頭痛やめまい、吐き気はなぜ起こるの?「隠れ貧血」セルフチェック
貧血になると、頭痛や吐き気、めまい、立ちくらみ、眠気などさまざまな症状が現れます。軽く見られがちな貧血ですが、実は長年悩んでいた不調の原因だったり、もっと怖いのは重大な病気の症状であることもあるのです。今回は、貧血の症状や特徴、種類、検査方法や基準となる数値、改善するための食事、貧血に効く食べ物、対策や治療法、薬などについてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
女性に多い貧血の悩み
何となくだるい、眠い、頭痛持ちだ、顔色がさえない、少し走っただけでも息切れしれしまう…そんな不調を多くの方が経験しているのではないでしょうか。もしかすると、その原因は貧血かもしれません。
特に女性は男性よりも貧血になりやすいといわれています。自分が貧血であると自覚している人もいますが、気づかない方も少なくないようで、成人した日本人女性の約17パーセントが貧血ともいわれています。
貧血とは、体中に酸素を運ぶ働きをする赤血球や、その中に含まれるヘモグロビンが減ると、体が酸欠になってしまい、さまざまな不調が起こる状態のことです。
赤血球やヘモグロビンが減ってしまう原因はいくつかあり、その原因によって貧血の種類が分類され、症状にも違いがありますが、倦怠感、眠気、めまいや立ちくらみ、耳鳴り、動悸や息切れ、顔面蒼白、爪の異常、寒気、食欲不振など、すべての種類の貧血に共通する症状もあります。
貧血になる主な原因は、
・偏食やダイエットによる栄養不足(鉄分・たんぱく質・ビタミンなど)
・妊娠や出産、授乳による鉄分不足
・月経による出血や、ホルモンバランスによるうっ血
・ケガによる出血
・病気による継続的な出血
・血液を作る機能に関わる疾患
などがあります。
貧血が緩やかに進行すると、自覚症状を伴わないことも少なくありません。「立ちくらみやめまいがないから貧血ではない」と安易に判断せず、特に女性は注意しましょう。貧血の症状や原因、対処法や治療法などを解説しますので、体の不調を感じている方は参考にしてみてください。
貧血の特徴と症状
貧血と白血球の関係
貧血のひとつに、再生不良性貧血というのがあります。それは、赤血球・血小板・白血球、すべてが減少してしまう病気なのですが、軽度の段階では貧血と血小板の減少しか認められないこともあるようです。
まず、赤血球が減ると、めまいや頭痛、倦怠感、胸の痛みや息切れ、動悸、顔面蒼白など、一般的な貧血の酸欠症状が現れるといわれています。
そして、出血を止める働きをする血小板が減ると、歯茎からの出血、鼻血、皮膚の点状出血、あざなどが出来やすくなったり、血が止まらないといった症状が現れるといわれ、さらに悪化すると、血尿や血便、眼底や脳の出血が起こることもあるようです。
白血球にもいくつかの種類があり、そのうち再生不良性貧血で減少するのは主に好中球だといわれています。好中球は細菌感染を防ぐ役割をしているので、症状が悪化して好中球が減ると、肺炎や敗血症など重篤な細菌感染症になりやすくなり、発熱や咽喉の痛みなどが現れることもあります。
再生不良性貧血の原因は、骨髄が脂肪に置き換わることで、3つの血球をつくる骨髄造血幹細胞が機能しなくなることだといわれています。
白血病との違い
再生不良性貧血も白血病も、貧血症状、出血しやすく止まりにくいという傾向、発熱などの風邪症状はよく似ているといわれており、症状だけではどちらの病気なのか分からないことも多いようです。診断は血液検査と骨髄生検によって行われます。
再生不良性貧血は、骨髄の造血機能が損なわれ、赤血球・血小板・白血球が減少していく病気ですが、白血病は、骨髄細胞のうち、がん化した白血球細胞(白血球をつくる細胞)だけがクローンのように増殖して骨髄を占拠し、正常な造血ができなくなてしまい、赤血球や血小板が減ってしまう病気です。
