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各省庁のあまりの危機感のなさに、あきれるばかりだ。 むだ遣いや不適切…
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各省庁のあまりの危機感のなさに、あきれるばかりだ。
むだ遣いや不適切な経理だと指摘されたのが455件で、計1兆2千億円にのぼる。会計検査院がまとめた、2015年度決算の検査結果の話である。
とくに看過できないのは、「安心・安全」にかかわる予算でのずさんな措置だ。
たとえば、「地震に強い都市づくり」をめざし、国の交付金で防災無線を備える事業。設置した市区町村の約3割にあたる27の自治体は、耐震性が不十分な建物などに置いたため、被災時に使えないおそれがあった。
福島第一原発事故に伴う除染作業で出た汚染土の仮置き場では、設計の不備から31カ所で土から漏れる汚染水の濃度を測れないおそれがある状態だった。
このような、被害を広げる「人災」につながりかねない事例がいくつもある。
お粗末な例も相変わらずだ。途上国支援の一環で除湿器を送るはずが加湿器を買ったり、総務省がシステム関連で不要な出費をしたり、といった具合だ。
国民が納めた貴重なお金を扱うという意識があまりに欠けている。民間企業なら即、経営悪化を招くところだが、借金頼みの予算編成を重ねても何とかなっている状況に、感覚がまひしているのではないか。
事業を増やし、より多くの予算を獲得することばかりに力を入れ、予算がどう使われ、ねらい通りの効果を上げたかについては関心が薄い。そんな官僚の悪癖を放置し続けるわけにはいかない。予算獲得から「費用対効果」へ、評価の物差しを変えていくことが待ったなしだ。
土台がなくはない。民主党政権が始め、安倍政権も力を入れる「行政事業レビュー」だ。
国が手がける約5千の全事業について、予算額や執行状況と成果、資金の流れ、自己点検の内容を担当省庁が統一様式のシートにまとめ、公開する。外部の有識者をまじえた検証の場を定期的に設け、事業を見直す。
ただ、自己点検では「効果が出ている」といった自画自賛が目立つ。だからこそ「外部の目」が大切になる。
今月あった公開の場での検証作業では、対象事業が予算額でみて昨年より小粒になった。むだ減らしより効果的な事業のあり方を考えることを重視したためというが、矛先が鈍るようでは旗振り役の行政改革推進会議の意義が問われよう。
会計検査院との連携など、工夫の余地はある。むだ遣いを繰り返す余裕はないことを、政府全体で肝に銘じてほしい。
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