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「自然災害」原因項目に NPO要請へ

障害者手帳申請時の診断書へ「自然災害」の項目を設けるよう求めている「よろず相談室」の牧秀一理事長(右から2人目)ら=神戸市東灘区で2016年10月15日、神足俊輔撮影

 阪神大震災で障害を負った「震災障害者」や支援者が、障害者手帳の申請に使う診断書の原因欄に「自然災害」の項目を設けるよう訴えている。震災障害者は住居や仕事を同時に失って困難な状況に陥ることが多く幅広い支援が必要だが、阪神大震災でも長い間存在を見過ごされて正確な実態が今も分からない。当事者や支援者は、原因を明記できれば早期に把握でき、公的支援の基礎資料になると強調している。

     神戸市のNPO法人「よろず相談室」(牧秀一理事長)のメンバーらが国会議員らとも意見交換し、国への働きかけに向けて準備を進めている。

     阪神大震災では1万683人が重傷を負ったが行政は追跡調査をせず、支援が遅れた。発生から15年が過ぎた2010年度になって兵庫県や神戸市が実態調査に着手、障害者手帳の申請内容などを精査し、県内で少なくとも349人が判明した。ただ、原因がけがの診断名だけだったり、震災に起因と明記していなかったりするものも多く、実数はさらに多いとみられる。

     両自治体はその後、申請書の書式を改めて「天災」「震災」などを原因として選べるようにしたが、全国的には広がっていない。東日本大震災では各県の調べで、岩手8人▽宮城38人▽福島26人--と把握されているが、実態とかけ離れている可能性が高い。厚生労働省によると、申請書の書式は地方自治体が定めるが、その目安となる厚労省のガイドラインには、交通や労災などの項目はあっても「自然災害」はない。

     よろず相談室は震災障害者の集いを毎月開き、経験を語り合う場を設けてきた。牧理事長は「行政が実態を把握すれば当事者も『震災障害者』だと自認できて集まることにつながり、孤立を防げる。住まいや仕事を同時に失うことも多いため公的支援が不可欠で、原因の記載がその土台となる」と指摘する。

     厚労省障害保健福祉部企画課は「全ての原因を項目として明記するのは難しく、自由記載欄で対応可能だ。ただ、要望があれば詳しく聞きたい」としている。【神足俊輔】

    「見過ごされる人ないように」

    阪神大震災で障害を負い、障害者手帳申請時の診断書に「自然災害」の項目を設けるよう求めている岡田一男さん=神戸市中央区で2016年9月16日午後1時3分、神足俊輔撮影

     阪神大震災で神戸市東灘区の自宅マンションが倒壊し、がれきの下敷きになってクラッシュ症候群となり、後遺症で右足にしびれが残る岡田一男さん(76)=同市中央区=も、「自然災害」の項目を求めている一人だ。

     尻を圧迫されたまま約18時間生き埋めになり、7カ月間入院した。リハビリしていた震災の年の秋、街中で出会った知人に「障害者手帳、持っているのか」と言われ、初めて手続きに思い至った。

     震災障害者と自覚するには、さらに歳月を要する。「よろず相談室」の牧理事長と出会い、当事者同士が語り合い始めたのは2007年だ。「『忘れられた』『見捨てられた』と皆が感じていた」と振り返り、「同じ境遇の者にしか分からないことがある。元気をもらえた」と言う。

     神戸市の調査で震災障害者の一人として把握された時は「やっと認められた」と感じた。「これから私たちのような思いをする人がいないようにしたい」と訴えている。【神足俊輔】

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