骨髄生検で、造血幹細胞と3つの血球の成熟が低下していれば不良性貧血、異常な白血球細胞が増殖している場合は白血病と診断されるようです。白血病では、異常な白血球細胞が、肝臓、脾臓、リンパ節、精巣、脳などに侵入してくることもあるといわれています。
再生不良性貧血の治療は、初期であれば、たんぱく同化ホルモンで造血細胞を刺激し、中度に進行している場合は加えて免疫抑制療法を行うことが多く、重度になると造血幹細胞移植(骨髄移植)を用いることもあるようです。
白血病の治療は抗がん剤による化学療法を行うことが多いようですが、ドナーが見つかれば造血幹細胞移植を行うのが最善といわれています。
めまいと吐き気
吐き気や嘔吐はめまいにつきものの症状ともいわれますが、めまいにはいくつかの種類や原因があるようです。
一般的に、ぐるぐると回転するようなめまいは、メニエール病などの耳鼻科疾患が原因であることが多く、ふわふわと宙を歩くようなめまいは脳腫瘍や脳梗塞など、脳神経の疾患が原因であることが多いようです。
めまいや吐き気などの症状から、貧血とよく間違えやすいのが、低血圧と低血糖だといわれています。
貧血と低血糖の大きな違いは、指先や手足の震え、冷や汗ですが、症状は人によって違い、空腹感、灼熱感、動悸、不安感、霧視、集中力の低下、眠気、脱力感などさまざまです。飴などの糖分を摂取して症状が一時的に改善するかで、低血糖かどうか判断できるそうです。
貧血と間違われやすい起立性低血圧(いわゆる脳貧血)は、立ち上がったときなど急に動いた時に脳の血流が減ることで、貧血とは別の症状だといわれています。
自分でセルフチェックする方法
以下の症状のうち、3項目以上あてはまる場合は貧血の可能性があるといわれています。
・疲れやすい
・何となく体がだるい
・朝起きるのがしんどい
・頭重感や頭痛がある
・肩こりがひどい
・手足が冷える
・動悸や息切れがある
・氷や硬い食べ物が食べたくなる
・めまいや立ちくらみがある
・爪が割れやすい
・爪がスプーン状に反っている
・食欲があまり湧かない
・まぶたの裏が白い
・顔色が悪い
※貧血とよく間違いやすいのですが、しゃがんだ姿勢や寝た状態から立ち上がると起こるめまいは、貧血ではなく、起立性低血圧、いわゆる脳貧血の症状のようです。
症状チェックの他に、以下の状態チェックのいずれかに当てはまる方は、さらに貧血である可能性が高いといわれています。
・妊娠中
・月経不順、過多月経や月経困難症
・胃潰瘍や胃炎である、または胃を切除した
・骨粗鬆症
・出血性の痔
・ダイエット中
・ファーストフードやインスタント食品が多いなど、偏食気味
・激しいスポーツをよくする
・ほとんど運動をしていない
貧血と頭痛の因果関係
生理が原因の貧血と頭痛
生理前や生理中には、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質によって、不要な子宮内膜を排出しようと子宮が収縮するといわれています。このため、子宮に血が集まって虚血状態(うっ血)になり脳への血流が減ると、頭を覆う筋肉が酸欠になって収縮すると頭痛になりやすくなるとされています。
頭痛で来院する女性患者のうち、約1/3に「隠れ貧血」が認められたという臨床データもあります。「隠れ貧血」は血中の鉄分やヘモグロビンの値は正常であっても、貯蔵鉄が不足している状態のことで、血中のフェリチン値を測ることによって診断できるそうです。
生理周期による虚血は、血の総量が減ったことで貧血になるわけではないようですが、一般的な鉄欠乏性貧血と同じく、鉄剤の補給などで治療するそうです。
吐き気や寒気
生理前~生理中に急増するプロスタグランジンは、子宮だけでなく体中の血管や筋肉を収縮させるため、さまざまな部位に不調が現れるようです。生理痛だけでなく、腰痛や肩こり、手足の冷えや寒気などもプロスタグランジンの収縮作用によるものだといわれています。
