でカルボナーラを注文していた(と、記憶しているが捏造の可能性もある)。 再現してみた。
当時食べた記憶を元に再現してみた。玉子の黄身以外のディティールはあまり覚えていない。多分ベーコンは入ってたと思う。
記憶の中のカルボナーラ。具はベーコンと缶詰のマッシュルームにしてみた。
当時の僕は『玉子の黄身が乗ったスパゲティ』をカルボナーラと呼ぶのだと思っていたので、黄身以外の部分には注目していなかった。
だから、黒胡椒はかかっていたのか、具はなんだったのかについてはほとんど覚えていない。 食べるときに黄身を混ぜる。
生の黄身が原型をとどめたまま料理に乗っているのが新鮮だった。玉子かけご飯にしろ卵焼きにしろ、黄身は混ざっている。目玉焼きは焼けている。
亀田のカルボナーラは生の黄身がのっている。この儚い感じ、自分で黄身を混ぜることで完成するインタラクティブ! 要素としてのカルボナーラはまぁまぁ満たしている。
今はカルボナーラの正体を知っている。材料はパスタ、玉子、黒胡椒、パルメジャーノ・レッジャーノ(とかペコリーノとか)がメインで、あとオリーブオイルとかニンニク、白ワイン。それらを混ぜれば出来上がる。
なにこのしゃらくさい料理。 亀田のカルボナーラは、確かに要素は満たしているが、よく知られているカルボナーラとは違う。 これはこれでおいしいけどな。
「イタリアにゃ黄身がへぇった(入った)スパゲティーがあるみてーだお」
「はー、材料はあんだ(なんだ)、玉子とベーコンだぁ?」 「こんでいっぺか?(これでいいか?)」 (房総弁でお送りしました) で、黄身を乗せるカルボナーラが出来たんじゃないかと勝手に想像している(あるいは東京の店で出されていたカルボナーラを真似たか)。 そして、今もカルボナーラには色んなレシピがある。生クリームを使ったり使わなかったり、カルボナーラって曖昧だ。 だから色んなカルボナーラを『こんでいっぺか?』で作ってみることにした。次のページへ。
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