また、鉄分は亜鉛などの他のミネラルとともに甲状腺機能(体温調節機能)に深く関わっているので、貧血になると甲状腺機能が低下し、血行不良とあいまって体温が低下する要因になることもあるそうです。
さらに、収縮作用によって胃腸が締め付けられると、吐き気や下痢を引き起こすこともあります。ただし、微熱や寒気、食欲不振、吐き気などは、どの種類の貧血にも現れうる症状なので、あまりひどかったり、生理周期とは関係なく続くようであれば、早めに血液内科に相談するようにしてください。
つらい頭痛の対処法
頭痛以外にめまいや立ちくらみなどを伴うときは、まず危険な場所から離れ、倒れてしまった場合のダメージが最小になるようにし、できるだけ頭の位置が低くなるように、しゃがんだり、横になったりしてください。足が頭より高い位置にくると尚良いです。息が浅くならないよう、ゆっくり深呼吸をしてください。
光や音の刺激で痛みが増したり、吐き気や嘔吐が強い場合は片頭痛である可能性が高いといわれています。片頭痛は血管の拡張が原因であることが多いので、頭を氷などで冷やすと多少楽になる人もいるようです。
痛みが強い場合、片頭痛薬を処方されていれば、あまりひどくならないうちに飲む方いいでしょう。病院にかかっていない場合は、 アセチルサリチル酸(アスピリン)を含有した市販薬が良いそうです。
後頭部やこめかみの痛み、頭が締め付けられる感覚や頭重感、肩こりや首のこりを伴う場合は、緊張型頭痛である可能性が高いといわれています。
血流が悪いことが大きな要因なので、肩や首をホッカイロで温めたり、肩こりを伴う緊張型頭痛に効き目があるといわれる「葛根湯」などを服用するといいといわれています。あまりに緊張が経頭痛がひどい場合は、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの成分を含んだ市販薬が良いようです。
吐き気やめまいの対処法
生理前の貧血の場合
生理前にめまいや吐き気などの貧血症状が起こる場合、PMS(月経前症候群)の可能性があります。月経前になると、水分を体内に留めようとする黄体ホルモンの分泌量が増えるため、さまざまな不調が生じるといわれています。
黄体ホルモンの増加によって水分代謝が滞ると、むくみが起きやすくなったり、もともと低血圧ぎみの方は起立性低血圧(脳貧血)になることもあるそうです。また、生理前~生理中はプロスタグランジンが増えるため、頭痛を引き起こしたり、頭痛に伴うめまいや吐き気を引き起こすといわれています。
造血剤やサプリメントで鉄分を補充する他には、低用量ピルなどのホルモン剤でホルモンバランスを調整したり、水分代謝を改善する漢方薬などでの治療もあるそうです。吐き気がひどい場合は、吐き気止めやプロスタグランジンを抑制する鎮痛剤を用いることもあります。
自分でできる対処法としては、プロスタグランジンの収縮作用によって不調が出ることから、腹巻やカイロでお腹を温めたり、体温上昇と消化促進の効果が期待できる生姜を摂ったりするのもおすすめです。症状が出てからだと中々対処しづらいと思うので、生理前は体を温めることを心がけましょう。
妊婦さんの場合
妊娠中にめまいや立ちくらみがよく起こりますが、多くの場合、貧血ではなく、起立性低血圧(いわゆる脳貧血)だといわれています。
脳貧血は、急に動いたり、長時間立っていると、脳への血流が少なくなることによって起こるといわれているので、ゆっくり動いたり、立ちっぱなしにならないようにしましょう。脳貧血の症状が出た場合は、数分間横になり、治まるまで安静にしてください。
一般的な貧血症状が出る妊婦さんも多いようですが、鉄不足による貧血と、血液稀釈(血液が薄くなる)による貧血なのかを見極めて治療しなければなりません。
妊娠32週を過ぎると血液量が45~50パーセントも増えるといわれ、そしてその増量分は血漿(血液中の透明の液)なので、血が薄くなり、貧血のような状態になるといわれています。血が薄くなったのか、鉄が不足しているのかを見分けるには、妊娠初期に鉄欠乏かどうか検査する必要があります。
鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄剤投与や食事療法による治療が行われるようです。妊娠中は妊娠前に比べて、2.4mg/1日の鉄分が余分に必要だとされています。赤ちゃんの成長分や胎盤分、お母さんの血液量増加分などで、貧血になりやすいので、妊娠前や妊娠初期から鉄分の多い食事を心がけましょう。
腹痛をともなう吐き気やめまい
腹痛と同時に吐き気やめまいが起こることもあります。
胃潰瘍や胃炎、十二指腸潰瘍、腸ねん転や腸炎、腎臓や肝臓の障害などの激しい痛みによって、血圧や心拍数が下がり、脳への血流が急激に減る(脳貧血)ことで生じる、めまいや吐き気、意識障害は「血管迷走神経反射」だといわれています。
主な症状は、めまいやふらつき、虚脱感、あくび、冷や汗、血の気が引く感覚、視界のぼけ、吐き気、頭痛、熱、寒気、瞳孔の拡大、顔面蒼白、痙攣などで、極端な場合は失神することもあるようです。
対処法としては、低血圧による脳への血流減少が原因なので、横になるなどして頭が低い位置になる姿勢で安静にします。痛みの原因が分かっている場合は鎮痛薬などで対処しますが、原因のわからない激しい痛みである場合は、急性疾患である可能性もあるので、病院を受診するか、救急車を呼ぶなどしてください。
血管迷走神経反射は、長時間の立位、暑い場所での運動、恐怖、脱水、アルコール摂取などで起こることもあるので注意しましょう。予防法としては、低血圧が原因なので、十分な塩分摂取や、壁にもたれて10~30分立ったままでいる訓練(初めは5分から)などが挙げられます。
ただし、頭痛や胸の痛みと同時に意識を失うという場合は、くも膜下出血や心臓病の可能性もあるので注意が必要です。
なかなか治まらないときは
いつまでもめまいや吐き気が続く場合は医師に相談するようにしましょう。脳梗塞や脳腫瘍などの病気、メニエール病や突発性難聴などの耳の病気、うつ病などの精神疾患である可能性もあります。また、低血圧や低血糖の方で、貧血と思い込んでいる方も多く、正しい診断による適切な処置が必要です。
めまいや吐き気の他に以下の症状がある場合は、脳神経外科か神経外科を受診してください。
・ふわふわと宙を歩いているような感じ
・激しい頭痛
・痙攣
・意識障害、失神
・物が二重に見える
・手足の先、くちびるなどに痺れがある
・体半分、顔半分の感覚がおかしい
・手足に力が入らず、うまく歩けない
・視野が狭くなったり、欠けている部分がある
以下の症状がある場合は、耳鼻科を受診してください。
・ぐるぐる回転するようなめまい
・耳鳴り、耳が塞がれたような感じ
・頭を動かすとめまいがする
低血圧の場合は、立ち上がったり、体を動かすときに立ちくらみやめまいを感じることが多く、血の気が失せる感じが伴うようです。低血糖の場合は、吐き気やめまいの他に、冷や汗や指先の震えを伴うことが多いといわれています。
低血圧がひどい場合は循環器内科、低血糖がひどい場合は内分泌科、糖尿病科の受診をおすすめします。
貧血が原因の眠気対策
なぜ眠気が起きるのか
眠気は、睡眠不足、浅い睡眠、不規則な生活リズム、ストレス、眠気を起こす薬(風邪薬やアレルギー薬)などによって起こるといわれています。また、うつ病などの精神疾患や、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害が原因である場合もあります。
女性は生理周期やホルモンバランス、貧血などによって日中の眠気を感じやすいといわれており、様々な原因があるようです。
貧血と眠気の関係
貧血になると、脳を含む全身が酸欠状態になるので、やる気や集中力の低下、倦怠感、眠気などを引き起こすようです。睡眠時無呼吸症になると昼間に眠気に襲われるようになるのも、夜長時間酸欠状態になることが原因だといわれています。
睡眠障害の代表的な原因のひとつ、むずむず脚症候群(レッグレス・シンドローム)は、貧血大きな一因である場合が多いといわれており、貧血による鉄不足が睡眠や覚醒を司る中枢神経の異常を引き起こすとされています。
鉄は神経伝達物質の生産に深く関わっているため、鉄不足になると、昼間の眠気や、逆に不眠や神経過敏を引き起こすという可能性が考えられます。
食後に起こる眠気
糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素のなかで、血糖値を最も上げやすいのは糖質だといわれています。特に、白米や小麦、白砂糖といった精製された糖質は血糖値を急上昇させ、急上昇した血糖値を下げるために、多量のインシュリンがすい臓から分泌され、そのため今度は血糖値が急降下します。
脳の主なエネルギーはブドウ糖なので、血糖値が下がりすぎると、ブドウ糖を取り込む働きをする筋肉を休ませて、筋肉が使っているブドウ糖を脳へ動員しようとするそうです。筋肉を休ませるために、脳が体を眠らせようとし、それが食後の眠気の正体だといわれています。
なので、食後の眠気を防ぐには、食物繊維やタンパク質を多めに摂って血糖値の急上昇を防いだり、精製された糖質ではなく、玄米など未精製の穀物にすること、デザートを我慢することなどが効果的だといわれています。
生理の時に起こる眠気
生理前や生理中の強い眠気は、多くの女性が経験していると思います。生理の約2週間前になって黄体期に入ると、プロゲステロンが増えて基礎体温が高くなり、一日の体温変化が小さくなるといわれています。
私たちの体は、夜間体温を下げることで入眠しやすくしているので、体温変化が小さいと眠りが浅くなり、昼間眠たくなってしまうと考えられています。
なので、生理前~生理中は、朝起きたら太陽の光を浴びるようにし、昼夜のメリハリをつけるようにすると体内リズムの乱れを最小限に抑える効果が期待できます。
ひどい眠気の解消法
昼間に強い眠気をなんとかしたい時には、短い仮眠が効果的だといわれています。ただし、時間帯と仮眠の長さには注意が必要です。夕方以降に仮眠を取ると、夜間の睡眠に影響が出るという研究データがあるようなので、午前11時~午後14時の間に15分程取るのがいいそうです。
15分以上眠ると熟睡してしまう可能性があり、目覚めにくくなることがあるそうです。また、ベッドで眠ると深く眠ってしまう可能性があるので、机に伏して寝たり、座ったまま眠る方がいいかもしれません。
仮眠が取れないときは、冷水で顔を洗ったり、冷たい飲み物やアイスクリームを食べて体温を下げると、眠気を解消できることがあるそうです。
入眠するとき人体は体温を下げるといわれていますが、そこで急に顔が冷やされたり、体内に冷たいものが入ってくると、全身が冷えてしまったと脳が勘違いして体温を下げるのを止めるため、眠気が少し治まるのだそうです。
カフェインを摂るのもひとつの方法ですが、夜間の睡眠に影響を与えないよう、午後15時までにしておきましょう。
病院での治療方法
貧血の検査
問診による、発熱や異常な出血の有無、便の色、食欲や胃腸の調子、食生活、生理の状態、子宮筋腫、手術歴、飲酒や常用薬物などでの診断所見の後、一般的なものより詳しい血液検査を行います。
赤血球の大きさ(小球性、正球性、大球性に区別)、ヘモグロビン値(11.3~15.5g/dlが正常)、網状赤血球(骨髄の赤血球をつくる機能を反映、4~19パーセントが正常)、血清鉄(48~154マイクログラム/dlが正常)、TIBC(総鉄結合能)、フェリチン値(貯蔵鉄量を反映、3.4~89ng/mlが正常)、トランスフェリン飽和率などを調べ、貧血の種類を診断します。
貧血の種類が鉄欠乏性の場合は、赤血球は小さく(85fl以下)色素が少ない(小球性低色素性)、ヘモグロビン濃度・血清鉄(50マイクログラム/dl以下)・フェリチン値(30マイクログラム/ml以下)が低く、網状赤血球・TIBCが高値になるようです。
また、内臓などから出血していないかどうか調べるため、検便や腹部エコー検査を行います。
貧血の種類には、大きく分けて以下の5つがあるとされています。
・鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン合成に必要な鉄の不足が原因)
・巨赤芽球性貧血(喫煙や飲酒、胃の切除などでビタミンB12や葉酸が不足することで赤血球が成熟せず、改善に時間がかかる悪性貧血)
・再生不良性貧血(骨盤の造血幹細胞減少による)
・溶血性貧血(赤血球が破壊されて起こる貧血で、血尿や黄疸、脾臓の炎症を伴うことも)
・二次性貧血(がん、腎不全、リウマチ、心疾患、肝臓障害などによる)
貧血の種類を診断したうえで、原因を究明していきます。
・出ていく鉄が多い(出血など)
・入ってくる鉄が少ない(栄養不足)
・赤血球産出機能の低下による貯蔵鉄不足
ただ貧血であるという診断では根本治療につながらないこともありますし、貧血の陰に重篤な病気が隠れていることもあるので、種類と原因を特定することが大切です。
緊急性の貧血治療は点滴
緊急性の貧血や、鉄剤では十分に鉄を吸収できないとき、胃腸炎などで内服薬を使えない場合は、静脈注射や点滴などで鉄を投与することもあるようです。また、貧血が重い場合は、ビタミンB12を点滴で補給することもあります。
鉄の点滴で注意しなければならないのは、アレルギー反応と過剰投与です。点滴や注射にって補給された鉄は体内に蓄積されるため、必要量を計算し、過剰にならないよう注意します。また、点滴や注射では、アナフィラキシーショック、発熱や関節痛などの副作用の報告もあるので、慎重行わなければなりません。
ひどい場合は輸血も
貧血の原因が重大な病気であるとき、栄養失調で貧血が重度のとき、出血が続いているとき、交通事故など急に出血したとき、手術など緊急の場合にも輸血することがあるようです。
また、重度の心不全によって鉄の吸収がうまくできず貧血になることがあり、そのような場合は輸血によって赤血球を補うことがあります。白血病の場合も、抗がん剤治療によって貧血症状が悪化することがあり、輸血を用いることがあります。
再生不良性貧血は、造血幹細胞が機能できなくなり、血球自体が減っていくので、輸血が必要になってきますが、たんぱく質同化ホルモン投与や免疫抑制療法、骨髄移植などの治療も同時に行うようです。
慢性の貧血治療は薬を服用
慢性的な鉄欠乏性貧血の治療は薬物療法が基本とされています。フェロミア、インクレミンなどの鉄剤を100~200mg/日服用することで、まずは血中の鉄が増加し、、約1週間後に網赤血球が増え、さらに1日に約0.1~0.2g/dlずつのペースでヘモグロビン値が上昇していくといわれています。
貯蔵鉄が完全に正常になるには約3~4か月かかるといわれ、貯蔵鉄量を反映する血清フェリチン値が安定するまで服用を続ける必要があります。場合によっては1年ほど飲み続けることもあるそうです。なお、鉄剤とビタミンCを同時に摂ると、鉄の吸収率は2~6倍になるともいわれています。
ただし、貧血が完全しても、生理の出血が多い方や、体質的に貧血になりやすい方は、内服薬をやめると貧血に戻ってしまうことも多いようなので、サプリメントで補ったり、生理前後だけ鉄剤を服用するなど工夫が必要です。サプリメントを摂る場合は、15~20mg/日のヘム鉄が必要だそうです。
葉酸欠乏による貧血の場合、重い貧血だけでなく、血小板や白血病の減少がみられることがあります。一般的に、人体には約4000マイクログラムの貯蔵葉酸があり、1日当たりの消費量は約100マイクログラムだといわれています。偏食気味だったり、アルコールの摂取量が多い人は葉酸不足になりやすいようです。
葉酸不足による貧血の治療は、葉酸の錠剤を内服して値が改善したら、食事療法と飲酒制限などで再発を予防します。葉酸は青い野菜に多く含まれますが、ゆでると葉酸が消失してしまうため、炒めたほうがいいそうです。
ビタミンB12欠乏によって貧血になることもあります。このタイプの貧血は、急速に進行し、治りにくいことから、悪性貧血と呼ばれています。治療はビタミンB12剤を内服するか、注射で補うそうです。ビタミンB12は、葉酸と同じく、DNA合成に不可欠な栄養素で、肉類に豊富だといわれています。
鉄分の豊富な食事を摂る
厚生労働省によると、30代女性が1日に必要な鉄分量は11mgですが、実際の摂取量は7mgほどで、約4mg足りていないことになります。また、妊婦は1日に20~30mgの鉄が必要だといわれています。
鉄は体内でつくることができないので、食べ物から補給する必要があります。また、口から取り入れても、体内に吸収されにくいという特徴があります。特に野菜などに含まれる非ヘム鉄は吸収率が2~5パーセントと低いので、15~25パーセントと吸収率が比較的高いヘム鉄を多く摂るのがポイントです。
ヘム鉄は肉や魚やレバーに多く含まれ、野菜に含まれる非ヘム鉄も、動物性たんぱく質と同時に摂取すると吸収率がアップするといわれています。
ヘム鉄は、肉類、レバー、イワシ、マグロ、カツオ、牡蠣、エビ、アサリなどに、非ヘム鉄は、ほうれん草、ニラ、パセリ、海藻(海苔、ヒジキ、ワカメ、昆布)、ナッツ類、プラム、レーズン、アプリコットなどに豊富だそうです。
また、たんぱく質は赤血球やヘモグロビンの原料になるといわれ、重要な栄養素です。肉や魚、卵、大豆食品、乳製品などに多く含まれていますが、一度にたくさん食べても貯めておくことができないので、できれば毎食メニューに取り入れるようにして下さい。
ビタミンCは鉄が体で使われるうえで、不可欠な栄養素であり、同時に摂ることで鉄の吸収率アップも期待できます。いちご、柑橘類、ブロッコリー、ほうれん草、パセリ、ピーマンなどに豊富だといわれています。
ビタミンB12と葉酸は赤血球をつくるのに不可欠な栄養素です。ビタミンB12は、牛・豚レバー、魚卵、貝類、卵黄、チーズ、牛乳などに多く含まれ、葉酸は、牛・豚レバー、卵黄、大豆、納豆、ほうれん草、ブロッコリーなどに豊富だといわれています。
※貧血の食事療法についての注意点
・緑茶、コーヒー、紅茶、ワインなどに含まれるタンニン(渋み成分)は、摂りすぎると鉄の吸収を妨げることがあるので、食事の前後に大量に飲んだり、あまり濃くしないようにしましょう。
・胃酸の分泌が良くないと鉄の吸収効率が下がることがあるので、ゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。酢や梅干し、香辛料なども胃液分泌を促す効果があるといわれているので取り入れましょう。
・喫煙はビタミンCを消費してしまうので、控えるようにしましょう。
・鉄製のフライパンや鍋で調理すると、料理に鉄が溶けだすのでおすすめです。
処方される貧血薬と市販薬
病院から処方される鉄剤
いわゆる鉄剤としては、「フェロミア錠」などが広く用いられていますが、その他にもいくつかの種類があります。
・硫酸第一鉄(商品名フェロ・グラデュメット、スローフィー)…徐々に鉄が放出される仕組みの鉄剤で、胃腸障害の副作用を軽減する効果があるとされます。
・フマール酸第一鉄(商品名フェルム)…同上。
・クエン酸第一鉄(商品名フェロミア)…胃酸や消化に影響されずに吸収されるので、食後内服に適しているとされます。
・ピロリン酸第二鉄(商品名インクレミン)…シロップ状で、子供用に処方されることが多いようです。
鉄剤の一般的な服用量は、2~4錠×1~2回(100~200mg)で、1~2か月ほどで改善していくことが多いといわれていますが、貯蔵鉄を正常に戻すためには、2~6か月は服用を続ける必要があるようです。
服用中は便の色が黒くなりますが、これは吸収されなかった鉄分の色であり、心配する必要はないそうです。また、胃腸障害などの副作用が現れることがありますが、徐々に軽減していくことが多いようです。
下痢などの副作用がある場合も
体に害を与えるような重い副作用はないといわれていますが、鉄剤は胃の粘膜を刺激するので、人によっては吐き気、胃の不快感、下痢、便秘などの副作用が起こることがあります。服用を続けるうちに徐々に治まっていくことが多いといわれていますが、副作用がひどい、治まらない、という場合もあるようです。
胃潰瘍や腸炎など、胃腸障害を患っている方は、主治医にその旨を伝える必要があります。
気持ち悪いようなら病院で相談
吐き気などの副作用が強い場合は、我慢しないで病院で相談してください。
鉄剤にはいくつかの種類があり、それぞれ胃腸障害の副作用が軽減されるように工夫されているため、ひとつの薬のがダメでも他の薬なら大丈夫ということも少なくないようです。気持ち悪いからといって自己判断で服用を止めずに、医師に相談すれば、体質に合う鉄剤を探してくれることもあります。
その鉄剤でも副作用が強いという場合や、胃潰瘍などで内服が難しかったり、鉄の吸収が悪い場合、内服での補充が間に合わない場合は、静脈注射や点滴などで鉄を投与する方法もあります。
注射で鉄を投与する場合は、アレルギー反応と過剰投与に注意しなければなりません。鉄の胃からの吸収率は、体内の鉄不足量に比例していることが分かっており、体内の鉄量が増加すると吸収量も減るので、内服による鉄過剰の恐れはないとされています。
市販の貧血薬「ファイチ」
「ファイチ」は市販の貧血改善薬です。吸収の良いピロリン酸第二鉄を主成分とし、鉄分だけでなく、赤血球をつくるのに必要なビタミンB12や葉酸も、バランスよく配合されているそうです。
腸で溶けるコーティング錠なので、鉄の臭いや味がせず、胃腸障害の副作用も出にくいようです。1日1回2錠の服用でよく、値段は、972円(30錠)、1620円(60錠)、2916円(120錠)です。
※妊娠中の方は主治医に相談してください。
薬膳などで食事を改善する
棗(なつめ、デーツ)とクコの実は、漢方では貧血に効くとされる薬膳食材の代表格です。中国や韓国では漢方薬のお店に置いてあることも多く、女性にはぜひ取り入れてほしい食材です。お粥やお鍋に入れるだけすが、おすすめはお米と一緒に炊くという方法です。手軽ですし、毎日でも摂れます。
棗には大棗や黒棗などいくつかの種類がありますが、貧血改善におすすめなのは赤棗です。大棗は無印良品や輸入食材店などに販売されていたりしますが(商品名は「デーツ」)、少量で価格が高いというのが難点なので、インターネットで赤棗の大袋を購入する方がお得かもしれません。
クコの実はスーパーの中華料理コーナーや、ドライフルーツコーナーで販売されています。杏仁豆腐やプリンといっしょに食べるのもいいですね。
ヨモギやサフラン、黒糖にも造血効果があるといわれているので、ヨモギ粥にしたり、サフランライスにするのもおすすめです。ヨモギは野生のものをきれいに洗ってすり潰せば使えますし、ヨモギ粉というのも販売されています。白砂糖の代わりに黒糖を使うのもいいです。
※妊娠中の方はサフランの摂取は控えたほうがいいようです。
まとめ
女性は意識しなければ貧血になりがちです。さまざまな不調の原因になってしまうことがあるので、日頃から鉄やたんぱく質、ビタミンB12、葉酸が不足しないように心がけましょう。
現在不調が出ており、何かしらの病気が疑われるようであれば、早めに専門医を受診するようにしてください。どこに不調があるか分からないけれど、体調に異常を感じているのであれば、血液内科、もしくは内科を受診してください。
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